声優によるラッププロジェクト、”ヒプノシスマイク”。
小手先ではないガチのラップスタイルと、アニソン作家や大御所HIPHOPクルー等様々なアーティストが手掛ける本格的なトラックによる、意外にクオリティの高い楽曲も魅力です。
「日本の様々な地区同士で繰り広げられるラップバトル」を題材とした作品ですが、その中で”イケブクロ・ディビジョン”のチームのメンバーである山田三郎のソロ曲「レクイエム」で、ヴェルディの《レクイエム》の一曲「怒りの日(Dies Irae)」をサンプリングしています。
作編曲は□□□(クチロロ)三浦康嗣。普段の□□□の作風からは想像もつかないトラックです。
2019年12月25日リリースのCD「Buster Bros!!! –Before The 2nd D.R.B-」収録。
トレイラー動画を見て思いますが、最近YOUTUBE等動画サイトの音楽シーンで常套となっている、いわゆる「リリックビデオ(歌詞の掲載がメインの、手軽に作れる動画)」の手法は、ヒプノシスマイクの特徴である”アニメ絵×ラップ”と大変相性が良いです。
立ち絵や素材は既に用意されているので簡単に作成できるうえに、普通の歌よりも歌詞が聞き取りづらいラップ曲。更にこういった既存の静止画の素材を活用した動画制作というのは、以前から恋愛ゲームのOP動画などでずっと培われてきたものでありノウハウも蓄積されています。
という事でこのヒプノシスマイクというプロジェクト、今の時代に出るべくして出てきた、というべきでしょう。
ヴェルディの原曲はこちら。
出だしからインパクト大で、バラエティ等様々な場面で使用される有名な曲です。死者を悼むためのレクイエム(鎮魂歌)というよりは、最後の審判で悪人を地獄に叩き落すようなレクイエムです。
全部で7曲から成るヴェルディのレクイエム。その中で、2曲目の「Dies Irae(ディエス・イレ)」の冒頭以外でも数回登場する、この有名なフレーズ。
そんな中でも個人的に絶対おススメは、「Confutatis」の後。厳かなバス独唱から、堰を切ったように「怒りの日」の旋律に突入します。
めちゃくちゃカッコいいです。こちらの動画の7:00~辺りから聴いてみましょう。
何度聞いても鳥肌が立ちます。
もう一か所おススメは4曲目の「Sanctus(聖なるかな)」。
派手でキャッチーなメロディ&オーケストラサウンドのパート。
「怒りの日」の有名な部分だけ聴くと、2分半程度であっさり終わってしまうので、是非全曲通して聴いてほしいヴェルディの《レクイエム》です。
ちなみにヴェルディの《レクイエム》をメタル・ロックアレンジした楽曲もあります。どちらも《レクイエム》のカッコ良さを活かした良い曲です。こちらの記事で紹介しています。
声優×ラップの歴史
このヒプノシスマイクで確立された、”声優(アニソン)×ラップ”のスタイルは、遡ると、どの作品に行き当たるのでしょうか。
アニソンの音楽性というのは、邦楽メジャーシーンから1,2年ほど遅れて広まる傾向にある印象があります。アニソン界でユーロビートが流行ったのも、邦楽界でのユーロビートブームの数年後。
で、日本のメジャーシーンでラップが流行ったのは、EAST×ENDの1994年、globeの1995年、そしてDragon Ashブレイクの1999年から一気に日本中にラップが広まります。という事で、これらの1,2年後くらいにきっとアニソン系でも始まっているはず…。
というわけで、行きます。
こちらはTVアニメ『ジバクくん』EDテーマの「37℃ 〜微熱戦記〜」。サビの高速歌唱がラップっぽいです。これは明らかに小室哲哉やmoveなどのユーロビート系ソングからの派生と思われます。
声優の高山みなみとその従姉妹である高山美瑠のユニット“M-TWO”の楽曲。作曲も高山みなみ。
2000年リリース。
TVアニメ『朝霧の巫女』EDテーマ「KOIBUMI」。林原めぐみがラップを披露しています。箏と尺八をフィーチャーした和風サウンドにファンキーなギターを重ねたトラックもかっこいい。
ユーロビートサウンドをアニソン界でもいち早く取り入れて人気を博した林原めぐみ。おそらくメジャーシーンでのHIPHOPの流行を始めに取り入れたパイオニアソングではないかと思われます。
2002年リリース。
TVアニメ『魔法先生ネギま!』第2期OPテーマ「1000%SPARKING!」。ネギまの曲と言えば、第1期OPの「ハッピーマテリアル」が有名ですが、こちらの2期OPは2番のAメロBメロだけがキャラの台詞のみで構成されているという、超斬新な曲。ド派手なオーケストラヒットが鳴り響くトラックもカッコいい、インストでも聴きごたえのある一曲。
2006年リリース。
特撮ヒーロー戦隊番組『忍者戦隊カクレンジャー』ED曲「ニンジャ! 摩天楼キッズ」。アニソンとは少し違いますが、なんとEAST END×YURIの「DA.YO.NE」よりも早い、1994年発表の楽曲です。作品の世界観に合わせて和楽器も使用されています。
特撮ヒーロー×ラップと言えば仮面ライダー電王も有名ですが、このカクレンジャーがパイオニア。
ヒプノシスマイクのクラシックサンプリング第1弾はこちらの記事で紹介しています。