韓国の5人組女性アイドルグループであるRed Velvet(レッドベルベット)。彼女達の楽曲「Feel My Rhythm」は、バッハのG線上のアリア(『管弦楽組曲第3番』第2曲「エール」をサンプリングした曲です。
トラックは最近流行のEDM×シンセブラスなサウンドですが、歌い方や全体のイメージはガーリーな雰囲気を残しており、トラックにも遊び心があります。
ストリングスの音色とG線上のアリアのメロディが、さらに曲をマイルドに美しく彩っています。
弦楽器の音色は、原曲よりも低音とアタック感&リズム感が強調されており、EDMポップスに合うようチューンされています。
バッハによる原曲はこちら。
もはや説明不要の有名曲ですが、「Feel My Rhythm」では原曲の旋律を切り取って流れを変えています。
Bメロは原曲冒頭のDの和音から始まりますが、そこから独自に和音を展開させていき、G線上のアリアのようで、そうでないようなむず痒い進行になっています。そこから原曲のメロディをふんだんに使用したサビに移行することで解放感を演出しています。
その解放感をアシストするように、サビへの移行はビルドアップ(徐々にドラムの音価を短くし手数を増やして盛り上げる)⇒ドロップ(ベースの一音をきっかけに無音を作る)の、EDM王道の煽りの手法を用いています。
さらにビルドアップ⇒ドロップの部分では、リズムに合わせるように階段状に上がるシンセ⇒ポルタメントで一気に落ちていくベースを組み合わせ、アゲてオトす流れを作っています。聴いていてスッキリしますね。
前半では、あくまで歌メロの流れに合わせるために原曲をアレンジしたり省略したりしているという感じですが、2番以降では更に原曲を細かくカットアップしてトラックの一部として使用しています。主に原曲冒頭のDの和音を切り刻んでおり、エッジを効かせつつもコード感のあるキャッチーなトラックに仕上げています。
さらにCメロでは翳りのあるパートのメロディを引用したり、原曲からは音程や調を変化させる部分も登場したりとバリエーション豊かな使い方です。
一曲を通してG線上のアリアが根底に流れており、更に原曲のメロディを様々にアレンジしながら展開していく「Feel My Rhythm」。宛ら”G線上のアリアの主題を用いた変奏曲”といった感じです。
世界一安心感のあるメロディと言っても過言ではない「G線上のアリア」。多少派手にアレンジしたりエッジを効かせても、やはり心を落ち着かせてくれますね。
サビのバスドラなんか凄い変なリズムを刻んでいますが、「G線上のアリア」のメロディを聴いていると、あの印象的な「ポン・ポン・ポン」というリズムが脳裏に浮かんでくるので全然気になりません。そんな中で遊び心をあえて入れるアレンジが、曲の奥深さを生み出しています。
2022年リリースのミニアルバム『The ReVe Festival 2022 – Feel My Rhythm』収録。ひと昔のR&Bやポップスを現代の音にアップデートしたような曲調が多いです。アーティスト名も「元気でポップ&ダンスな”Red”」+「大人っぽい”Velvet”」という意味が込められているそうで、グループイメージを体現したようなアルバムになっています。
その後まもなくリリースされた日本1stフルアルバムにもクラシックを使用した曲が収録されています。こちらで紹介。