今回紹介するのはドイツの中世メタルバンドSaltatio Mortisの作品、『Brot und Spiele – Klassik & Krawall』。オーケストラアレンジによるセルフカバーアルバム。
アルバムリード曲の「Brunhild」。壮大なシンフォニックサウンド。映画音楽を意識しているものと思われます。
オリジナルの方はこっち。バグパイプが印象的な、スタンダートな中世メタル曲。こっちも悪くないです。民族楽器がカッコええ…。ライブ映えします。
バンド名はラテン語で”死の舞踏(ダンス・マカブル)“を意味します。中世ヨーロッパで幅広く用いられた概念であり、死者が踊る絵画やリスト及びサンサーンスによる楽曲等が有名です。
ペストの流行により膨大な死者が出た影響により誕生した文化であると言われています。
中世メタル(Medieval metal)というのは、バグパイプを始め中世ヨーロッパの伝統楽器及び中世のフォークミュージックを取り入れたフォークメタルの一種で、主にドイツで広まっているそうです。へー。
こちらは美しくメロディアスなバラードの「Sie tanzt allein」。かなりメジャー感のあるメロディとヴォーカル。元がメタルなのもあり、この手のアレンジの割にはコンパクトにまとまっており新鮮。メランコリックで泣かせる間奏も短くあっさりしているのが逆に余韻を残します。これは名曲では??
弦楽器を歪ませてメタルギター風の音を鳴らしている(もしくはギターをチェロっぽく弾いてる?)と思われる「Brot und Spiele」。めちゃカッコいい。
Amazonのレビューを読んでみると、酷評の嵐となっています。
確かに、速くない、重くない、激しくない、おまけに暗くも怖くもないと、メタルの要素が皆無です。
従来のファンからはかなりの不評な作品のようですが、柔らかい歌声と程よいシンフォニックサウンドは、ニューエイジを更にポップスに寄せた程よい塩梅であり、なかなか他に類を見ないバランスの作品となっています。メロディもフォークのようなクサさは薄く、純粋にポップスとして良いメロディ。
バンドサウンドがほぼ全く無く、かろうじて時々登場するアコースティックギターやロックドラムがバンドサウンドの余韻を残している程度。しかし安易にギターを入れない判断が、かえってオリジナリティとなっています。
メタルバンドのオーケストラアレンジといえば、メタリカの「S&M」が有名ですが、メタリカとはまた違うアプローチでオーケストラとメタルの融合を果たした一枚です。
少なくとも私はかなり気に入りました。シンフォニックサウンドの歌モノは好きだけど、シンフォニックメタルのハイトーンや激しいバンドサウンドはそこまで…。という方におススメ。Stingの『Symphonicities』に近い感じですが、私はStingよりこっちが好き。
2019年リリース。
オリジナルのメタルアルバム『Brot und Spiele』はこちら。2018年リリース。