アメリカの歌手アリシア・キーズ(Alicia Keys)。スタンダードなソウル/R&Bサウンドにクラシックのエッセンスを加えた高い音楽性により、世界各国で人気を博しました。
今回紹介するのは2ndアルバム「THE DIARY OF ALICIA KEYS」の収録曲「karma」です。ブラームスのバイオリン協奏曲 ニ長調 第1楽章の一部をサンプリングした曲です。
超名曲です。R&Bソングの最高傑作の一つなんじゃないかと思うくらい個人的に大好きな曲です。
クラシカルなバイオリンのフレーズに乗っかるシンプルなリズム。繰り返される中毒性のあるオーケストラルヒット。
正統派なソウルミュージックに現代風の音とクラシックの音色を見事に融合させています。
収録アルバム「ダイアリー・オブ・アリシア・キーズ」は2003年リリース。「karma」以外の曲は、もっとスタンダードなソウルナンバーが並びます。グラミー賞4部門を受賞し、最高の賞である「アルバムオブザイヤー」にもノミネートされたアルバムです。
原曲はこちら。
引用部分は2:40~の部分。バイオリンが劇的な旋律を奏でます。
ブラームス、メンデルスゾーン、ベートーヴェンのバイオリン協奏曲を合わせて、3大バイオリン協奏曲と呼びます。
全3楽章、40分に渡るブラームスのバイオリン協奏曲も他の2曲と同様、バイオリンの美しくも劇的な音色を十二分に堪能できます。
インパクトの強い旋律が続くこの曲の中から、よくぞこの部分をサンプリングし一流のR&B曲に仕上げたものです。さすがです。
歌詞の解釈
歌詞は女性ヴォーカルR&Bの普遍的なテーマである”恋愛模様&強い女性像”について「カルマ(業)」の概念を持ち出して歌っており、フックの歌詞の「What goes around, comes around. What goes up, must come down」はひどい仕打ちをしてきた恋人に対して「因果応報よ」と言い放っている部分ですが、
「What goes around, comes around(過ぎ去ったものも巡りめぐって戻ってくる)」は、過去のクラシック曲を引用して現代の音楽に蘇らせている事、
「What goes up, must come down(上がったものは下がる運命にある)」は、上昇していくブラームスのメロディを、逆再生のように下降のメロディにアレンジしている引用法を用いている事、
をそれぞれ表現しているものと思われます。きちんと歌詞のストーリーに沿った言葉を並べながらも、シンプルな一文の中に、恋愛のセオリー・カルマについて・強い女性像・クラシックを引用及びアレンジしている事、の4つの視点からの意味が込められています。
歌詞のテーマと、曲の音楽性そのものを同時に描写しているシンプルながらも凄みのある歌詞です。
音楽性自体、「スタンダードな(70年代)ソウルミュージックをベースに、最新(2000年代)の音と昔の音(クラシック要素)を融合させる」といった作風のアリシア・キーズですが、「karma」の歌詞もそんなコンセプトに沿ったものになっています。
有名曲(月光など)を使用しているアリシア・キーズの他のクラシック引用曲と比べると、クラシック曲を引用している事に気づきにくい、引用難易度高めの「karma」ですが、歌詞にもヒントが込められていたわけです。
アリシア・キーズには他にもクラシックを引用した曲があります。こちらの記事で紹介しています。
また同じく3大バイオリン協奏曲のうちの一つ、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲をサンプリングしたHIPHOP曲を以下の記事で紹介しています。合わせてお読みください。
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