クラシックカバーアルバム全曲レビュー

Ménélik「Qlassiks Vol. 1」

フランスのラッパーMénélik(メネリク)の6thアルバム「Qlassiks Vol. 1」クラシックとHIPHOPを融合させた「atemporap」というスタイルを掲げて制作された作品。

 

2017年リリース。ちなみにVol.1と銘打っていますが、2022年時点でVol.2は発売されていません。

※今回フィジカルで作品を入手する事ができず、サンプル元が確認できておりません(ブックレットに書いてあるのかも不明ですが…)。引用元は私が解った曲だけ記載しています。

曲目リスト(青色◎は特に良かった曲)

1.Un stylo – & un rêve
2.◎20 ans/サン=サーンス「死の舞踏」
3.◎Quelle Aventure
4.◎Liquide – Radio Edit/リスト「ラ・カンパネラ」
5.J’aurais voulu te dire/ショパン「子守歌 変二長調」
6.Le non-choix/ジョプリン「ジ・エンターテイナー」
7.◎Mateekd/アルベニス『スペイン組曲』より「アストゥリアス」
8.Je Me Souviens/パッヘルベル「カノン」
9.◎Tout se ramène à toi/ベートーヴェン「交響曲第7番」
10.◎La vie n’est rien (Radio Edit)
11.Tout Baigne/メンデルスゾーン「バイオリン協奏曲 ホ短調」
12.Le clando & le clodo/パーセル「Praise The Lord, O Jerusalem (Z.46)」???
13.Bye-bye
14.(Un stylo) & un rêve
15.La vie n’est rien – Qlassik Edit
16.Liquide – Qlassik Edit

 

1.Un stylo – & un rêve

1分程度のskit。

2.◎20 ans/サン=サーンス「死の舞踏」

オーケストラやシンセは使用せず、ピアノ&クラシックギターとラテン風の生パーカッションで味付け。トニックでキメる部分を中心に時々顔を出すベースがいい仕事をしている。

かなりライブ感のある録音となっており、グルーヴィーで臨場感がある。

ゆったりしているlargamenteの旋律の部分だけ、原曲のメロディをそのまま歌いHOOKにしている。原曲でも成される中盤の転調も、しっかりポップスの序破急に落とし込まれている。

後半に行くにつれて演奏は情熱的になっていく。めちゃカッコいい。原曲冒頭とはスタート地点が全く異なるイントロも新鮮で面白い。

3.◎Quelle Aventure

さっきと同様の編成。さっきよりも、さらにインプロ風&グルーヴィー。

4.◎Liquide – Radio Edit/リスト「ラ・カンパネラ」

ただでさえ手数や跳躍の多いラ・カンパネラのピアノ演奏にギターとラップまで加わりやや混沌としている前半から、ドラムマシンが加わり音数は増えるもリズムが一体となる後半への展開がカッコいい。

フリーダムな演奏だった前曲とは対照的で緊張感がある。ちなみにMVの元ネタは映画の『メトロポリス』。

5.J’aurais voulu te dire/ショパン「子守歌 変二長調」

原曲の一部分をカットして引用するのではなく、原曲に沿った演奏を元にラップを乗せていく。原曲がもともと同じベースラインをループさせながら主旋律をアレンジしながら繰り返す形式の変奏曲なので、程良い変化がちょうど良く、HIPHOPとの相性も良い。ナイス選曲。

ピアノの装飾音が派手になる部分ではラップが空気を読んで引っ込む。

「atempo(=元の速さで)rap」のコンセプトを掲げて制作したアルバムとの事だが、テンポはやや早め。まぁそれでもゆったりしてるけど。

6.Le non-choix/ジョプリン「ジ・エンターテイナー」

ラグタイムの有名曲をカバー。主題部をユニゾンによるHOOKにしている。展開部は割と自由&軽快にフローを乗せているけれど、原曲のメロディに合わせてみたり、B⇒Aの流れをアシストするような符割りにしたりと変幻自在のラップ。10年ぶりくらいのアルバムリリースだったらしいけど、ベテランのスキルを感じる。

