モーツァルト

レクイエム/ターヤ・トゥルネン「I Walk Alone」

2005年にシンフォニック・メタルバンドNIGHTWISHを脱退し、その後2007年にリリースしたターヤ・トゥルネン(Tarja Turunen)のソロ2ndアルバム「My Winter Storm」。その1曲目にあたる「I Walk Alone」で、モーツァルトのレクイエムを引用しています。

「I Walk Alone」はミドルテンポのシンフォニック・ロックで、NIGHTWISHのシングル曲の雰囲気に近いです。あえて大人しめにしている時のNIGHTWISH。

 

「I Walk Alone」の出だしからバックで流れる低音と高音を交互に行き来するストリングスは、レクイエム全体に渡って流れるメロディです。

特にレクイエムの1曲目「入祭唱(Introitus)」で目立って現れるストリングスのテーマ。レクイエムの冒頭と同じ出だしから始まる「I Walk Alone」です。

 

間奏では管楽器が、レクイエムの「Confutatis(呪われしものどもを罰し)」のコーラス部分のメロディを奏でています。

この引用されているレクイエムの「Confutatis(呪われしものどもを罰し)」の歌詞は、”呪われ退けられし者たちが灼熱の炎に投じられる時、祝福される者たちと共に私を呼んでください”というものです。要は”私を天国へ行かせてください、罪人は地獄へ“という内容。

 

前身バンドのNIGHTWISHをトラブルで脱退した後、2007年9月にNIGHTWISHは新ヴォーカルを迎えたアルバム「Dark Passion Play」をリリースします。その1曲目である『The Poet and the Pendulum』は、”作曲家は死んだ(The songwriter’s dead)“の歌詞で始まる、脱退したターヤ・トゥルネンへの恨み節を綴った怨念あふれる曲です。

 

そして同年11月リリースのこのターヤのソロ・アルバム。そして「I Walk Alone」という曲名とこのレクイエムの引用。そして”私は死んではいない(I’m not dead)から始まる歌詞。

NIGHTWISHに対して「ご愁傷さま。私は一人で天国へ行くわ」と言い放つアンサー・ソングと捉える事もできますし、互いのリリース時期の近さから考えると、お互い示し合わせたプロレス的興行とも取れなくもないです。

 

「I Walk Alone」収録のアルバム「My Winter Storm」は前バンドNIGHTWISHとサラ・ブライトマンを足して2で割ったような作風です。というかミドルテンポのNIGHTWISH風の曲と、ピアノやストリングスメインで歌声を聴かせるスローバラード曲が交互に出てくるような感じ。ヴォーカリストのソロ・アルバムらしくカバー曲も収録しています。

 

NIGHTWISHのファンを連れてきながらも、自身の今後はクラシック寄りのスタイルで行きたいという意図が見えます。

オーケストラ&バンドサウンドをバックに、クラシカルな合唱とヴォーカルが呼応するように掛け合う「Song For Me」、ピアノが切なく印象的なメロディを奏でる「Oasis」、低音管楽器をフィーチャーしたマイナーバラード「Damned And Divine」などはとても美しく良い曲です。

フィンランド出身歌手の「冬」をテーマにしたアルバムという事で、切なく冷たい独特の雰囲気を醸し出しています。

 

NIGHTWISH風の曲も多いですが、やはり本家に比べるとドラマ性やメロディの美しさ、アレンジの深みで一段劣る印象です。また曲のテンポも全体的に遅く、リズム楽器も目立たないためゆったりしています。ただそれが結果的に、ヴォーカルの存在感を際立たせているとも言えます。

 

そしてその後、2015年には今まで数多くののオペラ歌手が発表してきたアヴェ・マリア集をリリースします。

 原曲に概ね忠実な、シンプルなアレンジで聴かせるアヴェ・マリアです。

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ターヤの来日公演時にサポートアクトを務めた韓国のシンフォニックメタルバンドISHTAR(イシュタル)もヘンデルのアリアをカバーしています。

ターヤ期NIGHTWISH直系の、オペラティックシンフォメタルです。きっと気に入るはず。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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