クラシック風の曲・アーティスト

島谷ひとみ「Destiny -太陽の花-」

島谷ひとみと「crossover」

crossover(クロスオーバー)というのは、2つの物が交わるといった意味の英語ですが、音楽でも2種類のジャンルを融合させる時に使用します。サラ・ブライトマンなどが「クラシカル・クロスオーヴァー」というジャンルを世に広めました。

 

島谷ひとみも2005年に「crossover」と銘打ったアルバムをリリースし、その次のアルバム「Heart&Symphony」までクラシックとポップスの融合をテーマにCDをリリースしていきました。

 

そして「crossover」シリーズの集大成として制作されたのが、

オーケストラと共演したオリジナル曲「Destiny -太陽の花-」。

 

ぜひ大音量で聴いてみてください。


アニメ「ブラックジャック」のテーマソングだったので知っている人もいるのでは。

 

中々ガチのオーケストラソングです。

オーケストラ風のポップスと言っても、中には弦楽器が入っている程度の「なんちゃってオーケストラサウンド」も多いなか、ティンパニやチャイムなども入っており、しっかりしたオーケストラ編成です。

ボーカルメインの協奏曲と言っても良いのではないでしょうか。

 

まずチェロ&コントラバス(MVを見るとビオラ&チェロ?)で始まるイントロがたまりません。私もこれでノックアウトされました。

サビでは歌メロに寄り添うようなシンフォニーサウンドですが、2番や間奏などはバックのオーケストラがかなり攻めています。

 

平行調への転調

シリアスな出だしはホ短調です。その後サビでは明るく転調します。サビはニ長調で平行調への転調となります。

平行調というのは、簡単に言うと同じ鍵盤を使う調です。

ホ短調で始まり

ニ長調に転調します。

どちらの調も「ファ」と「ド」だけ♯を使います。またホ短調の方が全体的に低く、ニ長調の方が全体的に上の方の音を使用しているのが解ります。

そのため転調するだけでサビのメロディが自然と高くなり、しかも長調への転調なのでサビでドカンと雰囲気も明るくなるため、必然的に盛り上がる展開となります。

また使用する鍵盤が同じなので、あまり転調の違和感がなく自然と聴けます。

 

「Destiny -太陽の花-」では、ホ短調の部分ではよりオーケストラチックに。サビのイ短調では、合奏は歌メロをなぞるようなシンプルなアレンジメントがなされています。

また出だしの部分ではティンパニなどクラシック風の打楽器がメインですが、Bメロからダンスビートが出現しポップスサウンドへの橋渡し的役割を担っています。

これらの工夫により、出だしから「オーケストラ感」を存分にアピールしつつも、サビでは明るい歌メロ重視のポップスに仕上げておりとても聴きやすいです。

 

曲とシンクロする歌詞

歌詞も曲に見事にマッチしています。

オーケストラ風で暗い曲調・ホ短調のAメロでは「悲しい」「孤独」「暗い夜」「嵐の朝」などシリアスなワードが並びます。

サビへの橋渡しとなるBメロでは暗い短調から勇ましい雰囲気の短調へと変わっていきますが、それに合わせて歌詞も「トラウマのドアを今開いてく」「その想い永遠も超えるでしょう」とスケールが大きく前向きな雰囲気となります。

 

クラシカルサウンドからポップス寄りに変化し、明るく転調するサビでは「幾千の愛の言葉より あなたがそばにいるだけでいい」とスケールを小さくし「あなた」と「わたし」の世界になります。

 

そして「あなたがそばにいるだけでいい」という歌詞はバックのオーケストラアレンジにも呼応しており、今まで暴れまわっていた数多の楽器は、そこでボーカルのメロディに寄り添うようになります。

 

「crossover」そのものがテーマの「Destiny -太陽の花-」

この曲展開は、歌い手の島谷ひとみさんの「crossover」プロジェクトの経緯にも対応しているのではないでしょうか。

 

クラシックとポップスの融合といっても、単純にクラシックのメロディをぶちこめば良いというものではありません。オーケストラの比重はどうするか。クラシック好きをターゲットにするのか、それともクラシックには全く興味がない層へアピールするのか。クラシックの優雅さとポップスの親しみやすさをどうバランスを取るのか。

 

ボーカルの声質や作曲者の個性とマッチする方向性や曲はどういったものなのか。

今までの「島谷ひとみ」ブランドからどう変化させるのか。元来のファンはそれを受け入れてくれるのか。

 

きっと幾多の困難や試行錯誤があったのでしょう。

そんな苦難がAメロ・Bメロの歌詞や曲調に表現されているように思います。

サビではオーケストラサウンドとポップスの落とし所を見つけたような曲調に、クラシックを味方につけ、希望が見えたような歌詞がつけられています。

 

これが「crossover」サウンドの完成形だ、という製作者サイドからのメッセージなのではないでしょうか。

 

とても良い曲が多い島谷ひとみサウンド。他の曲と並べて聴くと、感慨深いものがあります。「crossover」プロジェクトを1曲に凝縮したドラマティックな「Destiny -太陽の花-」もまた、長い旅の途中に過ぎないのです。

 

 

また「crossover」プロジェクトでは、クラシック曲を引用した曲も発表しています。

こちらで紹介しています。是非ついでに読んでみて下さい。

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syro
1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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