平原綾香のクラシックカバーアルバム第2弾。
2010年リリース。
曲目
“青色◎”は特によかった曲。
1. セレナーデ (チャイコフスキー:弦楽セレナーデ)
ゴスペル風のアカペラコーラスで始まるオープニング。前のアルバムとは明らかに毛色が違うぞ…。
2. ◎Sleepers,Wake!(バッハ:カンタータ140番『目覚めよと、呼ぶ声あり』第4曲「コラール」 )
ピアノとストリングスをメインに英語やスキャットも交えたカバー。バックのリズムは前曲を継承しゴスペル/R&B風。ベースも効いておりセッション感も強く、ライブに行きたくなるようなアレンジ。
原曲の素朴なメロディがキレイにJPOP風に聴こえる。ナイス選曲の名曲。
3. 威風堂々(エルガー:威風堂々第1番)
原曲が威風堂々の割にはポジティブ感がなくスローテンポの物足りない序盤から、徐々に盛り上がって行く曲。
原曲がみんな知ってる曲が故に、聴き手に序盤でもどかしさを感じさせラストにカタルシスを持って来る焦らし曲。
原曲は勇ましい行進曲で大勢の人間を鼓舞するような曲調だけど、平原綾香は弾き語り風のシンプルでスケールの小さいアレンジにする事で、目の前の一人の人間の背中を押してあげるような曲調になっている。クラシックのポップスアレンジとして、とても良いと思う。ちょっとアンニュイな時にラジオで流れてきたりしたら、きっと勇気と元気をもらえそうな曲。
4. my love(ヘンデル:オペラ『リナルド』より「私を泣かせてください」
高音で原曲のメロディを歌った後に今度はオクターブ下で再現する、音域を目いっぱい使った曲。音域はmid1G~hiG?相変わらず男性には高すぎて女性には低すぎる個性的な音域。
シンプルなメロディとシンプルなピアノアレンジを補うべく、歌い方で変化を付けている。
5. ◎JOYFUL,JOYFUL(ベートーヴェン:交響曲第9番第4楽章「合唱」)
冒頭のブルース風のシンプルなピアノアレンジからファンクに発展する曲。しかもP-funkとかPOWER OF TOWERみたいなベタベタな70年代ファンク。
とにかくアレンジとバックの演奏陣がカッコいい。頑張ってジェームス・ブラウンばりのリズミカルな歌唱にも挑戦しているけれど、正直平原綾香本人は蚊帳の外状態。
6. adagio(ラフマニノフ:交響曲第2番第3楽章)
印象的できれいなメロディの主題をシンプルなアレンジで繰り返す曲。変に前後のメロディまで再現するとゴスペラーズのカバーみたいになってしまうので正解。
7. ◎ソルヴェイグの歌(グリーグ:組曲『ペール・ギュント』より「ソルヴェイグの歌」)
原曲の哀愁にラテン風の哀愁をプラスした曲。
明るい雰囲気の中間部へ移行する部分が、唐突に転調するような独自のつなぎ方になっていて斬新。原曲よりも劇的になっていて素敵。
8. ◎アランフェス協奏曲~Spain(ホアキン・ロドリーゴ『アランフエス協奏曲第二楽章「アダージョ」』&チック・コリア「スペイン」)
冒頭のアランフェス協奏曲を用いたパートから始まるのは、なんとベース&ヴォーカルのみのセッション。カッコ良すぎる!あの複雑なリズムもベースとヴォーカルでユニゾン。
そして後半からはボイスパーカッションとスラップベースも登場しかなりカオスな展開。ボイパまでするのか平原綾香は。
アレンジ及びベース演奏は岡田治郎という方。ライブでこんなベーシストと一騎打ちなんかして大丈夫なのか平原綾香は。太刀打ちできるのか。
9. CARMEN~Je t’aime!~(ビゼー:『カルメン』より「ハバネラ」)
3曲続けてラテン風の曲。こないだレビューした藤澤ノリマサの2ndもこんな感じだったな…。
他の曲もそうだけど、ベースの存在感が強い。
10. mama’s lullaby(ブラームス:子守唄)
ハープとのデュオ。歌詞はなんと寝かしつけをされる赤ちゃん目線。斬新!
「泣き止むまでただだきしめて」「パパとケンカはしないで」といった歌詞が並ぶけれど、そもそも子育て世代の両親のケンカの原因は育児疲れが大部分ではないのか。夜泣きが無ければケンカの半分くらいは無くなるのでは。
「泣くのはあなたの気を引きたいから」「パパとケンカはしないで」という歌詞もなんだかエゴイスティック。親同志で仲良くしていると子どもに嫉妬されて大泣きされるぞ私は。
知ってか知らずか、結果的に赤ちゃんの自己中っぷりを上手く再現できている、斬新な子ども目線の子守唄。
11. Ave Maria! ~シューベルト~(シューベルト:アヴェマリア)
再びゴスペル風のアレンジ。聖歌にR&Bやジャズのエッセンスを加えるのは「天使にラブソングを」のイメージだろうか。
12. ◎ケロパック(チャイコフスキー:『くるみ割り人形』より「トレパック」)
ディスコ×スウィングジャズ風の斬新なアレンジのトレパック。映画音楽みたいな賑やかさ。ラストは蛇足だとしても、とても楽しいアレンジの曲。ちなみに劇場版ケロロ軍曹の主題歌。
13. Sailing my life with 藤澤ノリマサ(ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章)
同じ事務所の藤澤ノリマサとデュエット。流石に謎オペラは空気を読んで自重気味。いつもの3割くらいしか声出てない。そりゃ今回はパイセンのゲストですから。
14. Love Never Dies 【Bonus Track】(ウェバー:Love Never Dies)
ウェバーのミュージカルの曲をカバー。シンプルなオーケストラアレンジ。頑張ってhihiBまで出してる。
総評
ピアノ&ストリングスを主役として上品にまとめていた前作とは打って変わって、ブラックミュージック&セッション感を前面に出してきたアルバム。
予算の都合・イメチェン・ライブ映えなど様々な意図があると思われますが、周囲のスタッフにも恵まれた、地味ながらも良盤。個人的には前作よりも好み。
でも、かなりの腕前の演奏陣と、かなりのリズム感を要すると思われる楽曲達。ライブで再現できるかな??
前作及び次作のレビューはこちらから。↓
[…] […]
[…] […]
[…] […]