複数曲を引用した曲

《ベルガマスク組曲》より「月の光」・ピアノソナタ第14番「月光」/3776「月の光」・「長月九拍子嬰ハ調」

富士山のローカルアイドルであり、富士山をモチーフにした楽曲を歌う3776(みななろ)の楽曲「月の光」ドビュッシーの「月の光」とベートーヴェンの「月光」を引用した楽曲です。3776は富士山の標高に因んだ名前。

原曲はこちら。


 

9月のお月見をテーマにした楽曲で、童謡の「うさぎ うさぎ」と、月をテーマにしたクラシック曲をマッシュアップしています。

2019年リリースの2ndアルバム『歳時記』収録。アルバムバージョンの曲名は「長月九拍子嬰ハ調」となっています。これに関しては後述します。ファンク×テクノの、シームレスで不思議な音世界。私はプリンスの『Lovesexy』を思い出しました。

 

アルバムリリース後にシングルカットされています。シングルCDは現在一般流通はされていないようです。こちらでDL販売中。

“歳時記”というのは、四季に関してまとめられた書物の事を指します。本来は季節の俳句をまとめたり、季節行事や植物を絵や文章で解説したりする物が多いようです。

3776の『歳時記』は、そんな季節の移り変わりを音楽で表現したコンセプトアルバムです。そのコンセプトが凄い。

①1年366日をアルバム1枚で表現(全12曲)

②作中の12秒=1年のうちの1日。例えば1月は31日まであるので、1曲目の「睦月一拍子へ調」は12×31=372秒。

③1月を表現している1曲目は1拍子、7月を表現している7曲目は7拍子など、曲順に合わせて一つずつ拍子が増えていく。

④更に曲を重ねるごとに調が変わり、主音が半音ずつ上がっていく。1曲目はファが主調のヘ調、2曲目はファ♯が主調の嬰ヘ調…といった感じです。白鍵黒鍵を合わせると1オクターブは12音から成るため、それを利用しています。なので、もちろんラスト12月のホ調から半音上がると、1曲目1月のヘ調に戻ります。

これと似たようなコンセプトの作品として、大変有名なバッハの『平均律クラヴィーア曲集』があります。ハ長調の1曲目から始まり、2曲目はハ短調⇒3曲目は主音を半音上げて二長調⇒4曲目二短調…という具合に、半音ずつ上げていき全ての調を24曲で表現します。

あたりまえですが、ポップスでこんな事をやっている作品は初めて見ました。まさしく平成の平均律クラヴィーア。

 

コンセプトだけ聞くと、大変堅苦しく小難しい印象を受けます。

しかし実際に『歳時記』を聴いてみると、シンプルなトラックに乗せて季節のわらべ歌を謳ったり、十二支を読んでみたりするのが続く、意外にBGMのようなミニマルで薄味の作品です。

各曲がシームレスで繋がっている事もあり、テクノ作品のアルバムのような印象です。小難しい事はあまり考えずに、BGM的にサラリと聴くのも良いです。

とはいえ、1秒おきに十二支を読み上げるのは、十二時辰という概念で[作中の1秒=1年のうちの2時間]という時間の経過を表現している曲がシームレスに展開しているのも、区切りがあるわけでは無く連続的である季節の変化を表現している等、色々と趣向が凝らされています。

 

ちなみに3776『歳時記』で1月と12月にあたる「睦月一拍子へ調」「師走十二拍子ホ調」では、ベートヴェンの交響曲第9番 第4楽章「歓喜の歌」のフレーズも登場します。大晦日といえば第九ですね。

3776は現在井出ちよののソロユニットですが、プロデューサーの石田彰という方が曲の制作をしています。

曲を聴いているとファンクとテクノがベースにあるような感じがありますが、いわゆる「攻める楽曲派アイドル」としてオンリーワンの楽曲を提供してくれています。

『歳時記』よりもポストロック色の強い1stアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』。1秒毎に富士山を1mずつ登り、ラストで頂上に辿り着く。全3776秒かけて富士山に登頂するというコンセプトアルバム。曲の合間に井出ちよのさんがガイドをしてくれます。自宅でプチ旅行気分に浸れるステキな音楽作品。

ABOUT ME
syro
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1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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