モーツァルト

オペラ≪魔笛≫より「夜の女王のアリア」/ELISA「REALISM」

アニメソングを多く歌う日本の歌手ELISA(エリサ)。彼女の楽曲「REALISM」は、モーツァルトのオペラ《魔笛》の中の著名な歌曲である「夜の女王のアリア」をオマージュした楽曲となっています。

TVアニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』エンディングテーマ。
ド派手なアレンジ・複雑なコーラス・リズムの変化・突然挿入されるフレーズなど、聴き手の予想を裏切る展開が次々と続きます。

スタンダードなアニソンに、ALI PROJECT・J.A.シーザーや鷺巣詩郎などの不気味系シンフォプログレをぶち込んだ感じ。

ギミックに塗れた曲の中で、ようやく解放感に浸れるサビはシンプル&ストレートに盛り上げるのかと思いきや、ここでもありえない転調を見せる、めくるめく展開。そこから間髪入れずに「夜の女王のアリア」のコロラトゥーラへ突入する、まさしく怒涛の展開です。

 

このサビ⇒「夜の女王のアリア」のパートまでの転調の流れを解説します。

「守りたいのか 守れないのか」=ロ長調
「わからない 消せ」=嬰ハ短調(下属調の平行調への転調。比較的似ており音程の跳躍も少ないため違和感が少ない)
「ない」=おそらく嬰ト短調(属調への転調。違和感の少ない転調)
「運命」=ヘ長調←←←

この「運命」=ヘ長調の転調が超超超クセ者。普通に考えれば、下記のどちらかの案を採用するはずなのです。

案1:ホ長調へ転調する。それなら嬰ト短調とは下属調の平行調の関係になるので、自然な転調となる。ホ長調嬰ハ短調の平行調でもあるため、嬰ハ短調との相性も良い。更に、元の旋律を半音下げるだけでホ長調になるため、メロディーラインもほぼ変えずに済む。総じて、比較的違和感が無い。

案2:転調を2小節遅らせて、「変えたいのか 変えられないのか」の所でヘ長調に転調させる。ホ長調を半音上げるとヘ長調になるため、サビをもう一度繰り返すタイミングで半音上げるような感じになる。サビの繰り返しのタイミングで半音上げるのは、アニソンでは割と良くある手法。

例:サビを繰り返すタイミングで半音上がる、fripSideの「LEVEL5 -judgelight-」。一段ギアが上がる感じになり、曲にメリハリも付きます。

 

しかし「REALISM」はどちらの案とも異なり、選りに選っての謎のタイミングで謎の転調をしてしまうため、すっごい変な感じになっています。この曲は一曲全体を通して、ひたすら聴き手の裏をかくような仕掛けだらけなので、意図的なものでしょうけど。

 

その後は同様に、ヘ長調から下属調の平行調であるト短調⇒属調である二短調へと転調していき、そのままニ短調による「夜の女王のアリア」のコロラトゥーラへと突入していきます。

 

サビの前半で、一瞬だけ嬰ト短調に転調する展開がどうにも中途半端で、個人的に謎だったのですが、それが後半への伏線になっており、サビの後半ではこの転調(ト短調⇒二短調)がきちんと機能しています。

あの部分の転調があるからこそ、サビ後半から「夜の女王のアリア」のパートへの流れがスムーズ&ドラマティックになっています(事前に程良い転調をしておいて、「夜の女王のアリア」へ突入する部分では調は変わらない)。

2013年リリース。2番以降は更に怒涛の展開を見せます。この曲は絶対フルコーラスで聴いて欲しいです。

 

モーツァルトの原曲はこちら。「REALISM」では、原曲とは調もリズムも変わっています。

 

これはおそらく、フィンランドの著名なシンフォニックメタルバンド、NIGHTWISHの「Passion and the opera」のオマージュと思われます。

オペラ≪魔笛≫より「夜の女王のアリア」/NIGHTWISH「Passion and the opera」フィンランドのシンフォニックメタルバンドNIGHTWISH(ナイトウィッシュ)。オーケストレーションとオペラティックな女性ヴォーカルを前...

NIGHTWISHオマージュである根拠は以下の3点。

根拠1:原曲のコロラトゥーラ部分はヘ長調ですが、ELIZAとNIGHTWISHは短調に移調している

根拠2:音型が原曲とは異なる(原曲は4拍目から始まり、連発される最高音の音符の数は8個。ELIZAとNIGHTWISHは1拍目から始まり、最高音の音符の数は10個

根拠3:「REALISM」の作曲者であるMish-MoshはBABYMETALへの曲提供など、メタル的アプローチの曲が多い作家

そんなMish-Moshと、クラシック音楽をルーツに持つELISAの音楽性が合わさった結果がこの曲なのでしょう。

 

ELIZAは過去にも「God only knows」「A Whole New World God Only Knows」「光の星」等、複雑な展開の曲やオーケストラを使用した曲等を歌っており、プログレやクラシック好きにもおススメできる歌手です。


「REALISM」「God only knows」収録のベストアルバム。個人的に一番好きなのは、ドラマティックなシンフォニックロックの「ebullient future」。ベースギターが陰の主役。魅せます。

ABOUT ME
syro
syro
1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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