クラシックカバーアルバム全曲レビュー

クラシカロイド MUSIK Collection Vol.1

クラシックを大掛かりにフィーチャーしたNHKアニメ”クラシカロイド”。作中歌として多くのクラシックカバー曲が使用されます。そんな曲たちを集めたコンピレーション・アルバム。今回紹介するのは第1弾。

曲目

“青色◎”は特に良かった曲。

01.ClassicaLoid ~クラシカロイドのテーマ~(※オリジナル曲)

02.情熱について語るべき2、3の真実 ~田園より~(ベートーヴェン「交響曲第6番『田園』」)

03.◎アイネクライネ・夜のムジーク(モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」)

04.4.A.M. Nocturne(ショパン「ノクターン 第2番」)

05.愛の矢の夢(リスト「愛の夢 第3番」

06.SHALALA 悩んでても解決せん ~くるみ割り人形より~(チャイコフスキー「くるみ割り人形)

07.皇帝の美学(ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番『皇帝』」)

08.炎のレクイエム(モーツァルト「レクイエム」より『怒りの日』)

09.やってらんない気分(オリジナル曲)

※トラック10~17は、2~9曲目のinst。

 

 

01.ClassicaLoid ~クラシカロイドのテーマ~(※オリジナル曲)

ファンファーレ風のオーケストラユニゾンから始まる、布袋寅泰作曲のアニメオープニングテーマ。オーケストラ&ギター&ドラムのイングウェイ風インスト。

劇中に並みいるクラシックの名曲のボーカルカバー曲達が使用される中、一番重要なオープニングテーマにクラシック風のオリジナル曲をしかもインストで入れてくるというその発想と度胸がステキ。

プログレ風の雰囲気を醸し出している中盤のワルツパートも、さながら展開部や第2楽章といった感じ。3分半の短い曲の中に交響曲のエッセンスを散りばめた美しくもポップなクラシカル・ロック。

良くあるプログレやシンフォロックとは一線を画すキャッチーさ。イングウェイのように暴走しないギターはオーケストラとのバランスもよく取れている(いやイングウェイはイングウェイで良いんですよホント)。布袋寅泰にしか書けない曲。

オーケストラが打ち込みでしょぼいだとかそんな事は気にしない!

 

02.情熱について語るべき2、3の真実 ~田園より~(ベートーヴェン「交響曲第6番『田園』」)

再び布袋寅泰編曲。ベートーヴェンの曲は彼が担当。

バンドサウンドメインの編曲はベートーヴェンの勇ましいイメージに良くあっており、バカテクに走らないギターも却って曲の邪魔にならず好印象。

ヴォーカルは「Gのレコンギスタ」のEDも歌っていたハセガワダイスケ。曲はいい感じなのにヴォーカルの声質のせいでキャラソン感が凄い。声優じゃないのに。アニソン風とかコミカル感とかを出すにしてももう少し上手い事できなかったものか…。

 

03.アイネクライネ・夜のムジーク(モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」)

モーツァルト担当のtofubeats編曲の打ち込みポップ。

印象的な原曲メロディはシンセで流し、歌メロはオリジナル。1拍目と3拍目でユニゾンするキメキメな原曲に対して、ヴォーカルは手前の4拍目からスタートする事が多く、先行する歌メロで弾みを付けた後に、キメキメリズムで入ってくる原曲メロのシンセのアタック感が爆発感と勢いを与えている。

サビはオリジナルの旋律がメインの前半と、原曲の旋律がメインの後半の2段構えになっており、その後の間奏が原曲の続きになる部分をそのまま引用…と徐々に原曲の比率が上がっていき、普通のアニソンを聴いているうちにいつの間にかクラシックになっているステキな構成。

打ち込みドラムも終始2ビートで原曲と掛け合うようなリズムになっておりとてもリズミカル。

総じて原曲のフレーズとオリジナルのフレーズが互いを補いあうようなアレンジで、ポップスアレンジとして完璧な出来。多彩なSEやオシャレなピアノ、ほんのり入るファンク風ベースなど遊び心も満載。シンプルだけど楽しい。これぞポップ。

 

04.4.A.M. Nocturne(ショパン「ノクターン 第2番」)

ショパン担当のEHAMIC編曲。ボーカロイド歌唱のバンドサウンド主体なノクターン。バックのオペラ風コーラスは生歌のようにも聴こえるけれど、もしかするとこれもボカロ?生歌だとするとボーカロイドのバックでプロがコーラスするという何ともシュールな光景になるけど。

