ART OF LIFEと”協奏曲”
X JAPANとクラシックを語るうえで外せないのが大作「ART OF LIFE」です。
シューベルトの代表作である、交響曲第8番「未完成」を引用しています。
1993年リリース。
原曲はこちら。
「ART OF LIFE」には、各所に「未完成」のフレーズが散りばめられていると言われています。一番解りやすいのは 前半の激しいバンドサウンドによる間奏(10:45辺り)・後半の長い現代音楽風ピアノソロ(18:30辺り)・終盤(26:30辺り)の部分でしょうか。
第1楽章冒頭の主題が再現されています。
他にも様々な部分に同じような第1楽章の主題のメロディの音型が登場します。
「ART OF LIFE」と「未完成」に関する解説は、当時のX JAPANのプロデューサーである津田直士さんがこちらの記事で詳しく解説しています。なんと「ART OF LIFE」の本物の譜面付きでの解説です。大変ボリュームがあり、興味深い内容です。
「ART OF LIFE」は30分間に及ぶ超大曲。クラシックに馴染みのある方には当たり前の1曲30分ですが、ポップス畑のアーティストでこれです。しかもその作品でCDを50万枚以上売り、オリコン1位を取っています。X JAPANにしかできない奇跡と言えます。
「ROSE OF PAIN」の方向性を更に推し進めたような曲で、よりオーケストラサウンドが重厚になっています。
そして曲の後半のピアノソロ。賛否の分かれる、全部で8分以上に及ぶ長いピアノソロです。冗長だと批判する方も多いですが、クラシックをベースに考えると必要なパートです。
ヴォーカルとピアノが主役で、オーケストラを従えたクラシカルな大曲。これはまさに協奏曲(コンチェルト)の様相です。
そして「ART OF LIFE」の、曲終盤に長いピアノソロ(カデンツァ)を配置し、その直後に曲のピークを持ってくる構成は、まさしくモーツァルトのピアノ協奏曲そのものです。
こちらはモーツァルトのピアノ協奏曲20番の第1楽章。11:00~13:00辺りにかけて、約2分間のカデンツァをじっくり演奏した後、曲は最高潮を迎えます。
「ART OF LIFE」の長いピアノソロも、その直後に最高のカタルシスを作るためには絶対に必要なパートと言えます。
協奏曲の形式に近い曲構成に加え、オーケストラとの共演を果たしている「ART OF LIFE」は、言い換えれば「YOSHIKIとTOSHIのための協奏曲」と形容する事ができます。