アニメ”のだめカンタービレ”のエンディングテーマとしてリリースされたクリスタル・ケイの「こんなに近くで…」。ベートーベンの交響曲第7番 第1楽章を引用しています。
2007年リリース。リンク先で視聴できます。
こちらのリンク からはMVが一部視聴可。サビが聴けます。
ベートーヴェンの交響曲第七番は、ドラマ版”のだめカンタービレ”の主題曲として放送され、劇中でも演奏された曲です。原作のマンガでも使用されています。
軽快な第1楽章に、マイナーで美メロの第2楽章、大盛り上がりで終わる第4楽章と見せ場の多い交響曲第7番。コンサートで演奏される機会も多く、馴染みやすい交響曲です。
私の大のお気に入りは第2楽章。ベートーベンらしくない、シュールでシアトリカルなメロディ。
原曲の使用部分解説
で、肝心の第1楽章はこちら。
クリスタル・ケイの「こんなに近くで…」は原曲をそのまま再現、という感じではなく、R&Bなオリジナルの曲の中に、サラっと交響曲第7番が入っています。難易度高めの引用です。
イントロの冒頭部分は、上記動画の4:00~から始まる第2主題のメロディをアレンジしたもの。行進曲かと言うくらいカチっとしたリズムの原曲から、シンコペーションを多く用いた流れるようなドラマティックなリズムになっています。
イントロのラストは上記動画の0:30~0:35の辺りからの引用。Bメロのラスト(この胸を締め付けてく~)とサビのラスト(you dont understand~)の部分も同様。”ミ~シ~“のメロディ。
ラストサビの直前に、サビとイントロ(第2主題)部分のコーラスが同時に流れる所がありますが、そのパートの最後で上記の“ミ~シ~”の部分が重なります。ほぼオリジナルのサビメロと、ベートーヴェンを引用したイントロのメロディが重なり合い、ドラマティックな効果をもたらしています。
また、そのメロディが重なり合う部分のコードは強烈な惹きを持ったE7(Ⅴ7)であり、コード進行も合わさってエモーショナルに仕上がっています。今からⅠへ行くぞ~間もなく大団円を迎えるぞ~沸騰寸前だぞ~というコードです。
歌詞は二人の男女の心のすれ違いをテーマにしたものですが、上記の2種類の違うメロディが一瞬重なり合う瞬間は、二人のすれ違う心が一瞬重なりそうになる様子を表現しているものと思われます。
しかしその部分の歌詞は「直接告白できずに、思いを空へ囁くだけ」というシーンであり、その後すぐに通常のサビに戻ってしまいます。
二人の想いが、重なり合いそうで重ならない、もどかしい気持ちが、音楽でも表現されています。またその部分は、オリジナルのメロディと原曲のメロディが一瞬だけ重なる瞬間でもあります。
サビの冒頭の下降するメロディ(こんなにこんなに~”ド♯シララ~”)も”交響曲第7番 第1楽章”から着想を得ていそうです。第2主題のメロディの締めが”ド♯シラ”です。上記の原曲動画で言うと4:12の部分。
もしくは、第1楽章の冒頭から何度も繰り返される下降(”ラミド♯””シソ♯ミ”など)のメロディや第2主題の出だしの「ミレド♯」のメロディ。
“交響曲第7番 第1楽章”は、軽快なメロディや徐々に上がっていくメロディが印象的ですが、第1主題、第2主題ともに下降のメロディで始まるのです。
原曲と同様に下降のメロディから始めるサビ。そしてそのメロディの形は、第2主題ラストからの引用。何ともニクい引用です。
原曲の“ド♯シラ”は、まさにメロディの着地点という感じの使われ方をしていますが、「こんなに近くで…」の“ド♯シラ”は、同じメロディでも配置場所やコード進行から原曲とは全く違う印象を受けます。
原曲のエッセンスをうまく抽出している、Crystal Keyの「こんなに近くで…」。曲全体を通してバックにはストリングスが流れており、交響曲第7番のイメージを膨らませて作っている事が伺えます。
原曲をほぼそのまま再現していたゴスペラースの「sky high」とは、対照的なカバーとなっています。
ベストアルバム。前衛的なサウンドから信じられないくらいキャッチーなサビが飛び出す「Boyfriend -partⅡ-」、流暢な英語を活かしたスピード感のある本格的R&Bナンバー「Kirakuni」、ヒットシングル「恋におちたら」等、聴きどころが多いです。
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