キーボーディスト&プロデューサーのMistheriaを中心とした、イタリア発のクラシック×メタルプロジェクト。
ヴィヴァルディの協奏曲集《四季》を全曲カバーした前作「TheFourSeasons」から6年ぶりとなる2ndフルアルバム。
本作はヴィヴァルディからの引用は一曲のみで、様々な作曲家のクラシック曲をカバーした、全18曲の大作。
2022年リリース。どうやらパッケージ販売はクラウドファンディングのリターン限定?受注限定?だかで終了しており、現在はDL/ストリーミングのみのようです。
1.◎Deposuit Potentes/ヴィヴァルディ『マニフィカト』より「Deposuit potentes」
2.◎Threshold of Miracles/バッハ「トッカータとフーガ」(BWV 538「ドリア調」)
3.Tears to Splendor/ドヴォルザーク「新世界より」第4楽章
4.◎Dies Irae/モーツァルト『レクイエム』より「怒りの日」
5.◎Never Ashes Again/リスト「ハンガリー狂詩曲第2番」
6.Royal Overture
7.Hymn of Life/モーツァルト「交響曲第40番」第1楽章
8.Symphony of Death/ベートーヴェン「運命」第1楽章
9.◎Revolutionary Odyssey/ショパン「革命のエチュード」
10.◎Alight/モーツァルト「トルコ行進曲」
11.◎The Absolution/ブラームス「交響曲第4番」第1楽章
12.◎Mania/サン=サーンス『動物の謝肉祭』より「水族館」
13.◎Power Take Hold/バッハ「トッカータとフーガ」(BWV 565)
14.◎Evolution/フォーレ「パヴァーヌ」
15.The Eye of the Guardian/バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻」第1番
16.Deep Core/ジャゾット「アルビノーニのアダージョ」
17.The Empire/ベートーヴェン「ロマンス第2番」
18.Tragic Serenade/シューベルト「セレナーデ」
1.◎Deposuit Potentes/ヴィヴァルディ『マニフィカト』より「Deposuit potentes」
曲名はキリスト教聖歌であるマニフィカトの一節。マニフィカト、といえばバッハ。と思いきや、本曲で引用しているのはなんとヴィヴァルディのマニフィカト。ヴィヴァルディのマニフィカトとかマイナー過ぎない??
ワルキューレの騎行みたいな出だしからオリジナルのインストパートを経て、ヴィヴァルディの合唱曲をソプラノ×ネオクラにアレンジ。
クレジットを見てみると、バンド演奏はKelly SIMONZ’s BLIND FAITHのメンバー。ギターはもちろんケリー・サイモン。
クラウドファンディングで制作された当アルバム。日本人の支援者が多いのだろうか。ヴォーカルはポーランドのオペラ歌手との事で、小曲ながらも全体的に完成度が高い。
ちなみにヴィヴァルディのマニフィカトは、20分程度の程よい長さの中に器楽曲あり、アリアあり、合唱あり。更に安心のヴィヴァルディ節な上に短調曲が多いので、こういう作品が好きな人に勧めるヴィヴァルディとしてはうってつけ。よりにもよってな選曲なので、きっと作者にもそういう意図があるんだと思う。
2.◎Threshold of Miracles/バッハ「トッカータとフーガ」(BWV 538「ドリア調」)
今度は有名じゃない方の「トッカータとフーガ ニ短調」。2曲続けて超意外な選曲。
一曲目とはガラリと雰囲気を変えたスラッシュメタル。と思ったらドラムがメガデスのDirk Verbeuren。ザクザクしたギターリフとオルガンの絡みがカッコいい。合唱ありブラストありと、展開やアレンジも豊かで聴いていて楽しい。
合いの手を入れるオルガンや間奏などでバッハから引用。複数のヴォーカルが掛け合うように同じ音型のメロディを繰り返すパートもフーガの技法的。と思ったらここも引用だった。上記動画の2:20~。作り手のクラシックへの造詣の深さが伺える。
