オランダ出身のシンフォニックメタルバンドEpica(エピカ)。
今回紹介するアルバム「The Classical Conspiracy」は、オーケストラと共演した2枚組のライブアルバムであり、前半がクラシックカバー、後半がオリジナル曲を収録したCDとなっています。
2009年リリース。リンク先で全曲試聴できます。
曲目
“青色◎”は特によかった曲。
今回はカバー曲を収録したDisc1前半のみ紹介します。
1.Palladium
2.◎Dies Irae(ヴェルディ:レクイエムより)
3.Ombra mai fu(ヘンデル:セルセより)
4.◎Adagio(ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」より)
5.Spider-Man Medley
6.◎Presto(ヴィヴァルディ《四季》「夏」より)
7.Montagues and Capulets(プロコフィエフ:ロメオとジュリエットより)
8.◎The Imperial March
9.Stabat Mater Dolorosa(ペルゴレージ:スターバト・マーテルより)
10.Unholy Trinity
11.In the Hall of the Mountain King(グリーグ:ペールギュントより)
12.Pirates of the Carribean
1.Palladium
重厚なオーケストラ&合唱によるオープニング感の強い小曲。Epicaのいつもの作風でもあるけれど、金管楽器の主張が強い。
2.◎Dies Irae(ヴェルディ:レクイエムより)
派手な金管楽器と合唱にメタルドラムがぶつかり合うヴェルディのレクイエム。出だしのテンションが半端ない。オケアレンジも原曲より派手になっており、大迫力。
だけど原曲通りに2分程度で終わってしまうのが残念。「Dies Irae」をそのまま再現じゃなくて、「Confutatis」のバス独唱から一気に同じ旋律に戻る所とかを演奏すれば良いのに。あの部分をメタルアレンジで聴きたい。絶対超劇的でカッコいい。
3.Ombra mai fu(ヘンデル:セルセより)
チェンバロも登場しバンドサウンドは無しの、原曲に概ね忠実なカバー。Epicaのヴォーカルの歌唱力を見せる曲、といった感じ。
4.◎Adagio(ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」より)
一番有名な第4楽章では無く、第1楽章のカバー。他の曲に比べて突出した演奏時間の9分の曲。ド派手に増強されたオーケストレーションと骨太のドラムがカッコいい。貴重な第1楽章のカバー。ラプソディーの第4楽章カバーと続けて聴きたい。
5.Spider-Man Medley
メタルギターが前面に出たスパイダーマンのテーマソングカバー。映画曲カバーメドレーという事で、キャッチーなプログレメタルみたくなっている。
6.◎Presto(ヴィヴァルディ《四季》「夏」より)
「夏」の第3楽章のカバー。冒頭の弦楽器トレモロをギターで演奏し、重厚なシンフォニックメタルにアレンジ。メロディアスなヴァイオリンと、ギターやドラムとの絡みがカッコいい。選曲が良いなぁ…。
7.Montagues and Capulets(プロコフィエフ:ロメオとジュリエットより)
これもメタルギターと金管楽器が目立つカバー。出だしはおおっ!と思うけど2分程度であっさり終わってしまう出オチ感のある曲。まぁ原曲も出オチ感あるから…。
それにインストカバーが続くので、個人的には歌モノも聴きたいなぁと思ってしまう。
8.◎The Imperial March
いわゆる「ダースベイダーのテーマ」のカバー。冒頭からあのメロディにバスドラ連打が加わり凄い物々しい雰囲気。
9.Stabat Mater Dolorosa(ペルゴレージ:スターバト・マーテルより)
ペルゴレージは「奥様女中」などのオペラで知られる、バロック期~古典期のイタリアの作曲家。スターバト・マーテルの冒頭部分をカバー。バンドサウンドを引っ込めた大人しいカバー。緩徐楽章的な役割もあるんだろうけど、これなら原曲の方が良いな…。
ちなみにこちらが原曲。
10.Unholy Trinity
オリジナルのインスト曲。4拍子と5拍子を行ったり来たりする映画サントラ風(というかゲーム音楽?)の曲。
11.In the Hall of the Mountain King(グリーグ:ペールギュントより)
「山の魔王の宮殿にて」のカバー。静かに始まる冒頭や徐々にテンポを上げていく展開など、原曲リスペクトの大人しめなアレンジ。テンポが上がるにつれてバスドラもどんどん速くなっていく。
12.Pirates of the Carribean
パイレーツ・オブ・ザ・カリビアンのテーマの、ヴァイキングプログレメタル的カバー。後半の展開はなかなか劇的。
総評
映画音楽のカバーを交え、クラシック曲は有名所もマイナー気味の曲も有りの程良い選曲。有名な曲でも、普段カバーされる事の少ない部分にスポットを当てており面白いです。
ですがほとんどがインスト曲であり、歌声を披露する曲はメタリックではなく大人しいアレンジ。Epicaの魅力である美しい大合唱サウンドを堪能できないのがとても残念です。
ちなみに、アルバム後半はオリジナル曲をオーケストラ&バンドサウンド&ヴォーカルにて演奏しています。重厚なシンフォニックメタルを楽しめますが、このバンドもスタジオアルバムのクオリティがとても高く、特にこのライブアルバムよりも後にリリースしたアルバム「The Quantum Enigma」が大変な名盤なので、オリジナル曲に関してはそちらを強くオススメします。
シンフォニックメタル史上屈指の名盤です。Nightwishなんかよりは激しいですが、騒がし過ぎず地味過ぎない、程よい音のバランスも素晴らしいです。
ちなみにスウェーデンのシンフォニックメタルバンドTherionも同時期に同じようなコンセプトのライブアルバムをリリースしており、なんとライブ自体も同じハンガリーのMiskolcで開催しています。
Therionのクラシックカバーの方が、バンドサウンドは大人しめですが合唱やソリストの出番が多く、Epicaはメタル成分強め(特にドラムが目立つ)でほぼインスト、といった感じです。お好みでどうぞ。
余談ですがEpicaはアニメ「進撃の巨人」主題歌をカバーしたミニアルバムも発表しています。個人的には、原曲よりも管楽器が引っ込んだ分盛り上がりに欠ける、ややイマイチな出来ですが…。
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