数多くのフォロワーを生み出した、いわゆる”オタク系地下アイドル”、でんぱ組.inc。
楽曲「でんでんぱっしょん」のラップパートでパッヘルベルの「カノン」を引用しています。
2013年リリース。実写に2次元的エフェクトを混ぜたMVは、当時流行した手法であると同時に、萌え系アイドルである彼女達の性質を表現しています。作曲は玉屋2060%。
“ハイテンション”・”萌え声”・”合いの手”の3拍子揃った、いわゆる王道電波ソングながらも、パンク調のパワフルなバンドサウンドが曲を引っ張ります。
ラップパートでカノンが登場しますが、その後のブレイクの長さがちょっとマトモじゃないです。何らかの意図がないとこんな長さにはしません。
ラップパートの前の寸劇・ラップパートにのみ登場するクラシックのフレーズ・そしてその後の尋常じゃない長さのブレイク。
楽曲の歌詞も、全体的にでんぱ組.incとファンの関係を歌ってはいますが、寸劇~ラップパートは際立ってパーソナルな内容となっており、楽曲全体の中でかなり浮いたものになっています。
これらを加味すると、この部分はいわゆる「作中作」的なギミックになっているものと思われます。
楽曲の途中で歌い手の決意や私的なシーンを挟む事によって、その楽曲の背景を彩り、歌い手の個性を聴き手に伝え、作品に深みを持たせます。それによって楽曲のエモーショナルな面がより実感できるようになります。
例えば漫画のバトルシーンの合間に、そのキャラの過去の回想シーンを挿入するなんてのは良くある手法ですが、それと同じような演出です。
とくにでんぱ組.incは、もともと”秋葉原メイドカフェの従業員で結成された兼業アイドル”のようなコンセプトで立ち上げたグループなので、「ライブ前のスタッフルームでの雑談」のようなシチュエーションは、普通のアイドルよりも現実感があります。
そう考えると、曲タイトルの「でんでんぱっしょん」もタイトルの中にアーティスト名が挿入されており、曲中にメタ&自伝的なパートを挿入している楽曲そのものと同じ構成になっています。
「でんでんぱっしょん」は、そんなカラフルな楽曲に個性的な構成も混ぜ込んだ、新感覚の高速電波系ミクスチャーロックです。
引用しているのはこちらの動画の0:50~から登場するメロディ。いわゆる”カノンコード””カノン進行”と呼ばれる楽曲とは異なり、しっかり原曲の旋律を引用しています。
こちらはベストアルバム。やり過ぎなくらい個性的で退屈しない楽曲が並ぶ、おススメの1枚。
私が特に好きなのは、同じく玉屋2060%作曲の「でんぱーりーナイト」
あと「W.W.D」シリーズ。3曲続けて組曲として聴いても楽しい。「WWDBEST」のイントロには「でんでんぱっしょん」のフレーズも登場します。