スウェーデン出身のシンフォニックメタルバンドTherion(セリオン)。
オーケストラと重厚な合唱が特徴の女性ヴォーカルバンドですが、今回紹介するアルバム「The Miskolc Experience」は、オーケストラと共演した2枚組のライブアルバムであり、Disc1がクラシックカバー、Disc2がオリジナル曲を収録したCDとなっています。
2009年リリース。
曲目
“青色◎”は特によかった曲。
今回はクラシックカバーを収録したDisc1のみ紹介します。
- Clavicula Nox(オリジナル曲)
- ドヴォルザーク:新世界より
- ヴェルディ:《イル・トロヴァトーレ》より「朝の光が差してきた」
- モーツァルト:《レクイエム》より「怒りの日」
- サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」
- ◎ワーグナー:《ニーベルングの指環》より 「ノートゥング!宿望の剣」
- ◎ワーグナー:《リエンツィ》序曲
- ◎ワーグナー:《リエンツィ》より「Der Tag ist da」
- ◎ワーグナー:《リエンツィ》より「Herbei! Herbei!」
1.Clavicula Nox(オリジナル曲)
オーケストラメインのオープニング曲。Therionのヴォーカルが所々で歌唱とヴォカリーズを披露する。目立った山場は無いがオーケストレーションの美しい序曲。
2.ドヴォルザーク:新世界より
ギターとドラムが前面に出てくる「新世界より 第4楽章」。原曲の美味しい所取りをした2分程度のインスト。
3.ヴェルディ:《イル・トロヴァトーレ》より「朝の光が差してきた」
原曲は「鍛冶屋の合唱」とも呼ばれる合唱曲。コミカルで印象的な序奏がバンドサウンドが加わる事でキャッチーかつハードになっている。
後半のワーグナーラッシュといい、Therionはドイツのオペラが好きな様子。
4.◎モーツァルト:《レクイエム》より「怒りの日」
ザクザクとリフを刻むギターと、原曲には無いトランペットがとてもカッコよいカバー。
ライブ音源なのでしょうがない場面もあるけど合唱が後ろに引っ込んでいて存在感がイマイチ。せっかくオーケストラ×バンドのサウンドが迫力あるのだから合唱の方も迫力が欲しい。
5.サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」
曲のクライマックスである第2楽章後半をカバー。原曲をそのまま再現している冒頭が一番美しい。オルガンを引っ込めて独自にアレンジしている後半パートは正直蛇足感ありまくり。
それに第2楽章後半は、前半からの流れがあるから後半冒頭のオルガンが神々しいのであって、後半から再現されても感動が半減する。まぁこれは原曲が神ってるから…。
6.◎ワーグナー:ニーベルングの指環より 「ノートゥング!宿望の剣」
全4幕から成る大長編《ニーベルングの指環》の第3幕のアリア。原曲同様テノール歌手が登場。今までは2分台にまとめたカバーばかりだったのに、ここに来て原曲通りの7分の曲が登場。
選曲も「指環」のアリアの中では有名とはいえ、突然マニアックに。原曲に余程思い入れがあると思われる。そういえばTherionの最新アルバムも3枚組の大長編だったなぁ。あれはワーグナーの影響なのか。
大長編過ぎて「ワルキューレの騎行」くらいしか知名度が無いしカバーもされない「指環」。元々キャッチーな原曲を、ワーグナーらしさはしっかりと残して大迫力に仕上げた貴重な良カバー。
7.◎ワーグナー:《リエンツィ》より序曲
今度はなんとリエンツィ!結構カッコいい曲が多いわりに歌劇の上演もDVDもほとんど無いリエンツィ!しかもワーグナーの序曲と言えば有名所が山ほどある中でこの選曲。ステキ!アレンジもかなりいい感じ。
8.◎ワーグナー:《リエンツィ》より「Der Tag ist da」
再びリエンツィ。合唱パートからアリアに移る場面で一気に轟音バンドサウンドが登場。プログレメタル然としている、かなり劇的で大胆なアレンジ。前半のやっつけカバーとは気合いの入れ方が全然違う。きっとオーケストラ×Therionでこれがやりたかったんだろうなぁ。
原曲もドラマティックで超カッコいいので是非聴いてみてほしい。
9.◎ワーグナー《リエンツィ》より「Heibei! Heibei!」
ラストも超劇的なシンフォニックメタル。原曲が有名じゃないのでオリジナル曲のように聴ける。テノールと合唱、激しいバンドサウンド、オーケストレーションが掛け合い、ぶつかりあう凄いテンションの曲。大迫力。
原曲が短いので1分半で終わってしまう。こういうのがもっと聴きたかったのに!
総評
バンドサウンドはそこまで激しくなく、シンフォニックメタルというよりは、オーケストラ×ハードロック。Disc1ではTherionのヴォーカルの出番は無く、合唱とオペラ歌手が原曲を再現しています。
後半のワーグナーカバーが本番。無難な曲を集めた前半は前座に過ぎません。ワグネリアンは必聴のハードロックカバーアルバム。
ちなみにDisc2はいつものTherionが生オーケストラを従え、オリジナル曲を披露。悪くないけど、元々オーケストラも重厚だし、やはりスタジオアルバムの方が録音が良いし、そこまで…といった内容。
余談ですが、このアルバムとほぼ同時期に、シンフォニックメタルバンドEpicaが同じようなライブアルバムをリリースしています。
Therionのクラシックカバーの方が、バンドサウンドは大人しめですが合唱やソリストの出番が多く、Epicaはメタル成分強め(特にドラムが目立つ)でほぼインスト、といった感じです。お好みでどうぞ。
[…] […]
[…] […]
[…] […]