アイドルグループ乃木坂46の18thシングル「逃げ水」。ドビュッシーの「月の光」を引用しています。
「月の光」のフレーズが突然登場する、サビ直前のブレイクがとても印象的な曲です。
2017年リリースのシングル表題曲。
ドビュッシーの原曲はこちら。《ベルガマスク組曲》の3曲目に位置する曲です。
決してメロディアスとは言えないけれど、個性的で美しい音。ドビュッシーの曲の中でもアラベスク第1番と並んで聴きやすく、美しい有名な曲です。
「逃げ水」で「月の光」を引用した背景や楽曲解説に関しては、こちらの作曲者の方のブログで詳しく述べられています。
“Aメロの後ろでずっと「月の光」が鳴っている”というのは、
おそらく曲全体を通してモチーフとして流れている”ミ♭ファソシ♭”のメロディでは無く、もう一つバックで鳴っているピアノの音色の事だと思われます。
歌い出しの”日差しに切り取られた”の直後が一番聴き取りやすいです。ドビュッシーらしい、メロディアスでは無く掴み所が無いけれど、とても美しい音型。
また“Dメロ後の落ちサビの駆け上がるピアノのフレーズも「月の光」のオマージュ”というのは、「逃げ水」動画の5:40~の部分。
「月の光」動画の2:00~辺りから、ピアノ伴奏で徐々に上がっていくアルペジオを繰り返している部分を引用しているものと思われます。
派手で明るいAKBシリーズのアイドルに対して、ビジュアル的にも音楽的にもシックで透明感のあるイメージの坂道シリーズ。そんな乃木坂46の楽曲に「月の光」を引用するのは、とてもグループイメージに合った良い選曲です。
そんな乃木坂46の楽曲で私が好きなのは「夜明けまで強がらなくてもいい」。中谷美紀の「砂の果実」にも似た、とても哀愁のあるサビメロ終止がたまりません。
2019年リリース。
また「君の名は希望」では、クラシックでよく使用される大ロンド形式を使用しています。ポップスでは超珍しい。
A→B→A→C→A→B→A と、合間に異なるメロディを挟みながらAメロが繰り返されます。左右対称の美しい曲構成。
ただ、「C」が明らかに曲の肝であるサビに該当するため「A」が主題とは言いづらく、また上記のロンド的展開の後→C→D→C→C’→A’と進行するため厳密にロンドと言えるかは微妙な気もします(単にサビへの繋ぎがABAになっているだけとも取れます)。
が、イントロでも使用される「A」の部は主題と呼ぶに十分な、とてもキレイで印象深いメロディになっています。
(2番の後Dメロから一旦Aに戻って、それから転調サビに突入すれば、もっとロンド感が出たかも…。)
2013年リリース。クラシック好きにお勧めの乃木坂46。
こちらは「逃げ水」と同じく谷村庸平さん作編曲のHKT48「会いたくて嫌になる」。素直なメロディ進行にちょっと忙しないリズムの変化を合わせた、王道のマイナーアイドル歌謡。良い曲。
こちらの記事では、同じくドビュッシーの「月の光」を引用したアイドルソングを紹介しています。こちらもミステリアスな良い曲。