クラシックのサンプリングを広めた第一人者でもあるドイツ出身の音楽ユニット「Sweetbox(スウィートボックス)」の2ndアルバム「Classified(クラシファイド)」。
2001年リリース。リンク先で全曲視聴できます。
曲目
”青色◎”は特に良かった曲。
01.◎Cinderella(テレマン「トランペットのための協奏曲 ニ長調」)
02.◎For the Lonely(モリコーネ「映画:ラ・カリフ」より)
03.Everything’s Gonna Be Alright (バッハ「G線上のアリア」)
04.◎Boyfriend(ビル・コンティ「ゴナ・フライ・ナウ」)
05.How Does It Feel
06.Interlude – Every Time
07.◎Every Time
08.Superstar(チャイコフスキー「白鳥の湖」)
09.Sacred(ラヴェル「ボレロ」)
10.That Night(Leonardo di Gioforte「オーボエ協奏曲 ニ長調)
11.Brown Haired Boy(ベートーヴェン「エリーゼのために」)
12.◎Crazy(ベートーヴェン交響曲第5番「運命」)
13.Trying to Be Me(グリーグ「ソルヴェイグの歌」)
14.Interlude – Not Different
15.◎Not Different (I Laugh, I Cry)(ヘンデル「オンブラ・マイ・フ」)
16.For the Lonely (Remix)
17.Trying to Be Me (Remix)
01.◎Cinderella(テレマン「トランペットのための協奏曲 ニ長調」)
・「シンデレラ」というタイトルからプロコフィエフかな?と思わせておいて、テレマンの曲をサンプリングしているシンプルなR&B風ポップス。バックには簡単な合唱コーラスも流れる。
決して有名ではないテレマンの曲をアルバムのリード曲に持ってくる所が素敵。しかもトランペット協奏曲。テレマンだからと安易にターフェルムジークとかに行かない所で、ちゃんと作者がクラシックに精通している事が解る。原曲の時代に合わせてちゃんと古楽器風の音も使用している。
テレマンは明るく派手で美しいキャッチーなメロディが多い、現代人にもとてもオススメできる作曲家。私もお気に入り。
前作の1stアルバムではHIPHOP要素が強めだったが、新ヴォーカルに変更してラップ的な歌唱はほぼ無くなった。
02.For the Lonely(モリコーネ「映画:ラ・カリフ」より)
原曲はサラ・ブライトマンもカバーしている映画の曲。美しいメロディが違和感なく溶け込んでいる。
原曲では登場しないチェンバロも登場し、1曲目で見せたバロックの雰囲気を2曲目でも継承して流れを作っている。様々な時代の曲を料理しつつも、アルバム全体の統一感が凄い。単に曲がマンネリなだけでなく、そういった工夫の結果でもある。
03.Everything’s Gonna Be Alright (バッハ「G線上のアリア」)
言わずとしれたスウィートボックス及びクラシックのサンプリングを広めたパイオニア的曲。1stアルバムの曲のリメイクなのでラップが多め。
一つ一つの曲の楽器に耳を傾けると、オーボエ率が高い気がする(これが伏線になるんですよ)
04.◎Boyfriend(ビル・コンティ「ゴナ・フライ・ナウ」)
映画「ロッキー」のテーマ曲をサンプリング。前3曲に比べるとビートのアタック感が強くギターも登場する激しめの曲。ゴングの音や歓声もサンプリングされている。
曲の初めに一度提示したロッキーのテーマの冒頭部分が終盤で再登場する所が熱い。
05.How Does It Feel
ストリングスとクラシックギターをフィーチャーしたややオリエンタル風味の曲。
オリジナル曲の分トラックが比較的印象に残らないが、良く聴いてみると実際は結構派手。
06.Interlude – Every Time
次の曲の印象的なトラックパートをオーケストラのみでリズムを変えて演奏するインスト。
07.Every Time
オリジナル曲だが直前の6曲目でトラックをオーケストラでじっくり聴かせているため、この曲もサンプリングじゃないかと錯覚させてしまう曲。5曲目が中東アジア風味でこの曲は東アジア風。
08.Superstar(チャイコフスキー「白鳥の湖」)
白鳥の湖の「情景」をサンプリング。2番の後でようやくループさせている旋律の続きの部分が登場し、ドラマティックに展開する。
