日本のトラックメイカー、ROBERT DE BORON(ロバート・デ・ボロン) がリリースした、クラシック曲をベースにトラックメイクしたHIPHOP曲で構成されたアルバムの第2弾。
今回はアメリカのヒップホップMC,Othello(オセロ)との共作。全曲英詩。
2013年リリース。
こちらのリンクで全曲試聴できます。
https://music.apple.com/jp/album/beat-the-classics/584318558
曲目
“青色◎”は特によかった曲。
1. True Love feat. Vivian Chen(ラヴェル 「亡き王女のためのパヴァーヌ」)
2. ◎Do It Like This ~ infused by Tchaikovsky (チャイコフスキー 《白鳥の湖》より情景」)
3. The Truth in Love feat. Vivian Chen (ワーグナー 「結婚行進曲」)
4. Regret Me Not feat. Vivian Chen(パッヘルベル 「カノン」)
5. Break The Silence (サティ 「ジムノペティ」)
6. Bon Voyage (リスト 「ため息」)
7. ◎Overture feat. I-RING from NUDYLINE (マスカーニ 「カヴァレリア・ルスティカーナ」)
8. ◎Still Alone (インフューズド・バイ・ショパン 「幻想即興曲」)
9. Everyday Not Your Everyday (ベートーヴェン 「交響曲第9番」)
10. ◎Prayer Vox feat. Vivian Chen (カッチーニ 「アヴェ・マリア」)
11. Far Gone (エルガー 「威風堂々」)
12. Time To Say Goodbye
1. True Love feat. Vivian Chen(ラヴェル 「亡き王女のためのパヴァーヌ」)
原曲をサンプリングしたシンプルなR&B風トラックに、VERBALみたいな鼻声気味のOthelloのラップとJADEみたいなゲストヴォーカルが乗っかる、”m-flo loves Sweetbox”みたいな雰囲気の曲。
前作で存在感の強かったベースは奥に引っ込んでおり、ピアノも前作の跳ねまくっていたリズムより普通のシンプルなプレイが増えている。
2. ◎Do It Like This (チャイコフスキー 《白鳥の湖》より情景」)
ブレイクビーツ風のドラムにスウィングするピアノが乗るトラックは前作の雰囲気に近い。「情景」前半の旋律を豪快に崩してピアノで演奏するヴァースから、後半部をストリングスで再現するフックにつながる流れはキレイ。
3. The Truth in Love feat. Vivian Chen (ワーグナー 「結婚行進曲」)
これもラップ&女性Voのスタイルに、原曲をかなりアレンジしたトラックが乗っかる曲。フックで徐に登場するストリングスアレンジがfaithみたいな雰囲気。
華やかな曲調揃いだった前作とは打って変わって、結婚行進曲もアンニュイに仕上げる。アルバムのジャケットカラー通り、今回のイメージカラーは黒の様子。
4. Regret Me Not feat. Vivian Chen(パッヘルベル 「カノン」)
こちらもカノンを暗めにアレンジ。Othelloもフックではメロウに歌い上げてデュエットの様相。ラップ少なめのR&Bバラード。
5. Break The Silence (サティ 「ジムノペティ」)
リバーブをかけたシンセにブレイクビーツを乗せたピアノインストのジムノペディ。これまたアンニュイな雰囲気がたまらない。ダルシットのアルバムにこんなのあったな…。
6. Bon Voyage (リスト 「ため息」)
今まで通りのアレンジの曲。フックはOthelloが自分で歌い、コーラスも努める忙しい曲。フックの対旋律はメンデルスゾーンの結婚行進曲みたい。
7. ◎Overture feat. I-RING from NUDYLINE (マスカーニ 「カヴァレリア・ルスティカーナ」)
原曲がややマイナーな上、大胆にアレンジしているためほぼオリジナル曲に聞こえる。
これ曲名は「Overture(序曲)」だけど、引用しているのは多分「intermezzo(間奏曲)」だよね??
そもそも歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」にはPrelude(前奏曲)はあってもOverture(序曲)は無いし。アルバム全体のど真ん中に「Overture」という曲を配置するのもちょっと。歌詞がOverture的なテーマなのかもしれないけれど、それにしてはCDに歌詞ブックレットが付いているわけでもなく、聴き手が英詞の意味を読み取る事はほぼないと思われる。タイトルが紛らわしい。
曲自体の出来はとても良い。ゲストヴォーカルの歌声と、原曲から引用している切ないストリングスのラインが泣ける。
8. ◎Still Alone (ショパン 「幻想即興曲」)
冒頭の速弾き部分ではなく、他のところを引用しているインスト曲。キーボードの音色とメロディが神秘的で浮遊感がある。とにかくオシャレでメロウ。
9. Everyday Not Your Everyday (ベートーヴェン 「交響曲第9番」)
フックで第九をサンプリング。ヴァースの部分のオリジナルのピアノトラックが可愛らしくて良い出来。2番からストリングスが追加される展開も良い。
10. ◎Prayer Vox feat. Vivian Chen (カッチーニ 「アヴェ・マリア」)
原曲序盤のゆったりしたメロディラインのパートでヴァースのトラックを作り、天から降りてくるような起伏の激しいメロディのパートをバックにフックを歌う、原曲の流れを活かしたサンプリング曲。オリジナルのサビメロもドラマティック。
ゲストヴォーカルの歌声にシンプルなR&Bリズムと暗いピアノの音色も相まって宇多田ヒカルの曲みたい。
11. Far Gone (エルガー 「威風堂々」)
原曲の行進曲感をある程度尊重し、奇数拍も強調したリズムのシンプルなHIPHOP曲。
12. Time To Say Goodbye
ピアノ独奏によるインスト。
総評
前作よりもベースやストリングスの割合は減少しており、ピアノやリズム楽器が中心のシンプルなクラシックアレンジになっています。12曲中インスト曲が3曲とやや手抜き感もありますが、結果的に通して聴きやすい構成となっています。また前作よりもややマイナーな選曲も多くアングラ感が強くなっています。
前作よりもメロウな曲や短調の曲、静かな曲にビートを効かせた曲など、ジャケットのイメージカラー通り”黒”のイメージを強めに出した作品。とはいえ前作のようなオシャレ感は相変わらずであり、前作同様おススメの一枚。
シンプルで暗めの曲が好き(Ⅱ)か、明るくグルーヴィーで華やかな曲が好き(Ⅰ)かでお好きな方を選びましょう。
前作のレビューはこちら↓