日本のロックバンドBIGMAMA(ビッグママ)。バイオリン奏者がメンバーにいるのが主な特色。
今回紹介するのは、クラシックのフレーズを引用した楽曲で構成されたコンセプトアルバム、「Roclassik(ロックラシック)」です。
2010年リリース。リンク先で全曲試聴できます。
曲目
青色◎は特によかった曲。
1.◎「走れエロス (ヴィヴァルディ『春』)」
2.◎「虹を食べたアイリス (ベートーヴェン『運命』)」
3.◎「テレーゼのため息 (ベートーヴェン『エリーゼのために』)」
4.「英雄を抱いてマリアは眠る (グノー『アヴェマリア』・バッハ『フーガト短調』)」
5.「ツルギが無い (ハチャトゥリアン『剣の舞』)」
6.◎「荒狂曲”シンセカイ” (ドヴォルザーク『交響曲第9番”新世界より”』)」
7.「計算高いシンデレラ (パッヘルベル『カノン』)」
8.「チャラララーンの歌(CD+DVD盤のみ収録のボーナストラック)」
1.◎「走れエロス (ヴィヴァルディ『春』)」
「春」第1楽章を模したバイオリンとギターの冒頭から、ドラムが裏打ち連打を始めるメロコア曲。2番のAメロとその後の間奏でも「春」のメロディをバイオリンが奏でる。カラっとしたヴォーカル&バンドサウンドと湿り気のあるバイオリンの旋律が対照的で面白い。
英詩を歌う男性ヴォーカルとバンドサウンドはシンプルでストレート。と思いきやアウトロで突然原曲をバンドサウンドで重厚に再現しだすラストが超プログレ的。
それまでが超ストレートなメロコアだったので面食らってしまった。すげえぞこれは。
2.◎「虹を食べたアイリス (ベートーヴェン『運命』)」
全曲とは打って変わって湿り気のある哀愁ギターロックに、運命のメロディを引用したりオリジナルの対旋律を奏でたり伴奏に徹したりするバイオリンが乗っかる、シンフォニックロックな曲。アウトロのギターリフも「運命」からの引用。
J-ROCK×ELVENKINGみたい。かっこいい。
3.◎「テレーゼのため息 (ベートーヴェン『エリーゼのために』)」
「エリーゼのために」のメロディの要素を節々に散りばめた疾走感のある曲。
原曲冒頭の「ソ♭ファソ♭ファ」の部分を繰り返す事で、聴き手を煽るような盛り上げパートや、爆発前に勢いを付けるタメのパートにしている。
CD聴く前は「どうせイントロだけクラシックを借用してるみたいな作品でしょ」と思っていたけど、原曲を意外な方法で活用していて驚く。
間奏の旋律とかは他のクラシック曲のような…。
4.「英雄を抱いてマリアは眠る (グノー『アヴェマリア』・バッハ『フーガト短調』)」
「アヴェマリア」を絡ませたベタなギターロックから、突然「小フーガ」を引用しクラシカルになる間奏部分へスイッチする所が聴きどころ。
5.「ツルギが無い (ハチャトゥリアン『剣の舞』)」
2分程度のインスト。初めの1分で一旦終止した後、再びテンポを上げて暴走気味にもう一度再現。主旋律を奏でている楽器はバイオリンと思われるけれど、どうやったらこんな音が出るのだろう…。
6.◎「荒狂曲”シンセカイ” (ドヴォルザーク『交響曲第9番”新世界より”』)」
「新世界より」第4楽章をバイオリン&ラウドロックで再現したイントロと間奏がかっこいい。リズムを原曲に合わせずに、バンドサウンドのリズムで演奏している所がかえって新鮮でいい感じ。
オリジナルの歌メロの出来もドラマティックで◎。
7.「計算高いシンデレラ (パッヘルベル『カノン』)」
カノンをそのまま引用したり、アレンジしたりするバイオリンが各所に登場するミドルテンポの英詩曲。全体的にベタすぎて個人的にはちょっと。それにサビメロは何か他の曲だよねこれ…。
8.「チャラララーンの歌(メンデルスゾーン『結婚行進曲』:CD+DVD盤のみ収録のボーナストラック)」
ふざけてパロってるタイトルとは裏腹に、ポップでファンキーな普通に良い曲。
総評
2000年代ギターロックに、バイオリンを合わせたスタイル。
有名フレーズを引用しながらも、しっかりと若者向けバンドサウンドを保っておりクラシカルに偏り過ぎない所が新鮮。イントロだけ適当に拝借しました、とかサビで思いっきり引用します、とかではなく、しっかりクラシック曲を消化して活かしています。
馴染みやすい割にちょっと他に類を見ない事をやっている名盤。今聴くとちょっと古いけれど、この手のサウンドが苦手じゃ無ければ是非おススメの一枚。
「Roclassick」シリーズ第2弾「Roclassick2」及び、最終章アルバム「Roclassick ~the Last~」のレビューはこちら。