ドヴォルザーク

交響曲第9番「新世界より」/ゆず「雨のち晴レルヤ」

日本の二人組音楽ユニットゆず。楽曲「雨のち晴レルヤ」の間奏で、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』を引用しています。


NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』主題歌。2014年リリースですが、2020年の紅白歌合戦で再び歌唱されます。

 

2020年は新型コロナウイルスの流行により生活様式が大きく変化し、音楽業界はもちろん国民全体にも大きな不安感をもたらした一年でした。

2020年の紅白歌合戦も感染症対策として、初の無観客での開催となります。

「今こそ歌おう みんなでエール」というテーマを立ち上げ実施する第71回紅白歌合戦ですが、ゆずの「雨のち晴レルヤ」というタイトル、そして引用されるドヴォルザークの交響曲第9番 第2楽章に付けられた「家路 (Goin’ Home)」という題名には、そのテーマと深い関係があると思われます。

 

「家路」(Goin’ Home)というのは、『新世界より』の第2楽章「ラルゴ (Largo)」の主題の旋律に基づいて、ウィリアム・アームズ・フィッシャーが作詞、編曲した歌曲です。他にも様々な音楽家が独自の歌詞を付けています。日本では堀内敬三作詞による「遠き山に日は落ちて」が有名です。

 

原題である「Goin’ Home」というのは、単に①”(自宅)への帰宅”という意味ではなく、いわゆる②”ふるさと(故郷)への帰郷”や、もっと根本的な③”魂の故郷(天国)への回帰”という意味合いが含まれています。

それに現在の日本のコロナ情勢を鑑みると、

①:外出制限により、自宅に留まらざるを得ない状況を踏まえた歌
②:年末年始の故郷への帰省もままならない状況で、TVを通して故郷と繋がる歌
③:感染症により命を落とした人々への鎮魂歌

と、様々な解釈をする事ができます。まさしく日本中の人々が試聴する紅白歌合戦では、視聴者それぞれが、今現在の自分の境遇を「家路」に重ね合わせる事ができるでしょう。

 

そもそも原曲の『新世界より』も、アメリカに拠点を移したドヴォルザークが故郷のボヘミアへ向けて作った曲であると言われており、新天地から望郷の思いを込めて作曲されているのです。

 

 

ちなみにこの「雨のち晴レルヤ」ですが、メインのパートは篠笛(しのぶえ)奏者 佐藤和哉の楽曲である「さくら色のワルツ」という曲が原曲になっており、曲の進行やメロディは「さくら色のワルツ」がほぼそのまま使用されています。楽曲中にも篠笛が登場します。

篠笛によるインスト曲ですが、桜の季節における別れの切なさと再出発の希望を表現した楽曲との事です。

「雨のち晴レルヤ」も、そんな原曲のコンセプトに沿った歌詞が付けられており、戦後の大阪を舞台としたドラマ《ごちそうさん》の雰囲気にも、とてもマッチしています。

 

これらの楽曲にメッセージとして込められている”苦難や辛い思い・別れのその先には、必ず希望や新たな喜びが待っている”というのも、もちろん現在の日本の情勢に照らし合わせる事ができます。

 

紅白では『雨のち晴レルヤ 〜歓喜の歌 紅白SP〜』というタイトルで演奏されるそうです。

合唱団を伴い、ベートーヴェンの交響曲第9番 第4楽章でも混ぜるのでしょうか。歓喜の歌も”世界平和””歌を通して心を一つに”といったコンセプトの楽曲です。今年の紅白のテーマには合致していますし、穿った見方をすればアメリカ大統領選挙やEU分裂・BLM・極東アジアの様々な問題等を初めとした、現在の世界情勢に対するメッセージと捉えることもできます。

ゆずの楽曲はとても分りやすくポップなメロディが多く、ともすれば大衆向けを通り越して”子ども向け”にすら聞こえてしまうような楽曲も多いですが、今回の「雨のち晴レルヤ」のようにしっかりと深みもあります。

私が好きなのは「Reason」北川悠仁・岩沢厚治・前山田健一のそれぞれが作った歌を組み合わせ、組曲形式に仕上げています。複雑な構成も、二人の美しいハーモニーで普通の良い曲として聴けてしまいます。


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syro
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1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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