2008年結成の日本のシンフォニックバンドCROSS VEIN。
2018年にリリースされたアルバム「Gate of Fantasia」の中の1曲「Masquerade~交響曲第25番~」で、モーツァルトの交響曲第25番をカバーしています。
収録アルバムのトレイラー映像。
1分頃から該当曲が流れます。上記のAmazonリンクでは別の部分が聴けます。
こちらはインストでの生演奏動画。
CROSS VEIN
CROSS VEINは女性ボーカルのシンフォニックメタルバンドです。過去に3枚のアルバムをリリースしていますが、1stアルバムから徐々にポップスの要素が強くなっていきます。
1stアルバムより「Moon Addict」MV。
ザクザクギターに独特のクセのあるボーカルが激突し、更にその上からすべてを飲み込むようなシンセオーケストレーション。まさに音の洪水。一番激しくシンフォニックなアルバムです。個人的には一番好み。
4曲目「インコンプリート・レクイエム」では、間奏にモーツァルトのトルコ行進曲を引用。
2ndアルバムより「Maid of Lorraine」MV。
バンドサウンドを前面に出したスピード感のある曲が並びます。明るい曲や複雑な曲、ポップな曲のバランスが良く、1曲は好みの曲が見つかる構成です。
そして3rdアルバム。今まででは一番ポップス寄りのサウンドですが、「Masquerade~交響曲第25番~」はその中で一番クラシカルなサウンドの曲です。
モーツァルトの「交響曲第25番」
モーツァルトの「交響曲第25番」は映画「アマデウス」で一躍有名になった曲です。
モーツァルトは40曲以上の交響曲を作曲しましたが、そのうち短調の交響曲はこの25番と40番だけです。しかしこの2曲はいずれも有名で、モーツァルトのシリアスなメロディが存分に堪能できます。
もう一つの短調交響曲「40番」。
25番よりもバロック音楽風で、どちらかというとこっちの方がMasquerade(仮面舞踏会)感があります。第3,4楽章もとてもメロディアスです。聴いたことが無い人は是非聴いてみましょう!
意外に少ない25番と40番のカップリングCD。
25番、40番いずれも全4楽章から成り、通して聴くと20分程度です。緩徐楽章は第2楽章のみであり、曲の派手さ・メロディの美しさ・クラシックの中では長すぎず短すぎずの程よい長さ・楽器編成も多すぎず少なすぎずで楽器の音色を十分堪能できる規模。と
クラシック初心者に大変勧めやすいクラシック曲です。特に暗めでメロディがはっきりしている曲が好きな人は間違いなく気に入るはずです。
プロのオーケストラから市民楽団までコンサートで演奏される事も多く、生で聴く機会が持ちやすいのもポイント。
「Masquerade~交響曲第25番~」
CROSS VEINの「Masquerade~交響曲第25番~」は、単に原曲をなぞるだけのカバーでは無く、原曲を再構築したカバー曲です。
まずイントロはいちばん有名な第1楽章。
続くAメロはなんとラストの第4楽章。 冒頭のメロディです。
Bメロは第3楽章の30秒辺りからの部分。
一旦3拍子にリズムチェンジします。
そしてここまで引用しておいて、サビは何とオリジナル。コード進行やメロディ等第1楽章っぽいので第1楽章のアレンジと取れなくもないですが、CROSS VEINの王道進行でもあるのでおそらくオリジナルでしょう。
2番の後の間奏は再び第1楽章ですが、今度はイントロとは他の部分です。上の動画リンクの3分30秒辺りから。途中にヴォーカルの語りが入りますが、そこもまだバックで引用が続いています。
ラストは第1楽章のラストを引用したメロディで幕を閉じます。
全部で6分程度の曲ですが、原曲を再構築した上での良いとこ取りな構成が凄いです。
一般的にクラシックのカバーというと、イントロももちろんですが一番インパクトが必要とされるサビに、有名なメロディや原曲のフレーズを持ってくる事が多いです。
そんな中「Masquerade~交響曲第25番~」はサビにオリジナルのメロディを配置しています。CROSS VEINのオリジナリティを原曲の雰囲気とシナジーさせ違和感の無い展開に仕上げています。自身のメロディセンスに対する自信の現れとも言えるでしょう。
なにせモーツァルトの大名曲をカバーしておいて、サビだけオリジナルですよ。余程自信がないとできませんよこんな使い方。
3拍子の第3楽章を「転」にあたるBメロに配置するアイディアも目からウロコです。Bメロ3拍子はここ10年程で一気に増えている手法でもありますが、こういう引用方法は前例があるのでしょうか。
ちなみに第2楽章の引用部分は見つかりませんでしたが、もしかしたらどこかにあるのかもしれません。原曲と比べて何度も聴きたくなる名曲です。
こちらの記事では、同じく交響曲第25番をカバーした曲を紹介しています。
こちらもイントロや間奏に第1楽章のメロディを配置し、歌メロはオリジナルという不思議な構成です。第1楽章の冒頭が「ザ・イントロオブイントロ」な雰囲気だからでしょうか。不思議な共通項です。
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