今回紹介するのはHIP HOPアーティストKREVAの「国民的行事」。
KICK THE CAN CREWでもトラックメイカーを務めており、「マルシェ」などいわゆる「ゴキゲン」なナンバーが有名ですが、実際は叙情的なトラックで本領を発揮するアーティストです。
2009年の配信シングル「成功」。
イントロから歌のスタートまでの掴みが最高です。
ソロの2ndシングル「ひとりじゃないのよ」。
どことなく懐かしいような、切ないトラックに乗る前向きな歌詞と独特のタイトルセンスがオンリーワンの魅力です。泣けます。ラップもすげぇうまい。
KICK THE CAN CREWの「クリスマス・イブRap」では山下達郎のクリスマスイブを通してパッヘルベルの「カノン」も引用しています。
今回紹介する「国民的行事」はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第1楽章がたっぷりと引用されています。というか1曲まるまる「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。
2005年リリース。
HIP HOPにおける「引用」
HIP HOPでバックトラックに既存の曲を使用する事を「サンプリング」と言いますが、
曲の一部分(多くは一番オイシイ所)をループさせるのが普通です。「国民的行事」では原曲の冒頭部分をサビにし、その後続く旋律を切り取りラップのトラックにしています。
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はやはり冒頭のメロディが有名ですが、今回サンプリングされている部分も大変美しい旋律で、そこにスポットを当てたのはよくぞ!と言いたいです。
「サンプリング」を行う経緯にも色々あるでしょうが、クラシックなど他のジャンルにおける引用に比べると、「何となくかっこいいから使ってみようぜ」「このフレーズイケてるじゃん使っちゃお」みたいなノリである事も多いようです。
https://www.barks.jp/news/?id=1000015865
上記URLに「国民的行事」に関するインタビュー記事が乗っていますが、冒頭のやりとりが笑えます。
しかしやはり理屈じゃない音楽ジャンルだからこそ「センス」が磨かれるんだろうなぁと感じます。
普通「国民的行事」っていったらオリンピックとか、年号の変更とか、選挙とか、国民投票とか、そんなテーマかな?って思うじゃないですか。でも、そんな「国民的行事」と海外のクラシックって全然イメージ合わないですよね?そりゃモーツァルトのメロディは普遍的な美しさを持ってはいますけど。
しかも歌詞を観てみると、要は「コツコツ頑張ろう」という歌詞。「国民的行事」というワードはあまり意味が無い様子。上記のインタビュー記事を見ると「ビッグになるぞ」という歌詞を発展させて「国民的行事」というワードに行き着いたようですが、それにしても、「モーツァルト」と「国民的行事」というワードを組み合わせるなんて、理屈でできるものではありません。
センスで勝負のHIP HOPと理屈で勝負のクラシックの融合というのは、とても面白い化学反応を見せます。
実際クラシックをサンプリングしたHIP HOPも数多くあり、SWEET BOXやETERNITY∞、日本だとfaithというユニットがクラシック&HIP HOPをテーマに活動していました。
KREVAのセンスでもっと他にもクラシックのサンプリング曲も見てみたかったですが、当の本人はクラシックに全く興味がないようで当面なさそうです。
しかしやっぱりオリジナルのトラックが十分魅力的で特徴的なので、これからもどんどんオリジナル曲を作って欲しいですね。
私が彼の曲で一番好きなストロングスタイル。
ハードなダンストラックに乗せてアホらしい誇大妄想を垂れ流した後「そうなんないなんて誰が言える?」と大真面目に切り返す展開が超かっこいいです。たった2分で潔く終わる構成も大好き。
[…] アイネ・クライネ・ナハトムジーク/KREVA「国民的行事」今回紹介するのはH… […]