ゲスの極み乙女。の4thフルアルバム《好きなら問わない》の収録曲、「オンナは変わる」は、間奏で大胆にベートーヴェンの交響曲第5番「運命」第1楽章を引用した楽曲となっています。
間奏の中で他の楽器と全く馴染まず、思いっきり浮いているように聴こえる「運命」のフレーズ。意図的な演出であるものと思われます。
まず、基本的に大人数が楽譜通りに演奏するクラシックは、即興的な要素が強いジャズやジャムセッション的な音楽とは正反対に位置する音楽です。
「オンナは変わる」では、そんなジャムセッション風の長いインストパートにクラシックのフレーズを入れる事で、強烈な違和感と緊張感をもたらしています。
また、「オンナは変わる」はファンク風の16ビートで跳ねるリズムを多用した曲になっていますが、「運命」の動機も16分音符とは言え、リズムはだいぶ異なります。
そんなリズムの異なる2曲を合わせることで、更に違和感を強調させています。
また「オンナは変わる」では、「運命」のメロディを中途半端な所でぶつ切りにして終わらせることで、曲の印象をより劇的にしています。
あらゆるクラシック曲の中でも最も有名なフレーズをあえて引用している意図が、そこにもあると思われます。
ロックにファンクやヒップホップ、ジャズ、プログレ、そしてクラシック。
様々なジャンルの要素をミックスさせているようで、その実どの音楽にも似ていないオリジナリティのある楽曲を生み出す、ゲスの極み乙女。
「オンナは変わる」は、そんな彼らの本領発揮ナンバーと言えます。
ボーカル川谷絵音の印象的な歌声&メロディに注目しがちなゲスの極み乙女。ですが、もう一つ注目すべきは間奏です。
こちらは同じアルバム《好きなら問わない》収録の「イメージセンリャク」。2:30~の間奏に注目。
3拍で繰り返す規則的なギターのフレーズと、インプロビゼーションのジャズ風ピアノが不穏に混ざり合い、最後はプログレッシブロック風のユニゾンでまとめます。
ジャズとプログレを混ぜ合わせた、他のバンドとは一線を画す超カッコいい間奏です。
ゲスの極み乙女。の代表曲の一つ「キラーボール」ではショパンの幻想即興曲を間奏で引用しています。「オンナは変わる」とは別の方法で、間奏の終わり方をとても劇的に演出しています。こちらの記事で紹介しています。
また「キラーボール」の続編的な曲「キラーボールをもう一度」でも幻想即興曲を引用しています。