TV出演や他アーティストとの共演も多く多方面で活躍するバイオリニスト宮本笑里と、フランス人の歌手Solitaの共作としてリリースされた「東京 et 巴里」。TVアニメ「のだめカンタービレ」のエンディングテーマです。
ラヴェルのボレロとパッヘルベルのカノンを引用しています。
2008年リリース。リンク先で一部試聴できます。
かなり独特な曲です。ボレロと言えば”ボレロのリズム”が有名ですが、「東京 et 巴里」は、この”ボレロのリズム”を思いっきり崩して引用しています。
ボレロのリズムに関してはこちらの記事で説明しています。
とにかくイントロから変。ボレロの主題と、ボレロのリズムと、カノンの主題を全部別々のリズムで同時に再現しています。どうしてこんなイントロにしたんだ。
そんなおかしなイントロから、ウソのようにカノンコードの素朴なAメロに展開していきます。Solitaの歌唱も母親のクレモンティーヌそっくりの穏やかで全く気をてらう気のない素直で素朴な歌声。R&Bリズムにアコギをサンプリングしたトラックもオシャレ。
そのままのノリでBメロへ展開していきますが、再び空気を読まない変なリズムでバイオリンがボレロの主題を奏で始めます。きっとバイオリンさえ無ければ普通の素朴な歌なんですが…。
しかし無理矢理主張を繰り返すバイオリンがこれまた泣ける旋律を演奏してきます。音圧高めで技巧も凄いのでイヤでも耳に入ってきます。結果的に歌唱の素朴さとバイオリンの激しさが化学反応を起こしており、不思議な泣ける曲に仕上がっています。
ヴォーカルは思い切って大胆に余白を多く作っており、サビはまさにバイオリンとのツインヴォーカルという感じです。
歌声はオシャレボサノヴァ風、リズムはR&Bベースなのに時々ボレロのリズムがスネアで割り込んでくる。そしてバックには乱れ飛ぶクラシックバイオリンとHIPHOP風アコギが共演…という、混ぜるな危険の唯一無二の作品となっています。でも不思議と普通に感動してしまう、怪曲&名曲。
この宮本笑里さんという方、今ではシンプルなバイオリン曲や生音中心のポップスを中心に発表していますが、以前には、バイオリンの音色に打ち込みリズムを付けた独特な曲を数多くリリースしています。
こちらの記事でも紹介しています。是非合わせてお読みください。