何だかちょっとオシャレで大人っぽいけれど、怪しくてそれでいて華やかな雰囲気。
私はそんなスパイ風の歌や怪盗感のある雰囲気の曲がとても好きなのです。
なので、集めてみました。
そもそも、
スパイっぽい曲、怪盗っぽい曲ってどんな曲?
今回はちょっと分析的な事も行ない、そんな疑問にも迫りたいと思っています。
代表的な曲はいくつかあります。おそらくそれらの楽曲から「スパイっぽい」「怪盗っぽい」というイメージが形成されたのではないかと思われます。
TVドラマ『スパイ大作戦』OPテーマ
映画『ミッション・インポッシブル』の前身でもあるドラマシリーズ。作曲は『燃えよドラゴン』『ラッシュアワー』なども手掛けるラロ・シフリン。1968年の楽曲。
五拍子のリズミカルでシリアスな曲。印象的なベースリフとパーカッションを軸に、金管楽器が派手な音を奏でます。冒頭の緊迫感があるトリルと、最後にジャジャーンと締める華やかなロングトーンが特徴的。
映画『007』シリーズ「ジェームズ・ボンドのテーマ」
作編曲はモンティ・ノーマンとジョン・バリー。1962年の楽曲。
不安を煽るリフを繰り返すストリングスに重なる、「テレッテレー」と低音で印象的な動機を奏でる金管楽器群。展開部では1オクターブ上がり、メロディも展開していきながら盛り上がります。経過部(ブリッジ)のキメのフレーズも印象的で有名です。
ルパン三世のテーマ
元祖は1977年の楽曲。展開部のメロディがエモい。作曲は大野雄二。
78年バージョンではアニメでOP直前に鳴る銃声と、曲中で鳴るサイレンを表現しているシンセが、
80年バージョンではビブラフォン(鉄琴)をメイン楽器に据えているのがそれぞれ特徴的。
というわけで、
A:短調でテンポの速いビッグバンドジャズ
B:低音楽器による、緊張感のあるシンプルなリフレイン
C:金管楽器&打楽器によるキメのフレーズ
D:銃声やサイレンの音・鍵盤打楽器の使用
この辺りが”スパイ感””怪盗感”を醸し出しているのではないかと思われます。
ちなみに華やかなジャズはカジノのBGMとしても伝統的に使用されているため、“カジノっぽい”にも通じるものがあります。
以上を踏まえて、様々なジャンルの「スパイっぽいかっこいい曲」「怪盗っぽい曲」を紹介していきます。
せっかくなので、先ほど提示した「スパイ感」「怪盗感」を演出していると思われるA~Dの要素のうち、どれを満たしているかも示しながら紹介します。
新しい曲から年代順に。
Void_Chords「The Other Side of the Wall」/「LIES & TIE」
スパイ&怪盗要素:A/ACD
スパイ×スチームパンクのTV/劇場版アニメ『プリンセス・プリンシパル』OPテーマ。Void_Chordsは作曲家 高橋諒の別名義。
「The Other Side of the Wall」は、AメロBメロサビと全く違うプレイを見せるベース・音数の多い楽器隊による骨太&煌びやかなサウンド。そしてそれらに負けないパワフルなボーカル。スパイ感はそこまで無いけれど、そんな事どうでも良くなるいい曲。フルサイズはもっともっと凄い。
「LIES & TIE」はファンク要素が大幅にUP。楽器編成も更に増え、ビブラフォンも登場。スパイ感も強くなっている。とにかく聴いていて気持ち良い。
2017年と2020年。
Prima Porta「キャット・ザ・シーフ!」
スパイ&怪盗要素:ABCD
声優ユニットによる、怪盗をテーマにした楽曲。スパイ/怪盗要素をバランス良く満たしている。
しかしスパイ的なベースリフはイントロで使い捨てし、本編は今どきアイドルソングに歌謡曲やスカ・サーフロック・宗教音楽の要素を混ぜてジャンルを曖昧にしている上にアレンジや曲構成も散漫そのもので、高速テンポも相まって曲の全体像をつかむ前にあっという間に過ぎ去ってしまう。確信犯的に聴き手を煙に巻く、楽曲の概念そのものが怪盗的。
鍵盤打楽器も何故かビブラフォンでは無くシロフォンを使用しており、怪盗風というよりはコミカルタッチ。一般人(もしくは猫)の皮をかぶった怪盗ソング。
2020年。
