日本のシンフォニック・メタルバンドLIV MOONのヴォーカルによるソロプロジェクト。“誰もが聞いたことのあるクラシック曲をモチーフにした曲作り”をテーマに作成された、各楽曲にクラシック曲のモチーフを使用したアルバム。
2014年リリース。
曲目
“青色◎”は特によかった曲。
1 Sunrise Over Sea(リスト「愛の夢 第3番??)
2 NIGHT PARADE(バッハ「トッカータとフーガ」
3 Raindrop(ショパン「雨だれ」)
4 ◎HIKARI(ベートーベン「悲愴」)
5 BUTTERFLY(ヴィヴァルディ《四季》より「夏 第3楽章」)
6 ~月の歌う夜~(チャイコフスキー《白鳥の湖》より「情景」)
7 ◎Close Your Eyes(モーツァルト《レクイエム》より「怒りの日」
8 Interlude(チャイコフスキー《くるみ割り人形》より「金平糖の踊り」)
9 ◎Summer Shadow(チャイコフスキー《くるみ割り人形》より「金平糖の踊り」)
10 ◎Libertango(ピアソラ「リベルタンゴ」)
11 Nostalgia(ラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番」)
12 E-MOTION(Bonas Track)
1 Sunrise Over Sea(リスト「愛の夢 第3番??」)
“誰もが聞いたことのあるクラシック曲をモチーフにした曲作り”がテーマとの事だが、初っ端から何の曲を引用しているかさっぱり解らない。
Aメロのバックで演奏されているピアノが何となく愛の夢の面影があるような気がしないでもないけれど、あまりにもさりげなさ過ぎる。
それならばとブックレットを見てみるも、引用元に関する記載は一切ない。
コンセプトに魅かれて購入したリスナーをいきなり崖から谷底へ突き落とすような試練の曲。これは…もしかして試されている…!!
楽曲自体は思い切ってポップスに寄せており、歌声も含めて「安室奈美恵の新曲」と言われても違和感のないような雰囲気の曲。あえてクラシックに寄せ過ぎないようにしている意図を感じる。
2 NIGHT PARADE(バッハ「トッカータとフーガ」
これも解りづらいけれど、Bメロのバックやアウトロのシンセが「トッカータとフーガ」のトッカータの部分。この原曲動画の1:27~の箇所。わかりにくいんじゃ!
曲自体はクラシックのフレーズをうまくシンセメインのダンサブルな曲に利用しており、今聴けば古めのアレンジではあるものの良い感じ。オリジナルのサビもキャッチー。
ヴォーカルもLIV MOONの時とはだいぶ違い、低めの音域でポップス的な歌唱。高音も出せる彼女だが、音域的にもこれくらいの高さが一番合っている気がする。普通に上手い。
3 Raindrop(ショパン「雨だれ」)
これも始め聴いた時「どこにクラシック??」と困惑したけれど、AメロBメロが「雨だれ」の引用。イントロも何となく参考にしてるっぽい。ちょっと大陸風のリズムも入れており、「雨だれ」を思いっきり壮大でエモーショナルにアレンジ。原曲のイメージをあえて壊すようなポップスへの消化の仕方が斬新。おそらく意図的なものと思われる。
4 ◎HIKARI(ベートーベン「悲愴 第2楽章」)
冒頭でほぼアカペラで「悲愴」のメロディを再現した後、オーケストラサウンド&クワイアをフィーチャーした、ドラマティックなダンス曲が始まる。オーケストレーションも派手。
そしてラストの大サビで再び「悲愴」のメロディが、今度はオーケストラと合唱を従えて再登場。ここが盛り上げに盛り上げる展開。紆余曲折を経て主題が帰ってくる流れは超壮大。「悲愴」の主題でオリジナルの曲を挟む事で三部形式っぽくなっている。
このアルバムのハイライト的な曲であり、アルバム全体の流れも、この曲を機に一気にクラシカルな雰囲気に変わる。
5 BUTTERFLY(ヴィヴァルディ《四季》より「夏 第3楽章」)
前の曲から引き続き、壮大なオーケストラアレンジのクロスオーヴァー曲。でもサビメロが起伏が激しい割に地味な出来で、派手なアレンジの割に盛り上がらない。せっかくヴィヴァルディを引用しているんだから、サビもCメロみたいにクラシカルな旋律にしたら良いのに。そうすればLIV MOONのファンも納得の一曲になりそう。
6 ~月の歌う夜~(チャイコフスキー《白鳥の湖》より「情景」)
「情景」のメロディをしっかりと歌い上げるカバー曲。これもクラシック要素が強く、序盤の雰囲気はどこへやらでJPOPを聴いていると思ったらいつの間にかクラシックの世界に引き込まれているようなアルバム構成。
7 ◎Close Your Eyes(モーツァルト《レクイエム》より「怒りの日」
「怒りの日」のコーラスを再現する冒頭部からEDMアレンジに展開していくマイナーダンス曲。コーラスとヴォーカルの掛け合いがかっこいい。
8 Interlude(チャイコフスキー《くるみ割り人形》より「金平糖の踊り」)
原曲を再現し次曲に繋がる1分程度のインスト。
9 ◎Summer Shadow(チャイコフスキー《くるみ割り人形》より「金平糖の踊り」)
「金平糖の踊り」をサンプリングしているけれど、リズムはトロピカンEDMポップスな不思議な曲調。異ジャンルの今風のサウンドとクラシックを融合させているこれは良い曲。
10 ◎Libertango(ピアソラ「リベルタンゴ」)
オペラ座の怪人と思ったらリベルタンゴだった。原曲成分が多いアレンジ&歌メロに映画音楽風のドラムや高音のバイオリンが加わる劇的な曲。
11 Nostalgia(ラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番 第1楽章」)
これも序盤で原曲のアレンジやメロディをたっぷり使用した、壮大なニューエイジ風バラード。
12 E-MOTION(Bonas Track)
ノリの良いダンスアレンジ&ヴォカリーズの半インスト的なボーナストラック。これも何かの引用だろうか。
意図的な判断だろうけれど、“誰もが聞いたことのあるクラシック曲をモチーフにした曲作り”をテーマにするなら、やっぱり引用元の表記はして欲しかった…。
総評
序盤のポップス然とした雰囲気から4曲目のHIKARIを機に一気にクラシック調に入るアルバム構成は面白いけれど、クラシックをテーマにした作品でそれをする意図は何だろう、という印象が残る。逆の曲順よりかはこっちの方が良いだろうけれど。
アレンジや盛り上げ方等、曲調的には藤澤ノリマサの1stに近い。藤澤ノリマサの1stの雰囲気に、コードを鳴らす浮遊感のあるシンセ等サラ・ブライトマン的要素を少しだけ混ぜたような感じ。
しかしメロディが弱い曲も多く、バンドサウンドも無いためLIV MOONの音楽が好きなファンにとってはやや物足りなさそうな作品。
サウンドプロデュースを手掛けるJeff Miyaharaは、黒木メイサのクラシック引用曲も手掛けています。こちらの記事で紹介。
LIV MOONのクラシック引用曲はこちらの記事で。