楽器編成はどの曲も殆ど同じなのだけど、裏ノリの曲とクラシカルなリズムの曲をバランス良く配置しており、流れにメリハリを付けている。

 

7.◎Mateekd/アルベニス『スペイン組曲』より「アストゥリアス」

スパニッシュギターが本領発揮する、本作で一番ラテン風味の強い曲。

ピアノソロかギターソロで演奏される事が多いこの曲を、ギター&ピアノにラップも加えて演奏。

執拗に1拍目をずらしながらユニゾンするリズムは、自由自在だった前曲とは打って変わって緊張感のある選曲。生で聴いてみたい。

 

8.Je Me Souviens/パッヘルベル「カノン」

過去発表曲のセルフカバー。こちらのMVは過去のバージョン。

本アルバムではピアノ・ギター・ヴァイオリン(ヴィオラかも)でアコースティックにアレンジ。

9.◎Tout se ramène à toi/ベートーヴェン「交響曲第7番」

第2楽章を引用。ただでさえ重苦しく印象的な和音が、ピアノのかなり低音で鳴らされるため超シリアス。終盤では3連符を中心に曲を装飾するギターが、更に悲壮感を高める。お葬式で流せるHIPHOP。

 

10.◎La vie n’est rien (Radio Edit)

前曲の流れを引き継ぐような暗く美しい雰囲気の前半から、土着的な曲調に大胆に展開する。文明が死んで新たな未開文化が生まれたみたいで面白い。「La vie n’est rien」の発音もなんだかどこかの先住民族みたいに聴こえる。

多分ピアノの音色が何かの引用だと思うのだけれど、何だろう…?

 

11.Tout Baigne/メンデルスゾーン「バイオリン協奏曲 ホ短調」

原曲の旋律をギターで再現した期待感のあるイントロから、全く別のオシャレなトラックに展開する。多重録音なのか仲間を呼んだのかコーラスも交えるけど、全体的に単調な出来。

前の曲と違ってイントロが何の伏線にもなってない気が…。

 

12.Le clando & le clodo/パーセル「Praise The Lord, O Jerusalem (Z.46)」???

これまたお葬式のようなオスティナート・バスの上に半分独白のようなフローを乗せる激重の曲。後半になると、やはりギターの装飾が増えていく。

引用元はよくわかりません。これが近いように思うけど…?

引用元のタイトル(主を讃えよ、エルサレムよ)と本曲のタイトル(不法移民の乞食ども)を比べても皮肉が効いてるし(フランスでは中東問題による不法移民が社会問題になっている)。

13.Bye-bye

フランス国内でヒットした、代表曲のセルフカバー。
こちらは過去のバージョンのMV。キャッチ―なデュエットでテンポも良く、良い曲。

これまたピアノ&ギターでアコースティックにアレンジ。

14.(Un stylo) & un rêve

1曲目同様のskit。全体的に結構メッセージ性がありそうな作品なので、歌詞が解ればより理解が深まりそう。

15.La vie n’est rien – Qlassik Edit
16.Liquide – Qlassik Edit

10曲目と4曲目の別バージョン。ボーナストラック。

 

総評

「atempo(=元の速さで)rap」のコンセプト通り、原曲のノリやテンポを活かした生音主体の楽曲が並びます。リズムマシンやシンセは殆ど登場しません。

クラシック×ラテンミュージック×フレンチラップという事で、他に類を見ない個性的なスタイルとなっています。まさしくヨーロピアン・ミクスチャーHIPHOP。とはいえアレンジ自体はスッキリしておりとても聴きやすいです。

メネリク自身はジャズラップもルーツにあるそうで、演奏を邪魔しないリズム感のあるフロウを披露しています。

情熱的でライブ感やダイナミクスもありつつ、緊張感も保ったアレンジ。メロディだけでなく、そのスピリットも含めてクラシック×HIPHOPを体現しているように感じます。生で聴いてみたい作品。

 

 

 

ABOUT ME
syro
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1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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