アメリカのロックバンドEvanescence(エヴァネッセンス)。2006年リリースの2ndアルバム「The Open Door」の1曲「Lacrymosa」でモーツァルトのレクイエムの中の1曲「Lacrymosa(涙の日)」を引用しています。
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エヴァネッセンスとゴシックメタル
Evanescence(エヴァネッセンス)は2003年リリースの1stアルバム「Fallen」が世界で1400万枚の売上を博し、グラミー賞を2部門獲得する事で一躍有名になったバンドです。
代表曲「Bring Me To Life」。2番以降のサビの展開がドラマティック。
1stアルバム「Fallen」は他にもクラシカルな合唱をフィーチャーした曲等もある名盤です。
当時のミクスチャーロックのブームの一端として大ヒットしたEvanescenceですが、この1stアルバムの方向性はゴシックメタルに近いです。
ゴシックメタルというのはメタルにおける1つのジャンルで、スロー~ミディアムテンポで暗く退廃的な雰囲気が特徴のメタルです。
代表的なアーティストとしてParadise Lostが挙げられます。しかしParadise Lostの作風はとても地味なものであり、現在はどちらかというとこのEvanescenceの「Fallen」のように、適度にシンフォニックで耽美的な曲調のものを”ゴシックメタル”と呼ぶ傾向が強いように思います。
様々に形を変え、派生しながら広まった”ゴシックメタル”。私の1番のお気に入りはTheatre Of Tragedyの2002年リリースのアルバム「Assembly」。
元々はParadise Lostのようなスタンダードなゴシックメタルを作っていたTheatre Of Tragedyですが、徐々にインダストリアルサウンド(というかダンスミュージック?)へ傾倒するようになり、それが極まった本アルバム。”メタル化したglobe”とでも言うべきなオンリーワンの作風です。他に類を見ない、未だに大好きな傑作アルバム。
Theatre Of Tragedyの当時のヴォーカルであるリヴ・クリスティンは、その後Leaves’ Eyesというバンドで活躍しました。
もう1つのお気に入りはThe 3rd And The Mortalの「MEMOIRS」。特に1曲目の「Zeppoliner」がすごい。ビョークをジャズ風にして更に怪しく派手にしたような、これも唯一無二。超かっこいい…。ゴシックメタルはとにかく独特な雰囲気が魅力です。雰囲気に浸って聴きましょう。
Evanescence「Lacrymosa」
モーツァルトをサンプリングしているエヴァネッセンスの「Lacrymosa」は、2ndアルバム「The Open Door」及び、2017年リリースのオーケストラアレンジアルバム「SYNTHESIS」に収録されています。
2ndアルバム「The Open Door」は、バンドの主要メンバーであり作曲もしていたギターのベン・ムーディーが脱退した影響もあり、「Fallen」の頃のクラシカルな雰囲気や曲のドラマ性は無くなっています。
その分低音のギターやボーカルの声が全面に出ており、いわゆるモダン・ヘヴィネス的な音作りになっています。
そんな「The Open Door」の中で唯一と言って良いほどクラシカルな雰囲気を残しているのがこの「Lacrymosa」です。
モーツァルトが死の直前に書いたと言われる、「Lacrymosa(涙の日)」の冒頭の8小節をサンプリングしています。曲の冒頭からサビまで同じフレーズを繰り返す手法を取っているため、曲展開が単調で、レクイエムを引用している割に盛り上がりに欠けます。
このアルバムは前述の通り、どちらかというとバンドの音とヴォーカルの声を聴かせるアルバムとなっているため、本アルバムのコンセプトを保ったまま前作のクラシカルな雰囲気を継承した結果のサウンド、といった感じに仕上がっています。
また過度に盛り上げずに退廃的な雰囲気を作り出す手法はゴシックメタル的であるとも言えます。
曲のラストはいわゆるピカルディ終止で穏やかに締めています。大切な人との別れを歌う曲であり、ラストのメジャーコードが決別の踏ん切りを表現しています。
先述の通り、この曲でサンプリングされている8小節はモーツァルトが生涯で最後に作曲した部分であり、この部分をループさせる事には特別な意味があります。鎮魂歌であるモーツァルトのレクイエムでも、特に「最後」「終わり」「別れ」を想起させるフレーズです。
オーケストラ・アルバム「SYNTHESIS」のバージョンがyoutubeにupされていました。
オーケストラ・アレンジアルバムというと、ともすればベタなアレンジになりがちですが、この 「SYNTHESIS」は打ち込みサウンドとオーケストラを融合させており、曲によって映画音楽風であったり、ヒーリング・ミュージック風であったりと面白い作風です。「The Open Door」は正直ギターがちょっと煩い…。と思う方はこっちにしましょう。私もこっち派。
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