クラシックカバーアルバム全曲レビュー

Мин Нет『Peace-Да』

ロシアの女性3人組HIPHOPユニットМин Нет
デビューアルバム『Peace-Да』にて(おそらく)3曲でクラシックをサンプリングしています。

2004年リリース。こちらの音源はスキット(合間のインストトラック)が省かれており、一部最後がぶつ切りになる曲もあります。

曲目リスト(青色◎は特に良かった曲)

1.Intro – Radio Мира (А Что Скажет Путин?)
2.◎Pease-Да(ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」第4楽章[歓喜の歌])
3.Мин нет
4.◎Всё будет хорошо(バッハ: 管弦楽組曲第3番:エア[G線上のアリア])
5.◎Никто не узнает
6.◎На игле(モーツァルト: レクイエム:「涙の日」)
7.Мама
8.◎Прости, прощай
9.Мин нет (Radio Remix)
10.Никто не узнает (Electro Dance Remix)
11.Pease – Да (Latina Rap Remix)

1.Intro – Radio Мира (А Что Скажет Путин?)

スペーシーなシンセとSEによるインスト。

2.◎Pease-Да(ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」第4楽章[歓喜の歌])

第4楽章冒頭の派手なオーケストラで幕を開け、その後は有名な第一主題を様々なアレンジでサンプリング。テノールのロングトーンをサンプリングしたり、原曲を細かく刻んでみたり半音転調を2回使ってみたりと、大ネタ使いで超キャッチ―な割りに芸が細かい。3人の歌い手の若い声も、賑やかで奇抜なトラックに良く合っているパーティチューン。

曲タイトルを英訳すると『Peace Yes!』。平和を願う歌として有名な歓喜の歌をサンプリングしている。おそらく反戦歌と思われる。MVを見る限りツッコミどころがありそうだけど歌詞が解らないのでツッコめない。くやしい!

3.Мин нет

全曲とは打って変わってダウナー&チル寄りのエレクトロ。Crean Banditっぽい。間奏のシンセストリングスが幻想的。
「ミャ」「ニャ」などの柔らかい発音が多いロシア語ラップはエッジが少なくエレクトロサウンドと相性が良い印象。歌詞はどうやらアルカイダ批判の様子。

4.◎Всё будет хорошо(バッハ: 管弦楽組曲第3番:エア[G線上のアリア])

どこかで聞いたようなピチカート音。どこかで聞いたようなフックのメロディ。曲タイトルを英訳すると『Everything will be fine』。これはsweetboxの『everything’s gonna be alright』のカバー??
しかしキラキラなシンセでアレンジされたトラックや、後半をバックトラックとセリフのみで聴かせるフックなどオリジナリティが強い。特に早々にヴォーカルが消え去るフックは余韻があって新鮮。

5.◎Никто не узнает

主張の強いリズミカルなスネアやトランシーなシンセなど、ちょっとt.A.T.u.っぽい曲。メランコリックなシンセストリングスのループがカッコいい。無闇に派手で明るかった1曲目を除いては、暗く抒情的な楽曲が続く。

6.◎На игле(モーツァルト: レクイエム:「涙の日」)

12/8拍子の原曲を4/4拍子に変えてサンプリング。その割にバスドラは3連リズムだったりする。ストリングスとスペーシーなシンセも合わさり、浮遊感のある不思議なサウンド。やはりトラックはチルアウト系の面影がある。2分強で終わるのがもったいない。

7.Мама

シリアスなシンセストリングスが曲を引っ張るt.A.T.u.風HIPHOP曲。ヴァースのシンセトラックの旋律もクラシカル。リバースシンバル風のクレッシェンドSEとティンパニで煽る割に全然盛り上がらないフックは意図的な演出と思われるけれど、やっぱり歌詞が解らないので曲の世界観が掴めない。くやしい!

8.◎Прости, прощай

スピード感のあるドラムとギターをフィーチャーした、クールで疾走感のあるトランス曲。どの曲も流れを変える間奏のシンセソロがとにかくカッコいい。

9.Мин нет (Radio Remix)
10.Никто не узнает (Electro Dance Remix)
11.Pease – Да (Latina Rap Remix)

リミックス。どれもコードが無茶苦茶とかダンスチューンに寄り過ぎといった事はなく、普通に聴ける。

 

総評

全体的にエレクトロポップ×クラシック×HIPHOPという感じで、世界的に大ヒットしたCrean Banditと同様のベクトルの音楽を10年早くやっている。
思えばクラシックもエレクトロもロシア音楽の十八番で、生まれるべくして生まれたサウンドという感じ。

ドキャッチーな1曲目のイメージとは裏腹に、2曲目以降はメロウでチルなマイナートラック群が並ぶ。第一印象のまま聴くと肩透かしを喰らうクセ者の一枚。ロシアンポップはt.A.T.u.だけじゃないぞ。

ABOUT ME
syro
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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