ボーカルとアコーディオン奏者から成る、姉妹音楽ユニット、チャラン・ポ・ランタン。
「メビウスの行き止まり」は、グリーグの組曲《ペール・ギュント》の「山の魔王の宮殿にて」を使用した楽曲です。
2015年リリース。
“人は誰しも、醜い本当の自分を隠して生きている”というテーマの楽曲です。
そんな”人間の奥底に潜んでいる悪魔的なもの”を、「山の魔王の宮殿にて」のメロディーを所々に使用する事で、垣間見せています。
曲自体は“人は二面性があるからこそ美しい”・”醜い部分も受け入れる事が本当の愛”というオチになっており、コミカルなオリジナルのパートと「山の魔王の宮殿にて」を引用したパートが代わる代わる登場するこの楽曲そのものが、“相反性が生み出す魅力”を表現しています。
また曲タイトルも、”普通に接しているだけでは辿り着けないその人の本質”・”誰しもが、相反するものや一見矛盾するものを同時に有している”という楽曲のテーマを、”メビウスの行き止まり”という言葉を用いて表現しているようです。
一見能天気&コミカルに見えて、結構メッセージ性があります。これこそ彼女らの真骨頂。
グリーグの原曲はこちら。
原曲の魅力といえばやはり、キャッチーなメロディと、転調やテンポアップを伴うスピード感。
「メビウスの行き止まり」は、彼女たちの得意なポルカ調の曲に乗せて、一度転調を交えながらドタバタと進んでいく、『山の魔王の宮殿にて』の魅力を存分に発揮した楽曲となっています。
ちなみにカップリングの「戦う女」はアメリカのフォークソング「The Old Gray Mare」を引用しています。日本では”おうまはみんな パッパカ走る~”の歌詞で有名です。
「The Old Gray Mare」は訳すると「老いた灰色の牝馬」となります。
「老いた灰色の牝馬」「お馬は皆パッパカ走る」のメロディに乗せて、”女はいつでも戦うの””女はいつまで戦うの”と歌う、メッセージ性の強い楽曲となっています。
こちらはチャラン・ポ・ランタンの楽曲で私が好きな、ロシア感満載の楽曲「コ・ロシア」。後半はコロブチカ・カチューシャ・カリンカと有名なロシア民謡も引用されます。
同様にロシア(ウクライナ)民謡の引用を散りばめた作曲が特徴的な、チャイコフスキーの交響曲第2番『小ロシア』が元ネタと思われます。
2020年の作品。
一世を風靡したTVドラマ《逃げるは恥だが役に立つ》のOPテーマも彼女たちの楽曲。
もう一曲気に入っている、アルバム『ドロン・ド・ロンド』収録の「カストラート」は、そのままカストラート(高音を維持するために去勢した男性歌手)の”その瞬間”をどストレートに歌った曲。
ハイテンション&コミカルな曲の中にコラールのようなパートを大胆に挿入するうえ、サビは7拍子の凄い曲。
また、ベートーヴェンの『運命』を引用したこちらの楽曲では、ボーカルのももが参加しています。合わせてご覧ください。