モーツァルト

ピアノ協奏曲第20番/CHILDREN OF BODOM「Black Widow」

フィンランドのメロディック・デスメタルバンドCHILDREN OF BODOM(チルドレン・オブ・ボドム)。メロディアスなメタルにデスヴォイスを混ぜた、いわゆる”メロデス”と呼ばれるジャンルの先駆者の一人です。

 

そんなCHILDREN OF BODOMもクラシックの要素を多分に含んでおり、楽曲「Black Widow」モーツァルトのピアノ協奏曲第20番を引用しています。

 

1つめは0:50~、2:05~の部分。2つ目は2:20~の間奏の部分。

1999年リリースのアルバム『Hatebreeder』収録。

 

原曲はこちら。第27番まであるモーツァルトのピアノ協奏曲の中でも特に有名な曲です。私が宇宙一好きな音楽でもあります。

引用部分は第1楽章から。下の動画で①は1:50~、13:27~の部分②は3:35~、8:35~の部分。いずれもシリアスで印象的なメロディです。

私が特に気に入ってるのは①の引用メロディ。どんどん底に落ちていくような、悲劇的な下降旋律。そんな綺麗に落ちていくメロディの中で現れる、一瞬わずかに浮上しながらも違和感を持たせるE♭の響きが大好きです。超エモい。

特に2回目の登場は、終盤のカデンツァ(ピアノソロ)の後、一気にピークを迎えるクライマックスで流れる重要な部分です。

第1楽章は、印象的なメロディを調を変えたり楽器を変えたりしながら何度も繰り返す構成になっていますが、今回引用している①のメロディは意外にも序盤とクライマックスの2回しかでてきません。

中盤にも何度も登場しそうな流れになるのですが、他のメロディに行ってしまい、もどかしい気持ちになります。

そうやって焦らされ、さらに長いカデンツァを抜けた先に最高潮を迎えるクライマックスはカタルシスに満ちています。ここで最高に盛り上がる事で、意外にも静かに幕を閉じるラストの余韻もより強調されます。

 

CHILDREN OF BODOMの「Black Widow」でも、2:00~で引用メロディの前に登場させたギターフレーズをラストの3:15~で再登場させるのですが、2回目はそこからモーツァルトのメロディに繋がず全く別のフレーズに行き、怒涛の幕引きを図ります。その肩透かしがもどかしくも痺れる!カッコいい!

そこがまた、導音C♯のロングトーンになっているために”次はDからモーツァルトのメロディに行きますよ!”という強烈な惹きを持っているので2度目の裏切りが余計にグッと来るのです。

 

ストレートなメタルサウンドの中に現れるクラシカルなメロディが異彩を放っているCHILDREN OF BODOMの「Black Widow」ですが、モーツァルトの暗くシリアスな面を象徴するピアノ協奏曲第20番は、デスメタルと良く合っていると思います。

 

数少ないマイナーキーのモーツァルト曲であるピアノ協奏曲第20番。静と動・美しさと暗さ・様式美・そしてスピード感とドラマ性を兼ね備えた名曲です。チルボド好きの方も納得の一曲ではないでしょうか。
希少な短調のピアノコンチェルトという事で、やはり24番とのカップリングがおススメ。

 

ちなみにピアノ協奏曲第20番の第1楽章に何度も登場するピアノソロパートのメロディ(2:42~)は、テレサテンの「つぐない」のメロディの元になったと言われています。歌いだしとサビメロ終止の部分。

 

 

 

また「Black Widow」と同アルバム収録の楽曲「Hatebreeder」では、モーツァルトのオペラ《魔笛》の「夜の女王のアリア」の一節を引用しています。

下記動画2:49~の部分。

原曲はこちら。有名な超絶技巧コロラトゥーラの部分ではなく、その後のパート。1:58~。

 

 

他にもCHILDREN OF BODOMはクラシック曲を引用した楽曲を発表しています。こちらの記事で紹介しています。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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