アメリカのヒップホップアーティストNasの「Hate Me Now feat.Puff Daddy」。
カール・オルフのカンタータ《カルミナ・ブラーナ》冒頭の1曲、「O Fortuna(おお、運命の女神よ」をサンプリングしています。
「HATE ME NOW」MV。
原曲の「O Fortuna」はド派手な合唱曲ですが、こちらの吹奏楽編曲版の方がサンプリング元として解りやすいかも。
1999年リリースの3rdアルバム「I Am…」の3曲目に収録。
この「I Am…」ですが、名盤です。どの曲も派手過ぎないけれど退屈しないトラック揃いで、ラップもクセが無く普通に上手いのでとても聴きやすい。Nasといえば1stアルバムの「Illmatic」が有名ですが、「Illmatic」よりも「I Am…」の方がメランコリックで日本人の感性にはよく合うと思います。
4曲目の「Small World」なんてKREVAかな?っていうくらいの叙情的なトラックです。
13曲目の「Nas Is Like」MV。
Nasの代表曲です。これもノリが良くてかっこよいのに泣けるトラック。
2000年前後はこのNasの「I Am…」やJay-Zの「Blueprint」そしてEMINEMのデビューなど、HIP HOP界がとても盛り上がっており豊作の時期でした。
「O Fortuna」と「Hate Me Now」
そんなNasの「Hate Me Now」ですが、歌詞は「ビッグになったぜ、恨みたいなら恨めよ 俺は進み続けるぜ」といった感じの内容です。前作の2ndアルバムで大ブレイクした現状を踏まえての内容となっています。
大勢の合唱団を携えて、運命に抗おうとする内容の歌詞を歌う原曲の「O Fortuna」ですが、
人生における大きな成功を収めたNas自身の「運命を勝ち取った」という心情を「O Fortuna」の歌詞に投影させているともとれますし、大規模合唱曲をバックにラップをする様は「大衆を味方につけた」というメッセージのようにも見えます。もしくは「俺こそが勝利の女神だ」くらいに思っているのかも知れません。
その一方で、「O Fortuna」は「”運命”というのは強大であり、また気まぐれで、無情でもある」という歌でもあります。
Nas自身の「自分もいつ転落するか判らない」という心情もこの曲をサンプリングした意図に含まれているものと思われます。Nasもいわゆる「成り上がり」であり、スラム街は目と鼻の先。ドラッグや犯罪に巻きこまれて落ちぶれるスターも山のようにいる業界。運命の女神の気まぐれ一つで、一個人なんか、どうにでもなるのです。
運命の女神なんかには負けない!というメッセージが込められているのでしょう。
で、肝心のトラックですが、原曲の「O Fortuna」の持つ荘厳さはかなり抑えられており、普通のマイナー調ヒップホップといった雰囲気です。指摘されないと、カルミナ・ブラーナをサンプリングしている事にも気づかないくらいです。
しかしフックの前後で微かに登場する合唱や、リズムのオカズとして登場するティンパニなど、クラシックである原曲の要素もしっかりと残してあります。
普通クラシック曲をサンプリングする際は、「クラシックを使ってやったぞ!どうだ!」と言わんばかりに有名フレーズをほぼそのままループさせたりするものですが、そんな安易なサンプリングとは一線を画するトラックメイクです。
原曲へのリスペクトとカルミナ・ブラーナをネタに選んだ必然性、そしてヒップホップサウンドに上手く落とし込んだアレンジ、と三拍子揃った完璧なクラシック・サンプリングです。大好き。
もう一つのクラシックサンプリング曲「I CAN」も同時収録のベスト盤も良いです。
「I CAN」もこちらの記事で紹介しています。こっちの曲は、この曲に子どもを起用するセンスが個人的にイマイチです…。
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