「クラシカロイド」というネーミングの時点でボーカロイド好きの興味を惹こうとしているのは明らかなので、時代的にも入れておくべきボーカロイド曲。せっかくなのでと言わんばかりに、人力では不可能な超早口&超高音歌唱を披露している。

 

05.◎愛の矢の夢(リスト「愛の夢 第3番」

リスト担当浅倉大介編曲の高速打ち込み曲。ヴォーカルは「セーラームーンR」EDや「ストライクウィッチーズ」OP等を歌っていた石田燿子。

原曲のロマンチックな雰囲気をぶっ壊してまさしく矢のようなド直球のラブソングになっている。原曲のメロディをうまく活かしていてポップスとして全く違和感ない出来。

ポップな主旋律の合間に出てくるクラシカルなピアノもアニソン的インパクトを与えている。サビ前のピアノフレーズもクラシカルでかっこいい。何をやらせてもザ・浅倉大介なアレンジも凄い。

 

06.SHALALA 悩んでても解決せん ~くるみ割り人形より~(チャイコフスキー「くるみ割り人形)

チャイコフスキーとバッハはつんく♂が担当。

バレエ組曲『くるみ割り人形』から、「花のワルツ」「マーチ」「ロシアの踊り」を引用したモーニング娘風の曲。つんく♂も、もともと有名なフレーズを曲中に突然引用してきたり唐突に曲調が変わったりする作風だったので、なんだか「いつものつんく♂」な感じ。ヴォーカルもバクステ外神田一丁目の人とか起用していて、ますます「いつもの」感が。

イントロ及び歌メロ前半は「花のワルツ」をリズムやメロディをアレンジして引用している。結構大胆にアレンジしているので、初め聴いたときは「くるみ割り人形にこんな曲あったっけ?」と全曲聞き直してしまったほど。

歌メロ後半は一番有名な「マーチ」を合唱。間奏は「ロシアの踊り」。

『くるみ割り人形』はとにかく有名でインパクトのある曲が多く、他の部分を引用してもう1曲くらい作って欲しいくらい。

 

07.皇帝の美学(ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番『皇帝』」)

ダウンチューニングのギターが目立つミドルテンポの勇ましい曲。程よくオペラティックな男性ヴォーカル(元舞台俳優の竹内 將人)。

「皇帝」の多彩で美しいメロディを存分に楽しめる。3分であっさり終わる展開も何度も聴き直したくなる。何度も書くけど、「あくまで味付け」感のあるギターがちょうど良い。ギタリストとしても凄いのかもしれないけれど、やっぱり布袋寅泰は名コンポーザー。そしてベートーヴェンの曲の作詞はなんと森雪之丞。

それにしても、このイントロ及びアウトロでピロピロ鳴っているのはギター?ですよね??

 

08.炎のレクイエム(モーツァルト「レクイエム」より『怒りの日』)

歪んだシンセベースの主張が強いインダストリアルロック風というかハードコア・テクノ風というかそんな感じの曲。といっても全然やかましくはない。ヴォーカルはアイカツ☆関連の松岡ななせ。

サビ後半でいったん6拍子になったり、間奏で3連符メインになったりとリズムがやや複雑。さらにメロディもドマイナー。なのに曲自体は超キャッチー。たまたまTVを付けた時にアニメでこの曲が流れているのを耳にして、急いでCDを探した思い出。

 

09.やってらんない気分(オリジナル曲)

ビートとシンセベースをやや強めに効かせた、クラシック感の全く無い無難なテクノポップアイドルソング。つんく作曲。

 

総評

劇中歌キャラソン集、と呼ぶにはあまりにもったいないクオリティ。

豪華作曲陣がそれぞれの個性を発揮した手抜き感の全く無いクラシックカバー曲集。原曲の作曲家にも各アレンジャーにもそれぞれ個性があり、差別化ができているけれど、基本的には超ポップで統一されているのでバラバラ感は全くなく、逆に多彩な曲が次々に出てくるのでアルバム全体としても組曲のような仕上がりになっています。

歌い手は曲ごとにアニソン/アイドル系の歌手を中心にゲストヴォーカルとして起用するスタイル。作家陣に比べて予算をかけていない人選。ジャンルはともかく、高垣彩陽とかもう少しクラシックに造形が深い人を選んでも良かったのでは…と思ったらアニメ声優の方に起用されてました。

とはいえクラシックからは程遠いヴォーカルのおかげでポップな雰囲気は増強されており、これはこれで良いです。

 

アルバムにはインスト曲も収録されており、そちらもクラシックアレンジBGMとしてしっかり聴けるレベルです。私も歌付きと同じくらいインストの方を聴いてます。

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syro
1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。