「crossover」をコンセプトに掲げ、クラシックやその他ジャンルの音楽とポップスとの融合を試みた島谷ひとみ。今日紹介するのは。アルバム「crossover」に収録されている
アルバム「crossover」
アルバム「crossover」は2005年にリリースされたコンセプトアルバム。
既発曲のアレンジとオリジナル曲からなる10曲入りのアルバムです。
個人的お気に入りは、m.o.v.eのt-kimura氏が編曲したシャンティ(crossover version)。
普段はダンスミュージックを作りながらも、クラシックにも造詣が深いt-kimuraならではのクラシカルダンスナンバーとなっています。
今回紹介する「愛歌」は、バッハのカンタータ147番の「主よ、人の望みの喜びよ」を大胆にイントロに持ってきた曲です。
カンタータ147番(主よ、人の望みの喜びよ)
カンタータ、というのは主に昔教会で演奏するために作っていた曲です。特にバロック時代(クラシックの歴史の中でも古い時代)に多く作曲され、アレッサンドロ・スカルラッティ、テレマン、そしてバッハなどがカンタータの作曲家として有名です。
「主よ、人の望みの喜びよ」はバッハが膨大な量を作曲したカンタータの中の147番の中の曲です。
カンタータ147番は全部で10曲からなり、ラストの10曲目がコラール合唱「主よ、人の望みの喜びよ」になります。
とても厳かで美しい曲です。
しかし崇高過ぎず、どこか親しみやすさというか、素朴さが感じられます。
「イエスは常に私達と共にあります」というような歌詞であり、主は天上ではなく私達の生活の中にいらっしゃるという思いが、どこか牧歌的でもある雰囲気を醸し出しているのでしょうか。
(間違ってたらすみません!なにせ私は仏教徒なので…)
調についてですが、
原曲の「主よ、人の望みの喜びよ」はト長調で、
「愛歌」はハ長調です。
ト長調とハ長調は属調の関係にあり、似たような雰囲気を醸し出します。
またト長調からハ長調になると4度下がるため、メロディの音程はだいぶ低くなります。
私が愛歌をパッと聴いた時は、「原曲とは調が違うな。原曲に比べるとだいぶ明るい雰囲気だから、明るい調に変えてるのかな」と思ったのですが、どうやら原曲のメロディをできるだけ壊さず、歌い手の音域に合わせようとした結果のハ長調のようです。
ハ長調は童謡などにも多く、普遍的な印象を与えます。人類の普遍的なテーマである「愛」を歌い上げる「愛歌」に相応しい調である、との判断かもしれません。
では原曲に比べるととても明るい雰囲気の「愛歌」、なぜなのでしょうか。
シンコペーション
まず原曲と違うのは拍子です。「主よ、人の望みの喜びよ」は3拍子ですが「愛歌」は4拍子になっています。そしてメロディのリズムも変わっています。
原曲は4分音符で曲のリズムにそのまま合わせたメロディですが、「愛歌」の引用部分のメロディは、少し飛び跳ねるようなリズムのメロディになっています。
こういったリズムを「シンコペーション」と呼びます。このシンコペーションのリズムによって、躍動感やウキウキ感を演出しているのです。
数あるクラシックの中から「主よ、人の望みの喜びよ」を選曲し、これだけ明るく幸福的に仕立て上げるそのセンスに脱帽です。もっと明るいクラシック曲なんていくらでもあるでしょうに。
作曲者の中野雄太氏は、同じく島谷ひとみのクラシック引用曲「カメリア-camelia-」も作曲しています。こちらの記事で特集しています。
また島谷ひとみの「crossover」の集大成でもあるオリジナル曲「Destiny-太陽の花-」もこちらの記事で紹介しています。ぜひ合わせて読んでみてください!
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