ショパン

英雄ポロネーズ・ノクターン第2番・幻想即興曲/BEYOOOOONDS「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」

2019年メジャーデビューのハロー!プロジェクト所属アイドルBEYOOOOONDS(ビヨーンズ)。彼女たちの楽曲「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」は、ショパンのクラシック曲を大々的に引用した楽曲となっています。

こちらがMV。なんとピアノはメンバー自身による演奏です。凄い。

イントロから何故かショパンのフレーズにボイスパーカッションをぶち込む謎演出、ふざけてるのか真剣にやってるのかよく解らない楽曲の世界観。そしてこんなヘンテコな曲を真顔でシングルカットするセンス。これこそハロプロワールドの真骨頂です。

作曲はハロプロの楽曲を多く手掛ける星部ショウと、オーケストラやワールドミュージック×歌謡曲な楽曲を多数制作している加藤裕介。

 

曲の大部分は「英雄ポロネーズ(ポロネーズ第6番イ長調)」からの引用です。ポロネーズというのはポーランド起源の3拍子の舞曲の事です。第一主題部(0:32~)や主題部のBパート(2:17~)の左手がポロネーズのリズムを奏でています。

「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」では、原曲の主題部をうまくアイドルポップスに落とし込んでいます。

主題部の締めのフレーズを、解りやすく導音⇒主音の流れにアレンジして思いっきり一度帰着させ、更に「HEY!」の掛け声を挟んでから転調させる事で、アイドルポップスあるあるの「途中で大胆に曲調を変える」を演出しています。原曲でいうと、動画の1:47~。

 

更にそこから続くパート(なんかなーいなんかなーい~)で引用している部分は、不協和音が多いため調性がよく解らず、明るく美しい雰囲気と暗く勇ましい雰囲気が混じり合ったような不思議な雰囲気になっています。「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」では、ミュージカル風の掛け合いが加わる事で更にそのカオス感が強調されています。

つまり「ポップだけど何かヘン」という印象を受ける「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」ですが、そもそも原曲からしてそうなのです。

 

 

「英雄ポロネーズ」では、この後平行調に転調し暗く静かな展開になりますが、「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」では強引に他の曲を挿入し、更にブチ上げます。

サビ及び大サビは「ノクターン第2番」。ショパンの曲の中でも知名度が高く、純粋に美しいメロディを堪能できる曲です。「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」でも、ここまでの流れがカオスだったぶん、サビのストレートなメロディがまっすぐに聴き手に届きます。

 

もう一点述べると、「英雄〜笑って!ショパン先輩〜」はAメロの序盤はゆったりした3拍子で始まり、サビはテンポの速い4拍子になります。

そして二つを繋ぐ中間部は、ゆったりした3拍子ともテンポの速い4拍子とも、どちらともとれるリズムになっていて、「英雄ポロネーズ」と「ノクターン第2番」の有名なフレーズの間を繋ぐ、ブリッジの役割を果たしています。この仕掛けも凄い。

 

後半も、エレキギターにシンセオーケストラの登場や大サビ、半音上昇などの様々なギミックが登場し、退屈しない流れです。クラシック×プログレロックな雰囲気はQUEENも彷彿とさせます。

そして後奏のピアノソロは「幻想即興曲」

4:08の部分。

 

「英雄ポロネーズ」「幻想即興曲」はいずれも、ショパンの曲の中でも華やか&難しい曲として有名です。もちろんリズミカルに不協和音を連発しながら乱高下する歌メロは、歌うのも難しい。

もちろんあえてその2曲をチョイスしているわけで、単に「ハロプロはショパンが好き」というだけではなく、メンバーの実力の高さのアピールと華やかな演出を両立させるための意図的な選曲と思われます。才能の無駄遣いともいいます個人的にとても気に入った一曲でした。

ちなみに歌詞にも「英雄」「ポーランド」「幻想」、眠りのモチーフ(=ノクターン)など引用元を想起させるワードが散りばめられています。革命のエチュードを連想させる歌詞も多いですが、楽曲からは聴き取れません。どこかにあるのかな?それともハロプロ過去曲のオマージュでしょうか。

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追記:作曲者自身が解説動画をUPしていました。作ってみたら英雄ポロネーズとノクターン第2番の調がたまたま近親調で上手く繋がったというのが興味深いです。そんなノリなのか…。

 

2021年リリース。カップリングの「ハムカツ黙示録」も、揚げ物と”アブラカタブラ”をかけたハロプロらしさ全開の、やけっぱちオリエンタルポップス。何ともいえない世界観やイントロの微妙な変拍子を初めとして、どこまで天然でどこから確信犯なのか解らない雰囲気がクセになります。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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