今回紹介するのはイギリスのエレクトリック・グループCrean Bandit(クリーン・バンディット)が2012年にリリースしたデビューシングル「A+E」です。
曲中に、バッハのマタイ受難曲の1曲、「血潮したたる主のみかしら」を引用しています。
マタイ受難曲の原曲はこちら。
「マタイ受難曲」の中でも重要な場面、イエスがむち打たれ、いばらの冠を頭に載せられ侮辱を受ける場面で歌われるコラールです(コラールというのは合唱の事です)。イエスの苦しみが痛切に感じられます。私は仏教徒ですけど。
イエス・キリストの死を描き、全部で60曲以上・3時間程かかる超大作であるマタイ受難曲の中でも、有名な曲の一つです。
こちらはマタイ受難曲の中でも私の好きな終結合唱。一番ラストで流れる「我らは涙流してひざまずき」です。
「暗い」とか「悲しい」とかとはまたひと味違う、厳かな雰囲気がたまりません。
この曲とオープニング曲である「来たれ我が娘たちよ、われとともに嘆け」、裏切りペテロが後悔する中盤の名アリア「神よ、憐れみ給え」、そして今回引用されているコラール「血潮したたる主の御頭」あたりがマタイ受難曲でも特に有名でキャッチーな曲です。
「血潮したたる主の御頭」は、元々は更に古い時代から存在する、キリスト教信者の中で歌われる賛美歌の中の1曲「血しおしたたる」という曲がオリジナルです。バッハのマタイ受難曲では、同じくキリストが茨の冠を被せられるシーンで引用しています。
バッハはこの賛美歌「血しおしたたる」をクリスマス・オラトリオ等他の曲にも引用していると言われています。
バッハと教会音楽
バッハは膨大な量の教会音楽を作曲しており、その多くが今でも名曲として愛されています。大作として有名なのは「ロ短調ミサ」「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「クリスマス・オラトリオ」です。
音楽的価値や知名度で「マタイ受難曲」や「ロ短調ミサ」が良く挙げられるようですが、個人的には、明るく派手めな「クリスマス・オラトリオ」や、比較的キャッチーな曲が多めの「ヨハネ受難曲」の方が聴きやすくおすすめできます。
たまたまyoutubeで見つけたヨハネ受難曲×バレエ。
現代バレエ風ですが視覚でも名曲を楽しめるエンタメヨハネ受難曲。
こちらはクリスマス・オラトリオの1曲目。
明るくも美しいバッハらしい旋律です。
「A+E」
「A+E」はマタイ受難曲の中のコラール「血潮したたる主の御頭」の美しくも哀しい旋律をメンバーが弦楽器で演奏した後、カリプソ&テクノポップという何とも不思議な曲調で展開します。
厳かなイントロからポップにシフトする様子はシュールでもありますが、マクロからミクロへ、というか抽象から具象へ、というか、単に片方だけを聞かされるよりも心を揺さぶられます。ラテン&ピコピコサウンドなのに泣けます。
第1印象は「何故この曲調にマタイ受難曲を混ぜた」という感じですが、結果的に超カッコいいです。泣けます。中盤の弦楽パートも良い。
取ってつけたようにマタイ受難曲を放り込んだ経緯が大変気になります。思いつきだとしたらそれはそれで凄い。
MVではマタイ受難曲の引用部分で黒人が徐々に日にあたって白く光っていく、という演出が成されていますが何か深い意味があるのでしょうか。
同曲収録のデビューアルバム。
日本盤ボーナス・トラックにもクラシックをサンプリングした曲があります。こちらの記事で紹介しています。
[…] […]
[…] […]
[…] […]
[…] […]