3.Tears to Splendor/ドヴォルザーク「新世界より」第4楽章
3曲目で、ようやく冒頭から有名なフレーズが飛び出す安心の展開。その後はサビでテンポダウンしたりクラシカルな要素は減退したりとややトーンダウン。Rhapsody的なのを期待していた人はやや肩透かしかも。間奏のバイオリンソロはカッコいい。
ヴォーカル及び編曲は元イングウェイ・マルムスティーンのJeff Scott Soto。今までとは曲の毛色が違うと思ったらMistheria編曲じゃなかった。
4.◎Dies Irae/モーツァルト『レクイエム』より「怒りの日」
そしてみんな大好きレクイエム。この選曲でピアノをフィーチャーする所がセンスが良い。サビではレクイエムのメロディはシンセでの対旋律に回る、自由自在な歌メロの組み方も面白い。
原曲通りに再現すると2分で終わってしまう「怒りの日」に、程よくオリジナルの要素を加えながら何度も展開していく、良いアレンジ。
そして原曲のクライマックスであるパートから、そのまま曲を締めずに聴き手の予想を裏切るようにギターソロへ突入する展開が激アツ。原曲が小曲&メロディが印象的&有名だからこそ、これができる。良く解ってる。
ちなみに男性ヴォーカルはTEMPERANCEの人。
5.◎Never Ashes Again/リスト「ハンガリー狂詩曲第2番」
メインヴォーカルはRhapsody Of FireのGiacomo Voli。
原曲とはリズムが変わっていて結構解りにくいカバーだけど、冒頭のコーラスや間奏のシンセのメロディ・ギターソロの後のピアノのフレーズ等は1:10~の部分、サビは2:00~の部分。原曲の冒頭のフレーズや後半のメロディなど有名な部分をあえて使わない所が奥ゆかしい。
サビはリストのメロディを上手いこと飛翔系メロスピに昇華させていて、凄く上手い。コーラスは迫力に欠けるけど、演奏も緩急とバリエーションがあり爆走一辺倒よりも個人的には好み。
間奏で登場するピアノやバイオリンがカッコいい。終盤になって女性ヴォーカルが登場し二重唱になる演出もニクい。
作編曲はYannis Androulakakisという方。これは良いカバー。
6.Royal Overture
Rossano Capriottiという人物によるオリジナル曲。スリリング&シネマティックな7拍子のインストにソプラノのヴォカリーズが乗る。小曲ながら出来が良い。
Royal Overtureとのタイトルだが、ロイヤルな序曲というよりは、アクション・クライム映画のOPテーマという感じ。
7.Hymn of Life/モーツァルト「交響曲第40番」第1楽章
シルヴィ・バルタンのカバーみたいな始まり方をする、Within temptationの1stみたいなミドルテンポのシンフォニックメタル。
インペリテリのRob Rockと女性ヴォーカルによるデュエット。せっかく抒情的な曲なのに、Rob Rockがあまりにもパワフル過ぎてちょっと他とのバランスが悪い。もっと他の曲を歌わせた方が良かったんじゃ…。
曲全体を見ても、原曲の主題のインパクトが強すぎて中盤から尻すぼみになってしまう、あるある竜頭蛇尾クラシックカバー。
8.Symphony of Death/ベートーヴェン「運命」第1楽章
前曲の流れを汲んだシンフォニックメタル曲。
作曲はjoão luísという方。ヴォーカルはMetaliumというドイツのバンドの人と女性シンガー二人のトリプルVo。
オリジナル成分多めだが、そこかしこに運命のフレーズが散りばめられている。
9.◎Revolutionary Odyssey/ショパン「革命のエチュード」
混声三部合唱の壮大なイントロからヴァイキングメタル風に展開する。
ミドルテンポのシンフォニックメタルとショパンの華麗なピアノのメロディがとても相性が良く、原曲のメロディをふんだんに使用した歌メロもクサい。
作曲はGabrielsという方。
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