日本のクラシカル・クロスオーヴァー歌手Yucca(ユッカ)。
普段はケルティック・ウーマンやキャサリン・ジェンキンス等のような、穏やかなヒーリング風味のクラシックカバー曲を中心に制作している歌手ですが、今回紹介するのはロックとクラシックを融合させた「ロック・オペラ」な曲をメインに据えた異色のアルバム、「masquerade」です。
2013年リリース。リンク先で全曲試聴できます。
曲目
青色◎は特によかった曲。
1.Eine Kleine Nachtmusik(モーツァルト:アイネクライネナハトムジーク)
2.Libertango(アストル・ピアソラ:リベルタンゴ)
3.パリの散歩道(ゲイリームーア:パリの散歩道)
4.◎主よ、人の望みの喜びよ(バッハ:主よ、人の望みの喜びよ)
5.Child’s Anthem(TOTO:子共の凱歌)
6.◎Hocus Pocus(Focus:Hocus Pocus)
7.◎ハンガリー舞曲第5番(ブラームス:ハンガリー舞曲第5番)
8.めぐり会い(アンドレ・ギャニオン:めぐり逢い)
1.Eine Kleine Nachtmusik(モーツァルト:アイネクライネナハトムジーク)
アイネクライネ・ナハトムジークを、インダストリアルハードロック&ソプラノコロラトゥーラで再現。後半はドラムも裏打ちやバスドラを連打し疾走。
声楽出身で普段は真面目なクロスオーヴァーをしているだけあって歌も流石に上手い。
この完成度の高いド派手なハードロックサウンドは誰の仕業?と思ったら編曲はゼノブレイドのロック曲を手掛けた平松健司。なんと。”名を冠する者たち”を作曲した人!納得の出来。
2.Libertango(アストル・ピアソラ:リベルタンゴ)
スパニッシュハードロック&ヴォカリーズで有名なタンゴ曲をカバー。言われて聴けばゲーム音楽みたい。
3.パリの散歩道(ゲイリームーア:パリの散歩道)
歌謡曲などを主に手掛ける佐藤和豊編曲の、ムーディー歌謡ロックなゲイリームーアのカバー。歌詞を付けず母音だけで歌う事でなんかサスペンスドラマのBGMみたいになってる。パリの散歩道というよりは東京湾の岸辺って感じ。
4.◎主よ、人の望みの喜びよ(バッハ:主よ、人の望みの喜びよ)
カンタータもハードロックにアレンジ。原曲に歌詞があるので、この曲はヴォカリーズじゃなくてちゃんと歌ってる。
お洒落に跳ねるピアノアレンジとポジティブなギターがとても心地よく合っている。原曲の旋律もいい感じに合いの手を打つように流れ、違和感なくテンポの良い曲に仕上がっている。斬新なカバー。これは良い出来。
5.Child’s Anthem(TOTO:子供の凱歌)
ロックバンドTOTOのインスト曲をヴォカリーズでカバー。印象的なイントロのギターフレーズはシンセ&ギターでキメる。
ちょっと壮大でエンヤみたいな雰囲気になっている。バッハのカンタータをハードロックにするのに、TOTOはヒーリング風にするのか…。しかし結果的に面白いカバー。中盤のギターソロは激アツ。
6.◎Hocus Pocus(Focus:Hocus Pocus)
ロックバンド”フォーカス”の曲をカバー。オルガン&ソプラノヴォイスで原曲に無かった人外感が出ており、Yuccaのソプラノヴォイスがまさしく悪魔の呪文(Hocus Pocus)みたいに聞こえる。オリジナルの歌詞を付けず、原曲に歌詞が無い場合はヴォカリーズで歌う本アルバムの手法を逆手に取った曲。
ロンド形式的に主題を挟みながら次々と色んなパートが登場する原曲の劇的さを、多彩なアレンジで何倍も増幅させている。名カバー。
佐藤和豊が手掛ける、所々古臭いギターやシンセも原曲の雰囲気に合っている。ベースもカッコいい…。
7.◎ハンガリー舞曲第5番(ブラームス:ハンガリー舞曲第5番)
メロディアスな原曲を、オルガン&混声合唱&ネオクラ風ギター&ヴォカリーズでド派手にアレンジ。ゲームのボス戦曲みたい。後半突然現れる7拍子のシンセソロからのギターソロが超アツい。ちなみにこれも平松健司編曲。
8.めぐり会い(アンドレ・ギャニオン:めぐり逢い)
ヒーリング・ミュージックの大御所アンドレ・ギャニオンをハードなロックに…せず奇をてらわないアレンジ。凄い熱量のアルバムだったので心休まる。Yuccaの癒し系ヴォイスを楽しみにしていたであろうファンも、これで溜飲が下がる、はず?
総評
声楽出身で実力がある歌手Yuccaと、ド派手なゲーム音楽風ハードロックの平松健司、比較的手堅いアレンジの佐藤和豊によって作られた、本気のロックオペラ。
クラシック以外のカバーも、往年のクラシカルロックを現代の音でハイクオリティにリアレンジしており、聴きごたえは十分。
しかし、きっとYuccaのCDを今まで買ってきたファンからは不評なんじゃないだろうかこのアルバム。こんな音楽を必要としている人たちにきっと届いていない、不遇の作品。
[…] […]
[…] […]
[…] […]