クリスマスが近づくと街中でクリスマスソングが流れます。
有名な山下達郎の「クリスマス・イブ」はパッヘルベルの「カノン」を引用しています。
今回紹介するのはアイドルももいろクローバーZの「サンタさん」という曲。シングル「労働賛歌」のカップリング曲です。
「サンタさん」のMV。
今から小難しい話をしていきますが、これは頭をカラッポにして観ましょう。
2011年リリース。
クリスマスキャロル「もろびとこぞりて」
「もろびとこぞりて」
皆知ってる歌です。クリスマスに歌う聖歌的な曲を「クリスマスキャロル」と呼びます。「もろびとこぞりて」「きよしこの夜」が特に有名です。
「もろびとこぞりて」はヘンデルのオラトリオ「メサイア」の中の曲
の2曲を合わせて作曲されたものと言われています。なるほど確かに冒頭のメロディが似ています。
オラトリオ「メサイア」は全3部、計2時間半に渡る長大な組曲ですが、「Comfort ye,my people」は序曲に次ぐ2曲目の曲で、「Lift up your heads」は中盤辺りに位置します。
第2部ラストの「ハレルヤ」が特に有名です。
クリスマスとクラシック
「もろびとこぞりて」だけでなく、バッハの「クリスマス・オラトリオ」やクリスマス・イブのお話であるチャイコフスキーの「くるみ割り人形」などもクリスマスと関係のあるクラシックです。
クラシックにおける「キリスト教音楽」の割合というのは相当高く、教会のために作曲された曲、聖書をテーマにしている曲など枚挙に暇がありません。オラトリオ、レクイエム、ミサ曲、スターバト・マーテル、カンタータ、グロリア、受難曲…。様々な種類のキリスト教音楽があります。
キリスト教にとってクリスマスというのは特別な日であり、クリスマスとクラシック音楽との間にもまた、深い関わりがあります。
ももいろクローバーZ「サンタさん」
ももいろクローバーZの「サンタさん」を作曲しているのは前山田健一氏。独特の作風が魅力の作曲家です。
特徴の一つに、別々の曲をつなぎ合わせたようなパッチワーク的な作風であり、特にBメロやサビ直前で大胆に曲調を変化させるというのがあります。
「サンタさん」もジングル・ベルをフィーチャーしながら楽しいクリスマスソングの雰囲気を出していますが、サビ直前で突然「もろびとこぞりて」の厳かな曲調に変化し、驚かされた後に再び楽しい雰囲気のサビに突入します。ちなみにサビは自分たちの既存の曲のセルフパロディになっており、パロディだらけの曲になっています。
更に前山田健一自身のシングルで更に「サンタさん」をセルフパロディしています。
「クリスマス?なにそれ?美味しいの?」MV。
「サビ前」の仕掛けとしての「引用フレーズ」
ポップスではサビへの弾みをつけるために、サビ直前でタメを作ったり、印象的なフレーズを持ってきたりします。特にアニメソングに顕著です。
例えばガンダム主題歌のT.M.Revolution「INVOKE」。
個人的にこの曲辺りからいわゆる「サビ前」の演出が過多になってきた印象があります。イントロで登場する印象的なシンセSEがサビ直前で再登場します。
元々ガンダムアニメの主題歌はテクノ・ダンスミュージックの系譜を継いでいるのですが、この曲が更に「トランス風ダンスミュージック=SF系アニソン」のイメージを付けました。アニソン界に与えた影響は計り知れません。
前山田健一の曲もBメロ~サビにかけて確実と言っていいほど仕掛けが設置されています。
ももいろクローバーZ「行くぜっ怪盗少女」
Bメロで一旦転調している上に、サビ前はテレテレテン♪→ドカーン→サビで転調と3段構えです。2番では更に「あは~ん♡」とか入ってきます。
「サンタさん」は「クラシック曲の引用」をサビ前の仕掛けとして配置してくださっており、このサイト的にもクラシックカバーの一例として紹介しやすい、大変有効な使用方法です。ありがたや。
ちなみに「サンタさん」がカップリングされている曲「労働賛歌」、これがめちゃめちゃかっこいいんです。
MVです。大音量でバックトラックに集中しましょう。
イギリスのミクスチャーバンド「The Go! Team」によるサウンドがド派手ですごいです。ファンクのようにも劇伴音楽のようにも聞こえる管楽器の音色に、超骨太のドラムがぶつかります。ももいろクローバーZには申し訳ないですが、インストで聴きたい1曲です。
こちらの記事では、同じくももいろクローバーZの「猛烈宇宙交響曲第七楽章『無限の愛』」を紹介しています。作曲家前山田健一とクラシックの関係について紹介しています。
またこちらの記事では、ももクロのもう一つのクラシック引用曲を紹介しています。
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