複数曲を引用した曲

Sound Horizon「宵闇の唄」

今回紹介するのはSound Horizonの「宵闇の唄」。以下の曲を引用しています。その数6曲。

 

 

モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」

ベートーヴェン「交響曲第9番 第4楽章 歓喜の歌」「エリーゼのために」

ショパン「幻想即興曲」

ムソルグスキー「展覧会の絵」よりプロムナード

グリーグ「ペール・ギュント組曲」より山の魔王の宮殿にて

 

 2010年発売のアルバム「Märchen」収録。

 

Sound Horizonとクラシック

Sound Horizonは作詞作編曲全てを手がけるRevoを中心とした楽団です。アニメやゲーム等のタイアップ作品を発表するときは”Linked Horizon”名義となります。アニメ”進撃の巨人”主題歌「紅蓮の弓矢」が大変有名です。

 

こちらはRevoがももいろクローバーZに楽曲提供したシングル曲「MOON PRIDE」。Revoの作風を短い1曲に凝縮した曲です。


またいわゆるコミケなどの即売会でCDを発表する、”アニソン界のインディーズ”といった感じである「同人音楽」出身であり、同人音楽界を守り立てたパイオニアでもあります。

ライブ映像。

 

作風はCD1枚で一つのストーリーを形成しており、オペラやミュージカルのようにセリフを喋ったり歌ったりします。またナレーションも随所に入ります。

 

メジャーデビューアルバムからして「楽園幻想物語組曲」のタイトルを冠しており、”CD1枚が丸ごと組曲“なコンセプトを第1作から貫き通しています。

 

作品のスケールとしては、基本的には短編のシングルCD・長編のアルバムCDに分かれていますが、今回紹介する「宵闇の唄」収録のアルバム「Märchen」はオムニバス形式の短編集といった感じです。

各曲で「童話の主人公達が悪い悪女達に復讐をするアナザーストーリー」がそれぞれ展開しますが、全体としての大きな流れも存在します。

 

「宵闇の唄」は全体の流れを総括する曲となっており、本編が始まる前の曲です。クラシックでいうと「序曲」にあたります。

 

序曲は組曲・オペラやオラトリオなど長いストーリー性のあるクラシック作品の1曲目に登場する、いわゆるオープニングテーマです。とてもキャッチーな曲が多く、序曲だけが有名な作品も多く存在します。運動会で有名な「ウィリアム・テル序曲」、モーツァルトの「フィガロの結婚序曲」等。コンサートで序曲だけ独立して演奏される事も多いです。

 

個人的No.1序曲の「タンホイザー」序曲。

ワーグナーの楽劇「タンホイザー」のオープニングテーマです。静かに始まる序曲ですが、動画の4:30~くらいから盛り上がっていき、5:30~から最高潮を迎えます。エロがテーマとは思えない正義感あふれる壮大で美しい旋律です。

私も持っているワーグナーの序曲集。大長編だらけのワーグナーを手っ取り早く楽しむには序曲が一番。間違いない1枚です。

ワーグナー:オペラ「タンホイザー」数多くの楽劇を生み出したワーグナー。作曲だけでなく台本も自分で書く凄い人です。中でも私が一番気に入っているのは、オペラ「タンホイザー」の...

 

またオペラや楽劇というのは、一度出てきたメロディ(モチーフ)が作中で何度も再登場します。タンホイザー序曲のメロディも、本編では主人公が桃色気分(笑)になる度に流れます。

 

Sound Horizonの楽曲も、ある曲の旋律が他の曲で流れる事が数多くあり、それが作品の中で明確な意図を持っています。

 

という事で、「序曲の存在」「組曲形式」「オペラ的なストーリー仕立ての歌唱」「モチーフの使用」「管弦楽の多用」など、数多くのクラシック的要素を持つSound Horizonです。

 

そもそも音楽における「語り」の歴史を遡ると、17世紀、バロック時代の声楽曲に辿り着きます。アリア(歌手がソロで歌う曲)の合間に、短いレチタティーヴォ(語りパート)が挿入されながら、聖書に基づいた物語やオリジナルのストーリーが管弦楽と共に紡がれていきます。まさにSound Horizonの作風そのものです。

 

ちなみにアルバム「Märchen」収録の「青き伯爵の城」は、バルトーク作曲のオペラ「青ひげ公の城」と同じ題材を用いています。

 

宵闇の唄

「宵闇の唄」は短編集風組曲「Märchen」の序曲にあたる、10分を超える壮大な曲です。

弦楽器とバンドサウンドが前面に出たシンフォニック・ロックな曲となっています。

 

まずイントロ部分の「ララララアイシテル~♪」の部分が「エリーゼのために」のメロディになっています。

 

それ以外のクラシック曲は間奏にメドレー的引用をされます。「山の魔王の宮殿にて」はボーカロイドが歌うなど、アルバム「Märchen」のコンセプトである”古典作品の現代版リメイク”を音楽でも表現しています。

 

Sound Horizonの序曲は、およそ間奏にプログレ風のソロパートメドレーが入りますが、「宵闇の唄」ではその変わりにクラシックメドレーが挿入されています。

 

クラシックメドレー部分の直前に「黒き死を遡るかのように、旋律は東を目指す」といった意味深なセリフが挿入されたり、曲中に”エリーゼのために”を思わせる「エリーゼ」という人物が登場したりと、クラシック曲の引用にも作品に沿った意図が込められているようです。

 

その辺りの考察は熱心なファンが深く深く実施しているので、ファン考察サイトをご参照下さい。

 

Sound Horizon序曲集とも言えるベストアルバム。醍醐味の一つであるストーリーを楽しめないのが難点ですが、楽曲のクオリティは文句なしです。「宵闇の唄」も収録。

 

 

また「宵闇の唄」を気に入った人は、以下の記事で紹介している曲も是非聴いてみましょう。

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いずれもストーリー仕立てでクラシックを引用している曲です。絶対オススメの2曲です。

ABOUT ME
syro
1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。