IV KLORE「Midnight Sapphire」
スパイ&怪盗要素:ACD
TVアニメ『Lapis Re:LiGHTs』挿入歌。
鍵盤打楽器の使用・イントロ後半のキメ・暴れるサックス等がルパン三世感を醸し出す高速ビッグバンドジャズ。
やけにリズムが走る楽器隊&サビで突然登場する3連リズムなど、曲者リズムな曲。
2020年。
チャラン・ポ・ランタン「脱走」
スパイ&怪盗要素:CD
ヴォーカル&アコーディオン奏者による姉妹ユニット。イントロや間奏部分に007のテーマのメロディを使用した高速歌謡ポルカ。間奏で銃声やサイレン音が登場。
2019年。
オーイシマサヨシ「楽園都市」
スパイ&怪盗要素:ACD
「ようこそジャパリパークへ」で脚光を浴びた、元Sound Scheduleのシンガーソングライター。TVアニメ『コップクラフト』OPテーマ。イントロが思いっきりルパン三世のオマージュ。アニメは架空の島国が舞台との事で、サビはラテン系にする意図が感じられるけれど、どう聴いても日本の夏。TUBEの夏。
2019年。
春奈るな「ルパとアリエス」
スパイ&怪盗要素:AD
ロリータ系ファッションモデル兼歌手。”恋愛において妖艶な女性がリードを取る”という曲の世界観を演出するために、峰不二子やボンドガール的雰囲気を出したかったのでしょうか。
この曲とともに”童話二次創作シリーズ”としてリリースされた「回転木馬」も彼女の楽曲の中では異質の面白い曲。
2019年。
Mitchie M feat.初音ミク「暗殺プリンセス」
スパイ&怪盗要素:CD
軽快なドラムパターンと転調しながら上がっていく歌メロが物語を推進させる、スナイパーをモチーフにした曲。
2019年。
サカナクション「モス」
スパイ&怪盗要素:C
TVドラマ《ルパンの娘》主題歌。
ピンクパンサーのテーマをモチーフにしたような主題のフレーズは、怪盗風というよりも昭和歌謡。C-C-Bやトーキング・ヘッズ・山本リンダを合わせてみたという楽曲との事で、ボーカルやドラムの響き・ギターリフなど、意図的に80年代風の雰囲気を出している部分がある。
2019年。
秋組「なんて素敵にピカレスク」
スパイ&怪盗要素:AB
アニメや2.5次元舞台まで展開している、役者育成アプリゲーム『A3!』の作中ミュージカルソング。マフィアを題材にしている。
セリフや場面転換を挟みながら、途中で流れを止める事なくシームレスにストーリー展開する8分の大曲。楽曲のみでストーリーもきちんと理解でき、かつダレずに一曲の楽曲としても十分成立している。クオリティも高い。サンホラ系とも違う、ドラマCDとキャラソンを合わせたような新感覚ソング。
2019年。
椎名林檎「真夜中は純潔」/「密偵物語」/「殺し屋危機一髪」/「公然の秘密」
スパイ&怪盗要素:ACD/ABCD/ABCD/ABCD
多彩な楽曲を発表しているシンガーソングライターですが、椎名林檎の音楽性の土台の一つとしてレトロ&ジャズがあります。彼女のそんな部分が存分に発揮されているのがこの楽曲群。ただしベースはシンプルなリフレインに終始するはずもなく、流石のクオリティ。歌詞は全体的にセクシーさを強調。MVで銃声やサイレン等のSEを多用。
「真夜中は純潔」は東京スカパラダイスオーケストラとの共演で、スカのリズムを取り入れた曲。レトロチックアニメなMV。
「密偵物語」は「真夜中は純潔」の続編として制作された曲。スピード感のあるバンドサウンドと、ビブラフォン&フルートの音色が印象的。編曲は服部隆之。
「殺し屋危機一髪」はジャズバンド・SOIL&”PIMP”SESSIONSとのコラボ。個人的に一番スパイ感あり。シンプルで印象的なリフを奏でる低音はウッドベース。とにかくカッコいい。
「公然の秘密」は大編成のビッグバンドジャズ。これまでのスパイ風ジャズソングの集大成的楽曲。ウッドベース&ビブラフォンも大活躍。3分とは思えない濃密さ。
2001年・2009年・2013年・2019年。
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