サン=サーンス

『動物の謝肉祭』より「森の奥のかっこう」/Sevdaliza「Shahmaran」

オランダのシンガーソングライターSevdaliza(セヴダリザ)「Shahmaran」という楽曲で、サン=サーンス『動物の謝肉祭』の中の一曲、「森の奥のかっこう」を引用しています。

2017年リリースの1stフルアルバム『ISON』収録。

 

Sevdalizaはイランで生まれオランダに移住してきており、イランがルーツにあります。

イランはイラン革命やイラン=イラク戦争、最近のアメリカとの関係悪化など長らく情勢が悪い状況が続いており、ヨーロッパ等へ移住する移民が多く存在します。

イランやイスラム教が危険視されてしまう事も多く彼らが差別を受ける事もあるようで、Sevdalizaはそれに抗するように自身のイラン人としてのアイデンティティを作中で強く打ち出しています。

 

「Shahmaran」は、ビョークやFKAツィッグスのようなエレクトロニカ×トリップホップに、イランらしく中東の要素を加えたような感じで、神秘的で魅力的なトラックです。これはカッコウいい…。カッコウだけに。後半の展開は超鳥肌モノです。カッコウだけに。

 

曲タイトルの「Shahmaran(シャーマラン)」とは、イランに伝わる、半分女性で半分蛇の神話上の生き物だそうです。歌詞は抽象的ですが、男女の恋愛関係を「Shahmaran」の伝承をモチーフにして歌っているのでしょうか。

 

サン=サーンスの原曲はこちら。全14曲からなる組曲『動物の謝肉祭』の9曲目になります。13曲目の「白鳥」が特に有名です。

原曲と聞き比べてみると解るのですが、原曲で明らかにカッコウの鳴き声を模しているクラリネットの旋律。「Shahmaran」では全く異なる旋律になっています。これはどう聴いてもカッコウではありません。

おそらく洞窟の奥深くに住まうシャーマランと、森の奥に住むカッコウをオーバーラップさせているのでしょう。そのためカッコウの鳴き声は消え去り、代わりに中東風のストリングスや蠢くような妖しいコントラバスが鳴り響きます。これらがシャーマランを表現しているのではないでしょうか。

 

そんな彼女の作品、他の楽曲でもクラシカルなピアノが印象的な曲や、シンプルながらもメッセージ性の強いものが多いです。

こちらは同アルバム収録の「Human」。「私はただの人間」といった内容の歌詞を歌っています。作品のミステリアスで神秘的な雰囲気と歌詞を対比させる意図もあるのでしょうが、

彼女が男性達の見世物のような役割を演じているMVや彼女のルーツを鑑みれば、人権的なメッセージが込められているのは明らかです。

イラン系移民は不当な差別を受けがちな存在である上に、イランは女性差別がとても強い国として知られています。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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