境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)がテーマの音楽作品
鬼束ちひろ「BORDERLINE」
曲名が「ボーダーライン(=境界性パーソナリティ障害の別称)」である事と、
歌詞に《切り裂けば楽になれた証拠を 見逃さないで(=気を惹くための自傷行為)》
《依存を自覚していて(=依存行為) 掴んだその手を放して(=二極思考&試し行為)》等、境界性パーソナリティ障害の症状を表現しているような描写が多い事から、境界性パーソナリティー障害をテーマにしていると判断できます。
2002年のアルバム『Sugar High』収録。
シンガーソングライターの鬼束ちひろは、《この腐敗した世界に落とされた》《どこにも居場所なんてない》といった歌詞が印象的なデビュー曲の「月光」を始め、暗いながらも独創的で美しく、悩める人が共感できるような作品を数多く発表しています。
ミオヤマザキ「メンヘラ」
4人組ロックバンド。他にも病んでる系ソングを多数発表しています。
単なるステレオタイプな”ヤンデレ”ソングのようで若干リアリティに欠ける部分もあるので、ここで紹介するかどうか迷いましたが、
歌詞の中で自殺企図・依存・試し行為・理想化と扱き下ろし・自己同一性の欠如等境界線パーソナリティ障害の特徴を多く描写している点から、境界線パーソナリティ障害をテーマにした歌であると判断しました。
冒頭の歌詞は醜形恐怖症を示唆しているようにも見えますが、境界線パーソナリティ障害の自己否定感を表現しているものと考えます。
2015年リリースのアルバム『大人がダメって言ったヤツ』収録。
Alieson『BORDER LINE ~閉鎖病棟監禁秘記~』
同人音楽サークル。精神科に入院する女性を主人公にしたアルバムですが、こちらもタイトルが「ボーダーライン」である事に加えて、主人公が過去に両親から虐待を受けていた描写のある曲を始め、アルバム全体を通して境界性パーソナリティ障害を想起するような内容の歌詞が多くみられます。
アルバム一曲目の「ボーダーライン」は、一見“人生において遭遇する様々な境界線(=ボーダーライン)を、勇気を出して飛び越えろ”というポジティブな歌に見えなくもないですが、
“境界性パーソナリティ障害(=ボーダーライン)”の存在を意識して聴くと、“精神科を受診し、診断され、入院する歌”・”飛び降り自殺をする歌”に見えてくる、「ボーダーライン」という単語に様々な解釈の余地を持たせた凄い歌詞です。高音が美しいドラマティックなメロディも含めて必聴の一曲。
作品全体を通しても、様々なストーリー及び結末が解釈できるような仕掛けが施されており、それを象徴するような一曲になっています。
2010年リリースの作品ですが、残念ながらAliesonは解散しておりCDも廃盤となっています。駿河屋等で購入しましょう。ちなみに本アルバム収録曲「泣く手首」は、一部モーツァルトのきらきら星変奏曲の引用あり。
三ツ星☆リストランテ『瞬幻のコラプス』
こちらも同人音楽サークル。周囲に馴染めない男女の話を描いたアルバムです。
作品中に明確な病名に関する描写はありませんが、
①比較的境界性パーソナリティ障害が多いとされる思春期の若者が主人公である点
②歌詞で自傷行為・慢性的空虚感を埋めるための依存関係・自己否定感・試し行為・衝動性・二極思考等が描写されている点
③《名も無き病に冒され続けて》《二人の病の名前が異なる事実》という歌詞から、主人公の二人にそれぞれ病名とまでは行かない何らかの具体的な診断名が設定されている事が伺える点
以上の3点から、女性主人公が境界性パーソナリティ障害であると判断しました。
《想像の世界に籠ってばかりいた僕》《君の気持ちさえわからずに》という歌詞から推測するに、男性主人公は統合失調型パーソナリティ障害もしくは自閉症スペクトラム障害でしょうか。
“試し行為”を行う女性主人公と、”相手の気持ちを想像する事ができない”男性主人公が迎える結末は大変悲劇的なものですが、リアリティと非現実感が混在する歌詞は一部のリスナーには刺さるものと思います。
2014年リリース。画像クリックで商品紹介ページへ移動します。
まとめ
様々な音楽作品を紹介してきましたが、どちらかというと洋楽はポジティブなメッセージソングにより聴き手を引っ張り上げるような曲。
邦楽は暗い心情をそのまま表現し、沈んだ気持ちを聴き手と一緒に共有するような曲や自虐&コミカルに仕上げる曲が多い印象を受けました。
皆さんはどの音楽が一番心に沁みるでしょうか。