他の曲にも言えることだけれど、基本的に原曲のごく一部分のみをループさせる作風で、原曲を知っている人からすれば続きまで行って欲しいというもどかしさを感じる。しかしそこが彼女らの作風。
09.Sacred(ラヴェル「ボレロ」)
解りにくいけれどバックで流れているストリングスがボレロ。前の曲の所でも書いたけれど、原曲のウェイトを大きくしすぎないのは強みでもある。ユニットのコンセプト上、大ネタ揃いで飽きやすいのは必至なわけで、ある程度のオリジナリティを保つ必要があると思われる。まぁやっぱり飽きやすいのだけれど…。
10.That Night(Leonardo di Gioforte「オーボエ協奏曲 ニ長調)
この曲のサンプリング元としてクレジットされている作曲家の「Leonardo di Gioforte(ジオフォルテ?ジョーフォルテ??)」という人物、検索しても全く出てきません。私も全く知りません。名前からしてイタリア人男性であると思われるのですが、おそらく編曲者本人ではないでしょうか。
調べてみると、イタリアとドイツのハーフであり、大学でクラシックを学んでいたという音楽プロデューサーの「GEO」。経緯からして協奏曲の1曲や2曲くらい作曲しているでしょう。また前述の通り他の曲でもオーボエのフィーチャー率が高い作風。オーボエへの思い入れの高さが伺えます。
「Gioforte」という名字は「GEO」+音楽記号でもある「forte」に分けられます。GEO本人(もしくは身内?)ではないか、というのが私の考えですが…。
11.Brown Haired Boy(ベートーヴェン「エリーゼのために」)
イントロ及びサビメロの一部に「エリーゼのために」のメロディが使用されている。オリジナル曲に申し訳程度に付けた、という程度。はっきり言って曲調がどの曲も概ねかぶっているので飽きてくる。途中でシンプルなバラードとか入れる気はないのだろうか。
12.Crazy(ベートーヴェン交響曲第5番「運命」)
運命第1楽章のフレーズに加えてエアロスミスみたいな古いハードロック調のギターリフもループされ、マッシュアップのような雰囲気の曲。ギターの音色が新鮮。運命のフレーズはギターが良く合う。
13.Trying to Be Me(グリーグ「ソルヴェイグの歌」)
望郷感の強い切ないメロディの原曲を、勇ましいマイナー調R&B曲にアレンジしている曲。キレイに4拍子にならない譜割りもしっかり再現している。
14.Interlude – Not Different
「オンブラ・マイ・フ」のメロディの一部をゴスペル風のコーラスで歌い、次曲に繋げる小曲。
15.Not Different (I Laugh, I Cry)(ヘンデル「オンブラ・マイ・フ」)
ヘンデルのオペラ「セルセ」の冒頭のアリア「オンブラ・マイ・フ」をコーラスも使用し引用したR&Bバラード。ラストで初めて3拍子の曲が登場。途中にもこんな曲入れてくれたら良かったのに!
大ネタ揃いの本アルバム内において、1曲目と同様、製作者の拘りを感じる選曲とアレンジ。
16.For the Lonely (Remix)
2曲目をエレクトロ成分多めにリミックス。たまには本編にこういうアレンジの曲入れてもいいんだよ?十分統一感は出ると思うよ?
17.Trying to Be Me (Remix)
13曲目をビートを効かせたハードなR&Bにアレンジ。これはまぁリミックスって感じ。
総評
大ネタからマイナーな曲まで幅広い選曲。概ね3分台の短い曲が並びます。
ヴォーカルの交代を数回繰り返しているSWEETBOXですが、このアルバムで歌唱しているJADEが一番アルバムリリース数が多く、実質SWEETBOXを象徴する歌手です。
全体的に「THE・ポップなR&B風洋楽」な雰囲気が強い本作。聞き流しても良し、ヘッドホンでじっくり音と向き合っても良しな名盤です。ただし初めのインパクトは強い一方、似た曲調が続くので、ずっと聴いてると飽きてきます。
売れたのはクラシックを引用しているからではなく、日本人にも馴染みやすい良質の洋楽ポップスだったからだと思います。そこを勘違いしたフォロワーが、安易なクラシックサンプリング曲をリリースしても売れなかったのを見れば明らかです。
sweetboxのアルバムの中では、この「Classified」と4thアルバム「Adagio」がクラシックカバーが多く収録されておりオススメです。
「Adagio」日本盤はCCCDなので注意。
プロデューサーGEOの他プロジェクトもこちらの記事で紹介しています。
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