1970年頃に人気を博したフランスの歌手、シルヴィ・バルタン。”フレンチ・ポップス”というジャンルで括られます。
代表曲の一つ、「哀しみのシンフォニー」でモーツァルトの「交響曲第40番 第1楽章」をカバーしています。
原曲の「交響曲第40番第1楽章」の視聴はこちら。
「哀しみのシンフォニー」歌唱映像。
CD音源はこの後、最後に冒頭のメロディに戻って終わりとなります。
シルビー・バルタン?誰それ?という方はこの曲を聴けば解るはず。
「あなたのとりこ(irresistiblement)」。CMや映画「ウォーターボーイズ」等で使用されており、大変耳馴染みのある曲です。
私が一番好きな曲は「愛のフーガ」。
現代音楽をサンプリングしたようなオーケストラとバンドサウンド・そして哀愁満点なメロディの、クラシカルミクスチャー歌謡ロック。50年も前にこんな曲を作っていたなんで驚きです。
哀しみのシンフォニー(CARO MOZART)
邦題は「哀しみのシンフォニー」ですが、原題はイタリア語で「CARO MOZART」であり、訳すると「愛しきモーツァルト」となります。
私この曲を聴いた時、「何故この曲のタイトルが悲しみのシンフォニー?」と思ったのです。
というのも、物悲しい旋律が印象的な原曲の交響曲第40番。この「悲しみのシンフォニー」も原曲同様の主題をメインに進んでいくのですが、後半はオリジナルの展開も加えながら明るく転調しクライマックスを迎えます。明らかにハッピー・エンドな曲展開なのです。
歌詞を確認すると、案の定モーツァルトへのラブレターのような歌詞。”モーツァルトを聴くと苦しみや辛い思い出も忘れられる”みたいな歌詞です。正反対やんけ!
訳者は元の歌詞を確認しなかったのでしょうか?それとも当時はアンニュイなタイトルの方が受けが良かったのでしょうか。
曲解説
「哀しみのシンフォニー」は一見原曲をそのまま歌っているだけのようなカバーですが、実は相当な工夫がなされています。
まず、歌メロは原曲の有名な部分を使っているだけなのですが、テンポを落とし、加えてメロディの組み合わせを変える事でポップスらしくしています。
具体的に説明すると、まず原曲冒頭の第1主題を2回繰り返します。これは原曲と同じですが、「哀しみのシンフォニー」はこの後一気に第2主題のラストへ飛びます。
この第2主題のラストは第1主題冒頭の旋律を明るく転調させたメロディです。
結果的に”Aメロ→Bメロ→Aメロ→Bメロ→サビ(Aメロを明るくアレンジしたメロディ)”のような曲展開になります。原曲のおいしいところ取りをしながらも、ポップス然とした展開になっており、しかもサビで悲しみのメロディーである部分が明るくなって帰ってくるので劇的な雰囲気になります。
また中盤以降はオリジナルの展開を経た後、再び第2主題を使ったサビへと続きます。このオリジナルの展開も違和感というよりは”起承転結の転”という感じになっています。今までがほぼ1種類のメロディの繰り返しだったのでちょうど良いタイミングでの展開です。また程よいバンドサウンドとイタリア語の歌詞も相まって、イタリアンプログレのような雰囲気が出ています。超かっこいいです。
ラストは明るい旋律を繰り返し、最後は冒頭の第1主題に戻って終わりです。明るい曲調でそのままTHEハッピー・エンドな終わり方でも良い気がしますが、最後に冒頭の主題に戻り原曲を想起させる事で、原曲へのリスペクトを感じますし、より曲の印象がクラシカルになります。
またイタリア語の歌詞と打楽器は別の効果も生んでおり、日本人の私達が聴くと民族舞曲のように聴こえます。モーツァルトの原曲では単に悲しみの旋律だったバイオリンが、「悲しみのシンフォニー」では異国の踊りの伴奏のように聴こえてきます。これは意図的な演出なのでしょうか。交響曲第40番のメロディってこんなに民謡臭かったっけ?
交響曲第40番
モーツァルトは多くの交響曲を作曲しましたが、短調の交響曲は25番と40番だけです。
また、モーツァルトの晩年に作曲された39番、40番、41番をまとめて”3大交響曲”と呼びます。41番は「ジュピター」という副題が付いており、モーツァルトの交響曲でもとても人気のある1曲です。モーツァルトの人生で最後に作曲された交響曲群であり、集大成とも言えるでしょう。
交響曲第40番も第1楽章だけでなく、他の楽章も名旋律揃いです。
ノリが良いキャッチーな第4楽章。ザ・モーツァルトなメロディと展開でもあります。
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