数々のゲームやアニメの主題歌を手掛けた歌手のLia。
TVアニメ『FORTUNE ARTERIAL 赤い約束』のOPテーマ「絆-kizunairo-色」で、バッハの「トッカータとフーガ」を引用しています。間奏部での引用なので、下記動画では引用部分は登場しません。
一見素朴さとドラマ性を内包した、正統派アニメソングという曲調ですが、様々な16分音符やシャッフルリズム、休符が散りばめられており、かなり複雑な譜割りの曲です。
上記動画は一番のみですが二番は更に複雑になります。また、バックのリズム楽器はシンプルな8ビート主体なうえに歌い手自身も微妙にリズムを外しながら歌唱しているため、更に歌うのは難しい…。
そんな複雑な譜割りからシンプルなリズムに回帰する大サビはとてもインパクトが強く、一番の盛り上がりを見せます。
そんな曲の山場である大サビで歌われるのは「神話になんかなれなくてもいい、そのままでいい」「天使になんかなれなくてもいい、そのままがいい」という歌詞であり、これは明らかに『残酷な天使のテーゼ』(残酷な天使のように 少年よ神話になれ)へのアンチテーゼです。
他の歌詞も「一歩進んで二歩下がっても」「アンバランスでも不器用だって」「奇跡がもしなくたって」「ほんのちょっとセツナさ歌う 私のリアル 感じてね」等、寄り添いながらありのままで少しづつ前進していく事が大事。という主題となっており、所謂”セカイ系”とは正反対の、素朴な等身大のドラマ性を主題にしています。
しばしば言葉を詰めすぎて忙しなくなったり余白がやたら長くなったりする譜割りも、そんな”綺麗に言葉を収められない不器用さ”を表現している、と解釈することもできます。
サビのメロディでも『残酷な天使のテーゼ』との対比が成されています。
『残酷な天使のテーゼ』のサビメロは「ドミ♭ファ」と”ド”から始まり”ミ”へ3度の跳躍をします。
一方『絆-kizunairo-色』のサビメロは「シド♯レミファ♯」と、『残酷な天使のテーゼ』よりも半音下がった状態から始まり、1段ずつ階段を上っていくように音程を上げていきます。ここに「低いスタート地点からでも、少しずつで良いから自分のペースで上がっていこう」という曲全体に流れるメッセージを感じます。
そして2番の後、間奏で引用されるバッハの「フーガ」。
作品の登場人物の携帯電話の着信音が歌劇『ジョコンダ』の「時の踊り」だったり、シューベルトの「軍隊行進曲」だったりと作中にもクラシックの要素が登場するそうで、主題歌にもクラシックのモチーフをこっそり忍ばせています。
等々、一見ベタなアニソンに聴こえる「絆-kizunairo-色」ですが、所々に凝った要素が含まれている名曲となっています。是非一曲通してじっくり聴いてみてください。
2010年リリース。
Liaは多くの有名なアニメソングを手掛けています。「絆-kizunairo-色」だけではなく、他にも一癖ある不思議なリズムの曲が多く存在します。
TVアニメ『Angel Beats!』OPテーマ「My Soul, Your Beats」
一定のリズムで延々と鳴り続けるバスドラムの裏で、全く違うリズムを刻み続けるライヒのようなピアノが不思議な雰囲気を作り出していますが、これこそが作品の主題そのものであり、物語の伏線にもなっています。
他にも曲タイトル及び作品タイトル、心臓の鼓動をモチーフにしたアートワーク等様々な部分で、終盤で明かされる作品のテーマを前もって暗示しています。
曲タイトルになぞらえると、「My Soul(=ピアノ及びヒロイン), Your Beats(=バスドラ及び主人公)」という事になります。
また、作品の世界観の中でヒロインのみが異質な存在となっており、それが曲の中で唯一リズムが合わずに一人だけ別世界にいるように聴こえるピアノによって表現されています。
現代音楽×アニソンの超名曲。
TVアニメ『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』OPテーマ「時を刻む歌」
イントロが8拍子、Aメロが13拍子、Bメロが3拍子、サビ前半が4拍子、サビ後半が5/8拍子な超変拍子アニソン。
なのにシンプルなピアノと美しいメロディで普通に聴けてしまいます。
「My Soul, Your Beats!」「時を刻む唄」収録のベストアルバム。
TVアニメ『神のみぞ知るセカイ』OPテーマ「A Whole New World God Only Knows」
ELISAとのデュエットによる、オラトリオ風二重唱。Bメロとラストで大胆にリズムとアレンジを変化させます。讃美歌とエレクトロニクスを合わせたスピード感のある曲調は、アニメ作品の世界観に良く合っています。
壮大な組曲形式の1期OPテーマ「God only knows」に負けない名曲。原作も「理想と現実」がテーマの奥深い作品です。
TVアニメ『ウィザード・バリスターズ〜弁魔士セシル』OPテーマ「JUSTITIA」
Bメロで突然スウィングし始めたと思ったら、今度は2拍3連でのキメ連発。そこからウソのようにキレイなサビに突入する様が無理矢理だけどドラマティック。サビ後半の忙しないドラムも不思議。普通ここでこんなリズムのドラムは入れない。