ピアノ・ソナタ第11番 イ長調の第3楽章は、通称「トルコ行進曲」と呼ばれます。
耳馴染みの良い軽快なメロディで、18曲あるモーツァルトのピアノソナタの中でも最も著名であると言えます。
左手がトルコの伝統的な軍楽リズムを奏でているとされています。
他によく知られているのは第15番の第1楽章とか。耳にした事があるのではないでしょうか。
「トルコ行進曲」はとてもキャッチ―なのですが、冒頭のメロディが16分音符を連発する上に♯も混じりながら音程が動き回るため、歌うには難易度がとても高い曲です。
しかし、そんな難曲「トルコ行進曲」に挑んできた歌手たちも多く存在します。
日本で最も有名なのは、紅白歌合戦にも何度も出場した由紀さおり&安田祥子でしょう。難曲に対して、二重唱(二人で歌う事で息継ぎの時間を作る)&スキャット(歌詞を付けない事で早口でも歌いやすくする)によって対応しています。
オタク界で有名なのは、オワタP Feat. 初音ミクの「トルコ行進曲 オワタ\(^o^)/」。人力では難しい曲をコンピューターに歌わせるというコンセプトの作品。
島谷ひとみの「Camellia-カメリア-」では、第一主題ではなく比較的ゆったりな第二主題の方を歌メロに引用しています。
ドイツの子ども向けユニットSimone Sommerland, Karsten Glück & die Kita-Fröscheや、日本の子ども向け作品「天才おばかクラシック」の場合はテンポを落としてカバー。
という事で、少なくとも私の知る限りでは、トルコ行進曲を真っ向勝負で歌ものカバーした作品は存在しなかったのですが、遂に現れました。
それが今回紹介する、アメリカのラッパー/プロデューサーであるBusdriverの楽曲「Me Time」です。HIPHOPですが、ちゃんと音程も取ってます。中盤なんて全然息継ぎできません。凄い。もはや曲芸です。
トルコ行進曲の軽快な16分音符のリズムに、高速のラップ&ドラムマシンを合わせた曲。
なるほどこの難曲に挑むには高速ラップしか無い!ラップなら多少音程が外れてもOKだし。
トルコ行進曲のメロディに乗せて、矢継ぎ早に米国資本主義を批判するこの曲。コミカルな前半とは裏腹に、後半には狂気を孕んだ意外な展開を見せます。後半のメロディもトルコ行進曲のフレーズをベースにしています。
2009年リリースの6thアルバム『Jhelli Beam』収録。インダストリアル風のトラックが中心です。「Me Time」は浮き気味。