浜崎あゆみが2015年にリリースしたクラシックアレンジアルバム「LOVE CLASSICS(ラブ・クラシックス)」。
浜崎あゆみが過去に発表しているオリジナル曲と、クラシックの曲を混ぜ合わせるという、マッシュアップ的アプローチをしているのが特徴です。ただのオーケストラアレンジじゃないぞ。
曲目
青色◎は特に良かった曲。
- Voyage [ パッヘルベルのカノン ]
- SEASONS [ ドヴォルザーク: 家路(交響曲第9番『新世界より』〜第2楽章) ]
- ◎Days [ ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集『四季』〜「冬」第2楽章 ]
- TO BE [ バッハ: 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1曲 プレリュード ]
- ◎YOU [ ペツォールト: メヌエット(バッハのメヌエット) ]
- Virgin Road [ ショパン: 雨だれのプレリュード ]
- Dearest [ドヴォルザーク: ユーモレスク第7番 ]
- ◎HONEY [ ヘンデル: オラトリオ『メサイア』〜ハレルヤ・コーラス ]
- winding road [ ドビュッシー: 前奏曲集第1巻〜亜麻色の髪の乙女 ]
- ◎Who… [ エルガー: 愛の挨拶 ]
1.Voyage [ パッヘルベルのカノン ]
カノンコードの曲にそのままカノンをマッチアップさせるというトンデモ曲。もしかしてVoyageをオーケストラアレンジする時に「どうせならそのままカノンをバックで演奏しちゃえばいいんじゃね?」みたいな思いつきで決まった企画アルバムなんじゃないか…?
当たり前だけど違和感なく融合されている。カノン進行好きなら誰しも一度はやってみたいこのアイディア。プロが生音で実現させてくれています。カノン進行マニアは必聴。
2.SEASONS [ ドヴォルザーク: 家路(交響曲第9番『新世界より』〜第2楽章) ]
SEASONSのバックで『新世界より』第2楽章を明るくリズミカルに流している曲。不協和音は感じないけれど、『新世界より』の雰囲気はだいぶ壊されている。
オーケストラと一緒に登場する打ち込みリズムやキラキラシンセ、そしてサビ前で唐突に登場する琴のような音。節操の無さが半端ないけれど、力業でねじ伏せて曲として成立させている。これぞavex流クラシカル・クロスオーヴァー。
3.◎Days [ ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集『四季』〜「冬」第2楽章 ]
浜崎あゆみ後期の名曲である「Days」、そんなメロディアスな「Days」を全く邪魔する事なく、けれどしっかりとサビのバックで再現されている「冬」のメロディ。2段構えのサビの後の間奏では更に追い打ちをかけるように前面に登場し、曲のドラマ性を高めている。
オーケストラにシンプルなポップスドラムを混ぜるアレンジもバランスが良い。美しいポップスのメロディとクラシックのメロディが代わる代わる、時には同時に流れる。これは良いアレンジ。アルバムの中で一番良いんじゃないだろうか。
有名曲が多い《四季》の中でも、冬の第2楽章を選曲しているのも好印象。初っ端の安直なカノンは何だったんだ。
4.TO BE [ バッハ: 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1曲 プレリュード ]
歌メロのインパクトが強い「TO BE」にシンプルな「平均律クラヴィーア第1曲」を合わせた曲。おかげでクラシック曲側がかなり空気。ただのオーケストラアレンジみたいになっている。
5.◎YOU [ ペツォールト: メヌエット(バッハのメヌエット) ]
メロディの主張が強い2曲をサビでそのまま思いっきりぶつけた曲。そのせいでやや生じる違和感も含めて、ザ・クラシカルマッシュアップといった感じ。
他の曲にも言えるけれど、間奏でしっかりと原曲を再現するため単なるオーケストラアレンジよりも間奏で退屈しない。「オーケストラアレンジのアルバム作るけど、オリジナルのアレンジや間奏作るのメンドクサイなぁ…せや!」な経緯じゃない事を祈る。
6.Virgin Road [ ショパン: 雨だれのプレリュード ]
「Virgin Road」は2010年リリースの小室哲哉作曲の曲。Bメロなんかはザ・小室哲哉なメロディ。
浜崎あゆみが精力的に活動していた時期の最末期の曲である事と、「雨だれ」がシンプルで空気な事が重なって完全なオリジナル曲のような雰囲気で聴ける。オーケストラアレンジのポップスとして普通に良い出来。
7.Dearest [ドヴォルザーク: ユーモレスク第7番 ]
原曲である「Dearest」のイントロと、クラシック側で引用されている「ユーモレスク第7番のメロディがそっくりなため全く違和感なく聴けてしまう怪曲。これ大丈夫なのか…?
ちなみにユーモレスク7番はこちら。
冒頭が有名だけれど、引用されているメロディは1:15~辺りからの、短調に転調する部分。
他の曲と並べて聴くと、やはり浜崎あゆみ本人作曲の曲はメロディが単調で退屈。
8.◎HONEY [ ヘンデル: オラトリオ『メサイア』〜ハレルヤ・コーラス ]
ハレルヤの冒頭部分を動機として使用し、曲の中で随所に登場させる”クラシカル・サンプリング”とでも言うべきな曲。JPOPとクラシックとHIPHOPの手法を混ぜ合わせている。斬新!
辛気臭いオーケストラアレンジのバラードばかりで単調なアルバムの中で、唯一のアップテンポで軽快な曲。この曲があって良かった!引用曲がハレルヤである事も相まって救世主感が凄い。
9.winding road [ ドビュッシー: 前奏曲集第1巻〜亜麻色の髪の乙女 ]
浜崎あゆみ本人の作曲で掴み所の無いメロディにドビュッシーが合わさり、ますます掴み所のなくなっているバラード。途中でキラキラシンセとか入れてみるも手遅れ。
10.◎Who… [ エルガー: 愛の挨拶 ]
2ndアルバムの最終曲でファンにも人気の高い「Who…」と朝の挨拶をマッシュアップ。曲のメロディ進行に合わせてアレンジされた”愛の挨拶”のメロディは、違和感なくマッチしている。
穏やかだけれどポジティブな雰囲気を持つ”愛の挨拶”はこのアルバムのラストに相応しい選曲。
総評
浜崎あゆみは4枚のオーケストラアルバムをリリースしていますが、他の3枚が単なるオーケストラアレンジである事に対して、この「LOVE CLASSICS」は浜崎あゆみの曲に既存のクラシック曲を合わせる”クラシック・マッシュアップ”という意欲的な試みが成されています。
JPOPの原曲に節操なくクラシック曲をかち合わせるやり方はエイベックスらしいですが、結果的に唯一無二の音楽となっています。
とはいえ全体的に似たようなアレンジの曲が続き、通して聴くにはやや退屈な面もあります。
ですがインパクトの強いポップなメロディとクラシカルなメロディがぶつかりあい織りなす世界観は、独自の魅力を放っています。また畳みかけるように印象的で毛色の異なるフレーズが交互に次々と出てくる様は、凛として時雨の曲のような不思議な高揚感も生み出しています。
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