TVアニメ《マクロスΔ》の作中音楽ユニット”ワルキューレ”の中で明らかに存在感を放っていた歌唱力で話題になりソロデビューした歌手のJUNNA。
楽曲「コノユビトマレ」でモーツァルトのピアノソナタ11番 第1楽章を引用しています。
2019年リリースの3rdシングル。アルバムバージョンには管楽器群やSEが追加され、更に派手なサウンドに。個人的にはオリジナルの方が好み。
原曲はこちら。今回引用しているのは第1楽章。第3楽章が”トルコ行進曲”の呼称で有名な、ピアノソナタ第11番です。上品で美しい主題の旋律。
「コノユビトマレ」でモーツァルトを引用しているのは、上記動画では聴けない2番のサビ直前の部分。散々盛り上げた直後に、突如静寂が訪れます。かなり意表を突かれる展開です。
イントロからさっそく半音ずつ下がるバイオリンが不気味な雰囲気を醸し出していますが、2番以降は更にモーツァルトの引用を初めとして、不協和音や不規則な自由即興演奏風のピアノなど、曲はどんどん狂気を増していきます。6拍子や7拍子などリズムの変化もあります。
「スキ、キライ」のフレーズが印象的な歌詞と合わさり、曲全体を通してコインの表裏が何度も裏返るような緊張感とスピード感があります。
女子高生たちが文字通り”命がけ”のギャンブルに打ち込むTVアニメ《賭ケグルイ》の主題歌となっており、原作作品の狂気を表現した楽曲です。
クラシックを使用したジェットコースターのような急展開・ラテン音楽の情熱的な要素・妖しくちょっと怖い雰囲気・そして曲全体を支配するスリルと高揚感。まさしく“ギャンブルの持つアブナイ魅力”を詰め込んだ一曲に仕上がっています。気持ち悪さと意外な展開がクセになる、中毒性のある一曲です。私個人的にもとても気に入っています。
作編曲は白戸佑輔。リズムの変化を多用する作家のようで、JUNNAの他の楽曲「Here」「我は小説よりも奇なり」等面白い楽曲を多く作曲しています。
サビ前のブレイクにクラシックを使う手法は結構あって、例えば乃木坂46の「打ち水」はドビュッシーの月光を用いて意外性を持たせています。
また椎名林檎の「時が暴走する」も、同じく混沌とした楽曲の合間にピアノソナタ11番を引用する事で主人公の心理と狂気を演出している楽曲です。合わせてお聴きください。
スフィアの楽曲「パルタージュ」も同じく第1楽章の主題を引用。
ちなみに「コノユビトマレ」はアニメ2期のOPですが、第1期OPの「Deal with the devil」は、「コノユビトマレ」とは異なるアプローチでギャンブル感を演出した楽曲となっています。
カジノ等ギャンブルの場ではジャズがBGMとして流れるのが一般的であり、ビッグバンドジャズを用いることで”ギャンブル感”を出しています。