スペインのシンフォニック・メタルバンドDark Moor(ダークムーア)が2007年リリースしたアルバム《TAROT》。その中1曲「The Moon」で、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と、ピアノソナタ第14番「月光」をカバーしています。
2007年リリース。リンク先で一部視聴できます。
本アルバム《TAROT》は、タロットカードをテーマにしたコンセプト・アルバムです。各局がタロットカードのいわゆる「大アルカナ」のカード名にちなんで名付けられています。
Dark Moorのアルバムの中でもハードなバンドサウンドが特色で、メロディの良さもあり評価の高いアルバムです。
比較的シンフォニック要素が少ない本アルバムですが、そんな《TAROT》のシンフォ要素を一手に引き受けているのが、11分半に渡る大作の「The Moon」です。
Dark Moorの「The Moon」は大きく3つのパートに分ける事ができます。
イントロ~5分までは「運命」第1楽章。
5分~8分が「月光」第1楽章。
そして8分から「運命」第4楽章のパート。
最後は再び第1楽章のパートを再現し幕を閉じます。
「運命」の原曲は全4楽章からなり、有名な第1楽章から穏やかな第2楽章、メロディアスなロンドである第3楽章を経て、明るく大団円の第4楽章で締めます。
重厚でシリアスな第1楽章から紆余曲折を経て、勇ましく幸福感のあるキャッチーな第4楽章で終わる構成はとても美しくドラマティックです。
クラシックの曲でもとても有名な「運命」ですが、改めて最初から最後まで通して聴きたい名曲です。
Dark Moorの「The Moon」は、原曲である「運命」のいわゆる緩徐楽章的な部分、途中の道程である第2,3楽章を「月光」に置き換え、オリジナルのメロディや展開も随所に加えつつ、新たな構成をもって交響曲的メタルに仕上げています。いわば「運命」の再構築であり、新しい解釈の形、と捉えることができます。
そんな「運命」第1楽章→「月光」第1楽章→「運命」第4楽章の構成をとる「The Moon」ですが、単なる並べ替えではなく、所々に他のエッセンスを散りばめています。
例えば、曲のサビにあたる、「運命」第1楽章のオーケストラをバックに合唱する部分の直前のストリングス。曲の1:25~の部分。ここは「運命」第3楽章からの引用になります。
この動画の0:30~の部分。
そしてギターソロ直前。ハイトーンのヴォーカルの音程がどんどん上がっていく場面。曲の2:25~の部分。ここの歌メロは「運命」第4楽章からの引用。上記の動画でいうと5:00~の部分。第1楽章のカバーであるパートに、第4楽章のモチーフが隠されています。
もしかすると他にも原曲のモチーフが隠されているのかもしれません。ぜひ原曲と聴き比べてみましょう。
また当サイトでは、Dark Moorの他のクラシックカバー曲も紹介しています。
いずれもただの引用では終わらせない、すごい曲です。
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