今回紹介するのはロシアの作曲家ムソルグスキーの「はげ山の一夜」ですが、その中でも歌付きバージョンです。
アバド指揮のベルリン・フィル演奏。大変レア音源で、CD音源もほとんどありません。 しかしこの合唱バージョンが最高なんです。リンク先で視聴もできます。
1曲目の「はげ山の一夜」とシアトリカルな7曲目「古典様式による交響的間奏曲」がオススメです。
はげ山の一夜 原典版・オペラ版・コルサコフ版
ムソルグスキーが好んでいた、同じロシアの作家ゴーゴリの戯曲「聖ヨハネの夜の禿山」を基に作曲された「はげ山の一夜」。
ロシアやヨーロッパを中心に、夏至に近い聖ヨハネの誕生日に”夏至祭”なる祭りを行う習慣があり、それを題材にした曲です。お祭りの夜に悪魔が現れる曲。
程よく調性を逸脱した音を使用したり、野太い金管楽器が前面に出てきたりと、ロシア音楽の魅力たっぷりな曲です。
そんなムソルグスキー作曲の「はげ山の一夜」には複数のバージョンが存在します。
まずムソルグスキー本人がオリジナルの「原典版」を作曲しますが、当時は酷評され人気はでなかったそうです。
そしてオペラ「ソローチンツィの定期市」の中の1曲「若者の夢」として書き直した「合唱版」。しかしその後ムソルグスキーは亡くなり、当時合唱版が日の目を見ることはありませんでした。
現在良く演奏されるのはムソルグスキーの没後に、コルサコフがオペラ版を元に管弦楽に編曲した「コルサコフ版」となります。ディズニー映画「ファンタジア」で使用されたのもこのコルサコフ版です。
ムソルグスキーは「展覧会の絵」もラヴェル編曲版が有名になったりと、似たようなケースが多いです。
ディズニー映画「ファンタジア」
「ファンタジア」は1940年に発表された映画です。史上初のステレオ音響映画という事もあり、ディズニー映画の中でもレジェンド的扱いを受けています。
“クラシックの世界観を映画で表現”をコンセプトとしており、8曲のクラシック曲のイメージをそれぞれアニメで描いた短編集となっています。
デュカス作曲の「魔法使いの弟子」はこれで一躍有名になりました。
「はげ山の一夜」もその中の一場面です。音楽に合わせて悪魔の親玉が登場し、次々と子分の悪魔も湧き出てきます。やがて朝が来て…。という流れです。その後はアヴェ・マリアへと続きます。
古い作品ですが、流石ディズニー・アニメです。今見てもよく動くなぁと感心します。クラシックのプロモーションビデオ集としても観ることができます。ある意味コンサート鑑賞よりも楽しいです。
禿山の一夜 合唱付
「ソローチンツィの定期市」第3幕の合唱曲『若者の夢』として用いられた「はげ山の一夜 合唱版」。
謎の言語で悪魔の声を表現しており、おどろおどろしさや荒々しさがより強調されています。混声合唱だけでなくテノールソロも登場し、原曲以上にめくるめく展開となっています。
原曲も十分悪魔感が出ていますが、この合唱版は凄いです。メタルやポップスなどでも合唱が使用される事が多い昨今ですが、そんな合唱曲が好きな人にはもちろん、原曲のメロディが歌により強調されているため、「はげ山の一夜」入門としてもおすすめできます。というかこのバージョンが個人的に一番です。
合唱曲のススメ
この曲が気に入ったなら、次は様々な合唱曲を聴いていきましょう。
ヴェルディ「レクイエム」
なんといってもコレ。「はげ山の一夜」に最も雰囲気が近いであろう曲。鎮魂歌なのに悪魔の曲に似ているとはこれいかに。
摩天楼オペラ「Innovational Symphonia」
日本のヴィジュアル系バンドの曲ですが、マイナー調合唱曲として秀逸です。かっこいい。タイトルもバッハの「インヴェンションとシンフォニア」をモチーフにしているものと思われます。
AKB48「桜の栞」
多人数グループなのを初めて楽曲面で活かした合唱曲。合唱コンクール課題曲になった「願いごとの持ち腐れ」もロンド風で悪くないですが、合唱曲なら絶対こっち。サビよりもAメロBメロの方がクラシカルで良い旋律です。
Paradise Eve「Paradigm shift」
「アニソン×合唱」の集大成のようなサウンド。試聴動画の1:30~合唱曲が続きます。合唱が対旋律の役割を果たすのが斬新。歌メロを聴くのも良し、合唱に耳を澄ませるのも良しな、まさしく「パラダイムシフト」的な聴き方ができます。
クラシックにも数多くの合唱曲がありますが、このCDボックス「Great Choral Works」は合唱曲の有名所が全て収録されています。超オススメ。私の棺桶に入れてもらうと決めているCDです。※はげ山の一夜は入っていませんよ。
ムソルグスキーの「はげ山の一夜」をカバーした曲も他の記事で紹介しています。
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