今回紹介するfaith の「Two Futures」。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第2楽章をサンプリングした楽曲です。2007年リリース。
この曲をリリースする以前はクラシック風のオリジナル曲を制作していましたが、「Two Futures」もまたこれまでのfaithサウンドを踏襲した、ピアノとストリングスの美しい音色にHIPHOPのリズムを合わせた独特の音作りです。
ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「悲愴」。
有名な第2楽章。
を聴いて「悲愴感が無いぞ…。」と思う方も多いと思いますが、第1楽章と第3楽章はしっかりと悲愴感が出ています。
第2楽章は派手で激しい第1楽章の後にゆったり美しいメロディを聴かせる緩徐楽章のポジションです。
第1楽章。静かに始まりますが、1分半位から雰囲気が変わります。
第3楽章。 こっちをサンプリングしても面白そう…。シリアスでかっこいいです。
ピアノソナタ第14番(月光)、第23番(熱情)と合わせてベートーヴェンの三大ピアノソナタと呼ばれます。
ロンド形式
原曲の「悲愴」第2楽章は「ロンド形式」を取っています。「ロンド形式」というのは
A→B→A→C→A といったように、メインのパート(主題)の合間に違う旋律を挟んでいく楽曲構成の事を指します。「悲愴」第2楽章は冒頭に有名で印象的なメロディが流れ、一度雰囲気を変えた後再び主題に戻ります。その後また新しいパートに移った後、再々度元の主題に戻り幕を閉じます。
ちなみにポップスでロンド形式というと、乃木坂46の「君の名は希望」が挙げられます。
こちらの記事で詳しく解説しています。
「悲愴」第2楽章はゆったりしていますが、ロンドは漢字で「輪舞曲」と書くように、一般的には軽快な、今風に言えば「ノリの良い、踊れる」曲になっている事が多いです。
「悲愴」の第3楽章もロンド形式であり、ピアノ・ソナタなので「踊れる」とまでは行きませんが、軽快な曲調です。faithの楽曲のようにR&B風のリズムを混ぜれば、踊れる曲になりそうな感じです。
また、協奏曲や交響曲の最終楽章にロンドは登場する事が多いです。
この演奏動画の8:30辺りから。
私の大好きなメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲ニ短調の最終楽章である第3楽章です。踊れるロンド。
faithの特色は美しい長調曲とノリの良い短調曲に分かれると前述しましたが、短調曲の踊れるリズムに乗せてラップパートやヴォーカルパートが目まぐるしく入れ替わる様は「輪舞曲的」とも言えます。
そんなfaithですが、アルバムを通して聴くと、はっきりいってワンパターンな曲調が目立つ側面もあります。上記のように多くの曲調が2パターンに分かれるためです。また短調曲は思いっきりド短調な曲なので、続けて聴くと耳が厳しいです。疲れます。
しかし、faithの「顔」とも言える美しいクラシカルな曲の合間にもう一つの側面であるド短調の曲が配置され、そしてその他のポップな曲・ジャジーな曲が合間合間に登場し、全体として「ノリの良いクラシカルなHIPHOP」として成立しているアルバム構成もまた、広い意味で「ロンド的」と言えるのではないでしょうか。
シングル「Two Futures」のカップリング曲「恋の天使~乙女の祈り~」もクラシックのサンプリング曲となっています。
こちらの記事にて紹介しています。合わせてご覧ください。
またfaithは私にとってとても思い入れのあるアーティストでもあり、
こちらの個別記事でも特集しています。
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