椎名林檎のデビューシングル「幸福論」。その再発盤に収録されているカップリング曲「時が暴走する」で、モーツァルトのピアノソナタ第11番 第1楽章が引用されています。
リンク先で一部視聴できます。再発盤は1999年リリース。
幸福論
「幸福論」は1998年リリースの椎名林檎のデビューシングルです。
椎名林檎は、当時独特の世界観と奇抜なPVや曲・歌詞・作品タイトルなどで人気を博し、ロック好きと病んでる若者を中心に売れに売れました。歌詞の言葉遊びなどから「古き日本文化」を支持しているのが伺えます。
その後路線変更やバンド「東京事変」等の活動を経て、現在も活動を続けています。
最新曲「鳥と蛇と豚」。
管弦楽とEDMとお経を混ぜたとんでもない食べ合わせの、オルタナティブ&クラシカルソング。
ちなみに私が一番好きなのは、東京事変の2ndシングル「遭難」。
各楽器の見せ場だらけのマイナー昭和歌謡ロック。メンバー全員の”らしさ”を全部集めましたという感じ。とにかく超かっこいい。アウトロもすごいぞ。
でデビューシングルの「幸福論」に話を戻しますが、タイトル曲は所々変なギターは見受けられますが、ストレートな曲調に乗せてストレートな歌詞を歌う、かなりド直球のポジティブ恋愛ソングです。デビュー曲だからこそ輝く曲。
アルバムでは黒歴史を隠すかのようにパンク風のアレンジになって収録されています。シングルバージョンの方が断然良いです。
時が暴走する
「時が暴走する」は椎名林檎の本領発揮なオルタナ・ロックに仕上がっています。不穏なピアノから始まり、緊張感を保ったまま曲は続きます。
タイトル通り暴走気味のバンドサウンドが顔を出しては消えていきます。
2番の後唐突にピアノソナタ11番の第1楽章冒頭が流れ出しますが、美しい旋律が逆に怖いです。その後不協和音が突然鳴らされた後、狂ったようなバンドサウンドが爆発します。完全にホラーです。
この頃から完全に音楽性は確立されています。完成度の高いオルタナ・ロックです。
モーツァルトの原曲の視聴はこちら。
ピアノソナタ第11番は第3楽章が「トルコ行進曲」として有名ですが、今回引用されている第1楽章も美しい旋律の曲です。
「時が暴走する」では、そのピアノソナタ第11番のメロディの美しさが、アレンジのおどろおどろしさと歌の主人公の不安定な精神状況を対照的に浮かび上がらせるような演出効果を出しています。
同じくピアノソナタ第11番第1楽章の主題を用いて、狂気を演出した楽曲がもう一曲あります。合わせてご一聴ください。
ヤンデレ女子の「幸福論」
どうやら「時は暴走する」は「幸福論」の後日談であるようなのですが、「時が暴走する」を聴いた後に「幸福論」を聴き直すと、純粋なポジティブ恋愛ソングには聴こえなくなってきます。
ぜひ”幸福論→時は暴走する→幸福論”の順番で聴いてみましょう。
「幸福論」で一番印象的な部分であるサビ冒頭の歌詞「時の流れと空の色に何も望みはしない」が「時が暴走する」への伏線となっています。
順調な時は時の流れにも空の色にも何も望まなかったはずなのに、結局自分の思い通りには行かないと解ると、「許可なく月が白くなる」「無神経に朝は訪れる」と苛立ちを感じるようになるのです。
暴走しているのは”時”ではなく、自身の精神状態。
もちろん”時の流れ”は”大好きな君”になぞらえる事ができます。
病んでる女子って、円満な時は良いんですよね…。円満な時は…。
「時が暴走する」も収録のカップリング集。
また椎名林檎はカバーアルバムでもクラシックカバーを4曲歌っています。以下の記事で紹介していますのでどうぞ。
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